第6話

「春ちゃん。起きてちょうだい!」


遠くで母さんが泣いている?起きないと。ダメだ。お起きないといけない!起きろ!


う…ん 母さん。微かな声を春は振り絞った。


「春ちゃん!だ、大丈夫?本当にどうしてこんなことに」


もう何を言っているか分からないくらいに取り乱した母がいる。


「母さん。ごめんなさい。大丈夫だから心配しないで。」


春はやっとこ起き上がった。辺りを見回して、木造の大きな部屋、ここはどこ?布団?あれ?けんちゃんがいる。


「よかった。本当によかった。2日も寝ていたんだよ。」


けんちゃんが言った。


たしか、けんちゃんと鯛焼きもどきを食べておじさんが来て。眠くなって。


「春ちゃん、お家に帰りましょう。この町から出ないと。」


母は少し神経質な声で言った。


「もう無理ですよ。この町からすぐには春ちゃんは出られない。お母さん春ちゃんはこの神社一族で必ず守ります。心配は要りません。」


けんちゃんは、とても丁寧にしっかりした口調で言った。


「あの人も、そう言って帰ってこれなかったのよ。春を失ったら母さん生きていけない。何故こんなことになってしまうの。」


母は、泣き崩れてしまった。


春は、母の取り乱し方にどうしたらよいのか分からず母に寄り添った。






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