第4話 陰謀の始まり

「中国の台頭を徹底的に押さえつけろ。まだまだ足りない。圧力をかけ続けるんだ。アメリカの利益確保が何より優先だ。遠慮はするな… 向こうは剥きになって来るだろうが… やり返すだけだ。こちらの思う壺だ」

ジェームス大統領がショーン国務長官に楽しげに話しかけた。


「中国と正面衝突をするつもりですか… 大統領…」


「ショーン… 衝突なんかしない。問題無い。大丈夫だ。指示通りやればいい。間もなく、中国が大きなことを引き起こすから、貿易騒動で混乱するのはそれまでの事だ。世界が大混乱するまで、徹底的にアメリカファーストを貫いて見せて中国を叩く。それで、私の二期目が確実にやって来る」


「『中国が大きなことを引き起こす…』何が起きるんですか… 何か… CIAが裏で動いている…」

ショーン国務長官は怪訝な表情に“ウンザリ”を付け加えて尋ねた。


「いや、我々が直接手を下すことなどしない。私を大統領にしてくれた組織が起こしてくれる… 大混乱を引き起こす」


「どんな大混乱を…」


「そのうち分かる… ニュースを待っていろ」


「その大混乱にアメリカも巻き込まれるのでは…」


「当然だ。アメリカにも飛び火する。でも… しょうがない。私の二期目がかかっているからなぁ。私は、大統領で有り続けなければならない… 私が敗北すれば、君たちも失業者になってしまうだろう… 私の目的は… 大統領でいることだけだ… 一期だけで辞めるわけにはいかない… 被告人になる訳にはいかないんだ」

ジェームス大統領は感慨深げに吐き出した。



「やりたい放題だなぁ… アメリカはどこに向かうんだ… 中国が引き起こす世界の大混乱とは… 一体何だぁ…? それに…『大統領にしてくれた組織…』確かにそう言った…」

ショーン国務長官が執務室の椅子に身体を預け、窓の外を見詰めながら一人呟いた。




“中国湖西省で猛威を振るっている新型の感染症は、最初の感染者が報告されてから一ヶ月経たないうちに、フランス、ドイツ、イタリア… そして、アメリカで確認にされました。想像以上の速さで世界に広がりを見せている要因として専門家は…”


「予定通りに始まったか… でも、こんなに早く世界各地に広まるとは… 一気過ぎる… 何万人… 何百万人… 逝かせる気なんだ… 確か、計画だと… ワクチン供給予定まであと一年近くあるはずなんだが… スチュアートに確認するか…」

私はニュース映像を見ながら呟いた。



「イブター、君の仲間達は素早い働きをしてくれた。感謝する。予想した以上に早いスピードで“蔓延”しているようだ。これなら“お客さん”は一年後、大金を払って我々の“商品”を買ってくれる。昨日から増産をかけているようだ… 来年、もっと報酬を増やせるかもしれない。楽しみにしていてくれ」

スチュアートは、満面の笑みで電話を切った。

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