マーガレットを、私に
五味千里
第1話
これほど惨めな想いはありません。一匹の女の、人という人の部分が酷くなじられた心持ちです。今まで
爽やかな恋をしていたつもりでした。互いに好む人と共に過ごし、同じ景色を眺め、機会があれば身体を重ねる、そんな当たり障りのない恋に身を委ねていました。過度な刺激も快楽も求めてはいません。ただ部屋の窓際に一輪の可憐な花を飾るような、そんな恋を私は望んでいました。
しかし彼は、いえ、あの男は、どうやら違ったようです。奴は折角の飾ったマーガレットを花瓶から晒し、その花弁一つ一つを身勝手に千切っていきました。
あいつは、悪魔です。人が大事に大事に抱えていたものを平気で踏み躙る人でなし、エゴイスト、気狂い。
私は、奴に屈しません。奴がもがき苦しむことを心より祈っています。そして、一時といってもあの気狂いに魅了され、心身を預けた私自身も、決して赦しはしないでしょう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます