消えた記憶
「おはよう華ー奈っ!」
「あ、亜希、おはよう。最近肌寒くなってきたね」
「私はまだ平気かな。寒いなーとは思うけど」
「亜希は寒いの強いもんね」
「そうよ、雪女とは私のこと」
「うん、ちょっと意味が違うかな」
今日はいつもより浅めだな。珍しい。浅い日は人と話すというのはこんな感じだったっけ、と思ってしまう。
「ていうか、今日は言わないんだね」
「え?」
「ううん、今日さ、日直って覚えてる?」
「うん、覚えてる。失敗したら恥ずかしいもん」
「良かった良かった。華奈ってたまに抜けてるところあるから心配だったんだぁ」
「ありがとう」
「いいのいいの」
ちょっとまて。僕は記憶にないんだけど。
今日が日直? 明日じゃなかったか? 昨日の日直は斎藤君だったはず、僕はその2つ後だ。
落差が日によって変わるようになっても、勝手に口が動いて会話するのは無くなっていない。
いや、そもそも今日15日だよな? 間違えてはいないはず、うん。
亜希がトイレに行った後、スマホで確認してみる。画面に出ていた日付は。
16日だった。
◆◆◆
「おかしい。どうしても15日の記憶が思い出せない」
一日中ひたすら「15日の記憶」を思い出そう
としたが、家に帰っても「自分が昨日と思い込んでいる14日の記憶」しか出てこない。
それで今日が16日で……ちょっと一旦整理しようか、訳がわからん。
14日。深い日。記憶はある。
15日。記憶全く無し。毎日欠かさず付けている記録も付いて無かった。
16日。今日。浅い日。朝は15日と思いこむ。
「……で、いいのかな?」
自分は15日を覚えていない、というのはどういった状態なんだろうか。
今までの自分のことについて少しずつ調べてはいるが、なかなかピンとくるものが無い。加えて記憶が無くなるとかもう自分でも狂い過ぎに程があるだろうがよ、としか思えない。
最近はぼんやりしていることも多いらしく、亜希によく危なっかしいなーと言われている。
そして僕は1つの結論にたどり着いた。
「寝よう」
自分のことだけど小難しいことはとりあえず今度でいいや。頭痛くなるし、そもそも今日は考えごとをしたくない。
昨日と今日の記録をちゃかちゃかっと書いて、僕はそのまま布団にくるまった。
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