第52話:白き巨人の烈火の大剣


「くっそ……バカにすんじゃねぇ……この俺、吉良 煌斗様が最強なんだぁぁぁ!!」


 超巨大ゴーレムはゆっくりと起き上がり、周囲をぐるりを見渡す。

 

「必ぃ殺っ! ギルバァァァトビィィィムっ!!」


 懲りずに屋根の上に登っていたドラグネットの勇ましい指示の声が周囲に響き渡った。

 燃え盛る街中へそれぞれ配置されたドラグネット謹製、精巧な造りの複数体のゴーレム――ギルバートシリーズ――は、頭部の巨眼を燃やし、そこから超巨大ゴーレムへ向けて真っ赤な光線を放った。


 超巨大ゴーレムにとって、この光線が一発だったならば焼石に水だった。

しかし前後左右、更にその間。ギルバートは超巨大ゴーレムをぐるりと取り囲むように配置された一斉光線攻撃を続ける。

光線の圧力は超巨大ゴーレムをその場に押し留めた。


「くそっ……邪魔なんだヨォ!!」


 煌斗は吠え、超巨大ゴーレムは腕を凪いで、黄金の衝撃波を発生させる。

 衝撃波は右側に配置されていたギルバートを瓦礫ごと吹き飛ばした。


「ふふん! 次、行ってみよぉ!」


 ドラグネットが指を鳴らすと、新たなギルバートが現れ、光線を放ち始める。


「くそっ! 邪魔をするな! 俺と瑠璃姉の異世界無双冒険譚を邪魔をするなぁぁぁ!!」


 超巨大ゴーレムは何度も衝撃波を発してギルバートを破壊する。

しかし撃破されるたびに、街の様々なところから新たなギルバートが出現し包囲光線を撃ちだす。

 煌斗と彼の操る超巨大ゴーレムはすっかり身動きを封じられていた。


「そろそろ頃合いですね」


 ドラグネットの横で、ずっと腕組みをしつつ、超巨大ゴーレムを見上げていたニーヤが呟く。


「そうだね。じゃあそろそろ……っと、その前に」


 ドラグネットはニーヤへ向き直った。そして頬を真っ赤に染めて、なぜかもじもじとしだす。


「なんですか?」

「あの、あのね、えっと……」

「ドラ?」

「さっきは励ましてくれてありがとね!」

「……? どうしたのですかいきなり?」


 熱のこもったドラグネットの声に、ニーヤは小首を傾げた。


「カズマもニーヤも、我がままなあたしに厳しい声をかけてくれた。だけど厳しいのはあたしのことを想ってくれてる優しさだって気づいて……だからあたし、前に進めた! 勇気出すことができたんだよ!」

「なるほど。ドラのためになったのならマスターも、ワタシも本望です」

「だからね、その……これからもずっと、友達でいてくれる?」


 ドラグネットは恐る恐ると言った具合に、ニーヤを見上げながら聞いた。


「嫌です」

「ええっ!? そ、そんなぁ……! ここはOKっていうところでしょぉ!」

「だってワタシはホムンクルスで、生意気で、大嫌いなのでしょ?」

「だ、だから、あれはその! 今はニーヤのこと、一馬や瑠璃みたいに大好きだよぉ! 信じてよぉ!!」

「……」

「ニーヤぁ! ぐすん……」

「すみません、冗談です。全部嘘です。さっきビンタされた仕返しです。物理で殴る代わりに精神的にぶん殴ってみました」


 ニーヤは鉄面皮をわずかに崩して笑みを浮かべる。

 ドラグネットはホット胸を撫で下ろすのだった。


「ワタシもドラと一緒にいると胸の辺りが暖かくなるようになりました。これはおそらく好きという感情に起因しています。ならばワタシもドラとは今後とも友でありたいと願います!」

「よかったぁ! じゃあ、これからも宜しくねニーヤ!」

「はい、こちらこそ! では――我が友ドラグネット=シズマン、始めましょう!」

「うん!」


 ドラグネットとニーヤは硬く手を結び合って、超巨大ゴーレムを見上げる。

 

 ドラグネットからは赤の、ニーヤはからは魔力の気配が迸る。

2人の輝きは絡み、混ざり合って、神々しい輝きへと変わった。


「融合問題なし! 行けます、ドラ!」

「わかったよ、ニーヤ!」


 2人から一際眩い輝きが迸った。


「拘束!」

「魔法!」

「「照射ぁぁぁーっ!!」


 ドラグネットとニーヤが結んだ手を突き出すと、そこから白色の巨大な魔法陣が現れ、超巨大ゴーレムへ向けて飛んでゆく


「ぐ……こ、これはぁ!?」


 魔法陣は超巨大ゴーレムへぶつかった途端、紫電を浮かべさせた。

 煌斗は何度も超巨大ゴーレムへ動かそうと魔力を送り込む。


 しかしギルバートシリーズの拘束光線、そしてドラグネットとニーヤの拘束魔法を浴び、完全に身動きを封じられた。


「さて、次は私の出番か!!」


 給仕鎧メイドアーマーを装備した瑠璃は颯爽と路地裏から超巨大ゴーレムの足元へ立つ。

そして超巨大ゴーレムを見上げて、僅かに涙を流した。

 たとえ街を無作為に破壊しようとも、狂ってしまったとしても、涙を流してしまったのは幼いころ煌斗と過ごした優しい思い出があるから。

しかし、これで煌斗へ捧げる涙は最後。すべてを優しい思い出の中へ封じ込める時。


「今度こそ本当にお別れだ。さようなら煌斗……!」


 決意の言葉と共に錬成スキルを宿した右手で地面を叩いた。


「連続錬成っ!!」


 瑠璃の錬成能力が地面から必要な物質を分別し、再構築してゆく。

 土が割れ、そこから瑠璃の鍛冶師の力によって生み出された壁が連続で隆起する。

 大地を割ってずらりと並び始めたそれは、さながら超巨大ゴーレムの頭へ向かう長い階段。

 

