第4話 突然のプロポーズ


「じゃあ、用は済んだようなので私は帰りますね」


 そう言ってそそくさと立ち去ろうとしたら、


「ちょっと待て。どこに行く気だ?」


 王子様にガッと手を握られた。そうですよねぇー。見逃してくれませんよねぇー。


「はぁ。わかりました。壊したドアの料金はわたしが一生働いて、必ずお返ししますから」


「いや、ちょっと待て!誰がドアの修理代を気にしてるんだ。そんなのはどうでもいい!」


 さすが王子様。太っ腹である。


「では何のご用でしょうか?」


「君は、私の花嫁だろう?」


「はぁ?」


「いや、だから、花嫁になりに来たと言ってたじゃないかっ!」


「いや、まぁ、そうですけど。てっきり邪神様の生け贄として食べられると思って覚悟を決めてきたのですが、邪神様はおられないようですし。王子様の呪いが解けたなら私はもう用済みでは?」


「我が国では、『王子の呪いを解いたものを花嫁として迎える』と約束している。君が私の花嫁だ」


「えっ?ええー?」


「なんだその、反応は!いやなのかっ!」


 うーん、王子様はサラリとした癖のない黒髪に理知的な瞳の素晴らしいイケメンだけど、私は所詮私生児で孤児院で育った女である。


「私には、なんの身分もありませんから。国の方達が納得されないでしょう」


 私がそういうと、


「何てことを仰るのです!聖女様以上に素晴らしい方はいらっしゃいません!」


「我が国では、王子の呪いを解いて下さった方を無碍になどしません!」


 と、口々に話してくれる。王子様、愛されていますね。でもなぁー、うーん。


 私が悩んでいると、王子様が私の前に突然ひざまずいて、右手を差し出しながら言った。


「偉大なる聖女メアリー。私の后として、共に国を治めてくれないか?」


 突然のプロポーズに、驚く。


「王子様は良いのですか?私と結婚して。本当に?」


「カインだ」


 恐る恐る右手を差し出すと、軽く口付けを落とされる。そして次の瞬間、息も止まるぐらい強く抱き締められた。


「ああ!ああ!いいに決まってる!君こそ私の聖女!君は、最高だっ!呪いを解いてくれてありがとう!」


 そして、めっちゃキスされた。いや、人前でやめてください。皆さん微笑ましそうにみてたけど、恥ずかしすぎて死ぬかと思いました。

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