第9話 死

死を考えることがある。

死にたいわけではないが、死に方を考えることがある。

締める。刺す。溺れる。叩きつける……


死ぬときの情景を思い描いて、恐ろしくなって

体が震えて使い物にならなくなるのが大体のパターンだ。


僕は基本死にたくないと思っている。

身体もそれをわかっている。

けれど、それでも死を選択肢として考える時がある。


電源コードを首に巻き付けた。

包丁を握って自分に向けた。

風呂に入って沈んでみた。

高いところに立ってみた。


僕はそれが恐ろしいと感じる僕がいることに安堵した。

やっぱり僕は死にたくはなくて、死ぬことが怖くて

でもどうしても生き辛いから死のことを考えてしまう。


死んだらこの苦しみから解放されるんじゃないのか

一瞬の苦しみに耐えたら死んだほうがましなんじゃないかと

ぐるぐる考えて、得物をもって怖くなってやめる。

それの繰り返しだ。


いつかもし怖いと思える自分がいなくなったら

僕は違う世界を見つけているのだろうか。


今日もやっぱり耳鳴りが煩い。

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