第5話 最強の花嫁

 ◇◇◇


 こうして私は隣国カシミール国の第一王子に嫁ぐことになった。


 十年間呪われていたカシミール王子は現在25歳、私は18歳ということで、早くお世継ぎを、との声が大きく、婚約期間を大幅にすっ飛ばしての結婚となったのだ。また、結婚を機に、カイン様は正式に王太子に任命された。


 ちなみになぜか実の父であるカリフ国の公爵様が私が娘であることを、大々的に発表したせいで、私は隣国の身分ある大聖女として嫁ぐことになった。自分の手柄をアピールするためだろう。


 勝手なものだと思うが、可愛い妹のキャサリンが「お姉様だったのですね!」と嬉しそうに喜んでくれたので水に流すことにした。我が妹は相変わらず可愛い。


 カシミールでは、王子様の呪いを解いた私の人気は凄まじく、毎日王宮に人が詰めかけている。ちなみに第二王子様は、塔に幽閉されていたが、よく見るとこちらも呪いが掛かっていたため解呪しておいた。


 結局お家騒動に見せかけて王家転覆を狙う逆賊の仕業だったらしい。こちらからもたいへん感謝されてしまった。


 息子二人を救った恩人として、王様と王妃様からはとても良くして貰っている。兄弟仲も戻って何よりだ。


 ただ一つ困ったのは、旦那様であるカイン様だ。結婚式の後、二人の思い出の場所である魔の森に新婚旅行に出掛けたのだが、毎日べったりと甘えてくるので困ってしまう。クールな見た目をしているのに、あんなに甘えん坊だとは思わなかった。


「ぎゃっ!ぎゃぁーーーー!メアリー!ドラゴンから離れろ!食われるぞ!」


「いやだわ、カイン様ったら。この子はあのとき友達になったドラゴンですよ。ちょっと攻撃したらすっかり大人しくなって。私のことが大好きみたいです」


 腹を出した姿勢で、キューっと、小さく鳴くドラゴンを優しく撫でてやる。


「言葉が通じるみたいで、今度乗せてくれるそうですよ?一緒に空の散歩をしませんか?」


「メ、メアリー!ほんとに、ほんとに君ってやつは!」


「なんでしょう?」


「愛してる!君といたら一生退屈しないなっ!」


 ちょっと遠くから叫ぶカイン様をみて、微笑ましく思う。年上なのに可愛い弟ができたみたいだ。ちょっぴり怖がりなところがあるので。守ってあげたくなる。



 ―――こうして、ちょっぴり怖がりだけど優秀な王子と、最強の聖女を花嫁に迎えたカシミール国は益々発展を遂げたのだった。カシミール国上空では、ドラゴンに乗ってデートする王太子夫妻の姿がたびたび話題になったらしい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

生け贄聖女は邪神様のお嫁さん!?~なぜか邪神様がめっちゃ私にびびってるんですけど?~ しましまにゃんこ @manekinekoxxx

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