「一馬、今がその時だ!」

「駆け上がれ、アインっ!」

「ヴォォォォっ!!」


 一馬が指示を叫び、白銀の巨人アインが跳んだ。

 瑠璃が錬成した階段を駆け、ニーヤとドラグネットが拘束する超巨大ゴーレムの頭のてっぺん目掛けて駆け抜ける。

 

「ふざけるな……俺が最強だぁぁぁ!!」


 煌斗の激昂が響き渡った。しかしそれだけ。

 そしてアインは背面からドラゴンバーストを放ち、夜空へ高く舞い上がった。

 

 アクスカリバーを掲げる巨人は月光を浴びて、白銀の装甲を神々しく輝かせる。

 

  斬魔刀アクスカリバーへ、アコーパールで更に増幅されたニーヤとドラグネットの合体魔力が集ってゆく。

 同時発動させたのは、切れ味上昇の斬鋼、オーガの強い膂力を付与するオーガパワー、そして必殺スキルエアスラッシュ。

 しかしこれだけではきっと届かない。

 だからこそ――!

 

「ヴォォォォッ!!」


 アインは竜の咆哮のような声を上げ、頭のアーメットの隙間から赤く、鋭い輝きを放った。

 

 竜の魂を力に変え、相手を圧倒する力――竜の怒り。

 未知の力の奔流はアインを包み込んだ。竜の咆哮を彷彿させる猛り声がアインから響きわたる。

 

 しかしこれでもまだ、敵を圧倒するには力が足りない。

 

「ニーヤ、もっと行くよ!」

「了解っ!」


 月を背負い、空を舞うアインをニーヤとドラグネットは見上げ、固く結んだ手を突きつけた。

 

「「アクスカリバー、フレイムアーップ!」」


 二人がそう叫ぶと彼女達を取り巻いていた神々しい輝き輝きがアクスカリバーへ流れ込む。

 それは瞬時に激しい炎となり、刀身を赤く燃やし始めた。

 

 それはドラゴンゾンビを葬った炎のよりも、熱く、巨大な――超巨大ゴーレムさえ両断できる、白き巨人の烈火の巨剣!

 

 矢のように早く、炎のように熱く、そして竜のように雄々しく――炎の大剣を振りかざしたアインを前にして、超巨大ゴーレムと煌斗はだたじろぐことしかできない!


「喰らえ! これが俺たちの四人の力――ハイパーフレイムアクスカリバーぁぁぁ!!」


 烈火の巨剣がゴーレムの頭を、胸を、腰を真っ二つに切り裂く。

 炎が一瞬で燃え広がり、超巨大ゴーレムは業火に包まれる。

 

「俺は瑠璃姉と一緒に、この世界で異世界無双……」

「――終わりだ、煌斗」

「俺が最強なんだ……俺がぁぁぁ!!」


 炎に包まれた超巨大ゴーレムが瓦解を始め、灰から塵へと変わって行く。

 

 トロイホースを蹂躙した超巨大ゴーレムの崩れるさまを、一馬達はそれぞれのところで見つめ続けるのだった。


 

【白き巨人:アイン】現状(更新)


 

★頭部――龍鱗アーメット

*必殺スキル:竜の怒り


★胸部――丸太・魔石×1

*補助スキル:魔力共有


★背部――魔法上金属製ランドセル×1

*移動スキル:ドラゴンバースト


★腹部――丸太


★各関節――アコーパール×10

*補正スキル:魔力伝導効率化


★腕部――鎧魚の堅骨・球体関節式右腕部・魔法上金属(素材追加)

*攻撃スキル:ワームアシッド

*攻撃スキル:セイバーアンカー

*攻撃スキル:スパイダーストリングス

*必殺スキル:アインパンチ

*補正スキル:オーガパワー


★脚部――鎧魚の堅骨・魔法上金属(素材追加・交換)

*補正スキル:水面戦闘

*補正スキル:オーガパワー


★武装――斬魔刀アクスカリバー×1

*必殺スキル:エアスラッシュ

*必殺スキル:フレイムアクスカリバー

*超必殺スキル:ハイパーフレイムアクスカリバー NEW!

*補正スキル:斬鋼(切れ味倍加)


★武装2――ホムンクルスNO28:ニーヤ×1

*補助スキル:魔力共有

*攻撃スキル:障壁突撃(V-MAX)


★武装3――虹色の盾×1 

*防御スキル:シェルバリア


★武装4――戦闘用アームカバー

*必殺スキル:撃滅鉄拳アインパンチ


★武装5――パイルバンカー


★武装6――白銀の鎧


★ストックスキル

 なし


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