第7話 テロリストの仕業
「ウイルスを運び世界中にばら撒いたのは、間違いなくテロリスト達の仕業です… 現在、世界で伝染している感染症のほとんどが奴らのテロ行為と断定出来ます… 報告は以上です」
アンダーソンCIA長官が報告を終えた。
「中国が黒幕だろう…? 中国の仕業に間違い‼」
ジェームス大統領が得意のオーバーアクションで質問し、そして、自分で断定した。変に機嫌がいいようだった。
「それはまだ… 何とも。容疑者になり得るテロリスト数百人の足取りを辿っていますが、中国との接点が今のところ見つかっていません。中国が黒幕だとすると… 恐らく、第三国のどこかで… バラバラで受け取ったのかと… 場合により肺炎を引き起こし、人体に対する危険性がそれほど高くなく、致死率も一般的な感染症とさほど変わらないウイルスですので、小瓶一個にウイルスを入れて、常温で普通に持ち運べますから… 」
アンダーソンCIA長官が顎に右手の拳を当てながら答えた。
「中国に決まっている… 最初の症例が発表されたのが中国なんだから… 中国が黒幕だ‼ 中国に決まっている‼」
ジェームス大統領は不意に立ち上がり、両手の拳を胸前で合わせた。
「中国が… この新型ウイルスのパンデミックに関わっていると断定してもいい…と、考えられます。しかし… 自国民にも多くの死者を出してまで… 何でこんなことを… 意味が不明…」
カーペンター司法長官が首を傾げた。
「理由はどうであれ、中国に報復のメッセージを送らなければならない。黙っている訳にはいかない」
言い終わると、ジェームス大統領はマクラーレン補佐官に視線を送った。
「更に、貿易戦争のレベルを強化して報復を仕掛けます… 『これは新型ウイルスの報復だ‼』そんな宣言はしませんが… 『中国がウイルスの輸出元である』こと… 『中国が貿易でアメリカを踏み台にして繁栄している』その二点を絡めて中国に圧力をかけます」
マクラーレン補佐官は、視線をジェームス大統領に向けた。
「国民に報復している事を匂わせて、ワクチン供給が近い事もアピールする。我々は国民を安心させ、中国に対する敵対心を煽ることだけやる。選挙が目前だからなぁ…オーバーにしないと。不安だけを煽って『無能、無策の大統領』となったのでは選挙に勝てない… 負けたら… 私は全てを失うからな」
ジェームス大統領は、会議に参加している全員に恫喝するような視線を向けた。
「そして… このパンデミックにテロリスト達が絡んでいることは… 国家機密に指定する。絶対に漏らすな。テロリスト達が関わっていることが知られると、メディアの連中が『伝染病でなく、もっと危険な細菌兵器を撒いている』などといったフェイクニュースを流す危険があるからなぁ…」
薄笑いを浮かべながらジェームス大統領が顔の前に両手を組み、左右の人差し指を口前に立てた。
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