迷宮深層へ叩き落されたマリオネットマスターの俺、それをきっかけに、巨大人形をどんどん強化して、ホムンクルス(美幼女)とイチャコラしながら突き進み己の道を切り開く。お前らなんてもう知らねぇ!
第15話:球体間接搭載計画、とぬるぬるべとべと
第15話:球体間接搭載計画、とぬるぬるべとべと
一馬は地面に置いた背嚢から、アインの修復用に持ち歩ている道具箱から金づちを手に取り、もう一度鎧魚の骨を叩いてみた。
心地よい音が響き渡った。
強度は十分にある。この骨は、アインの修復素材に仕えるに違いない。
一馬ははやる気持ちを堪えつつ、背嚢から大事にしまっておいた羊皮紙の巻物を取り出し、開いた。
そこには“デッサン人形”を髣髴とさせる、球体関節を持った人型の設計図が詳細に描かれていた。
深層に叩き落される前に、瑠璃がアインの改造用にと、一馬へプレゼントしてくれた設計図だった。
鎧魚の骨を上手く加工すれば、アインの新しい手足のフレームにできそうだった。
ならば課題はあと一つ――可動範囲を大幅に上昇させる“球体関節”をどうするかである。
「マスター、何かお悩みですか?」
設計図とにらめっこをしていた一馬へ、ニーヤが興味深そうにのぞき込んできた。
「え? ああ、うん。アインをこの際思い切って更に強化しようと思って。ニーヤは、なんか、こう、球体を自由に作る素材かなんかを知らないか?」
「球体?」
「そっ。自由に形を変えられて、ある程度均一な丸いもの」
「でしたらプランは2つ。一つはマド鉱石による球体の成形です。この鉱石はマスターのご注文通り自由に成形でき、熱することで固まって、かなりの強度を誇ります」
「おお、じゃそれだな! で、どこにあるんだ?」
「すみません、わかりません……」
昨日までは鉄面皮で機械的に回答をしていたニーヤだったが、今はそこはかとなく申し訳なさそうな雰囲気が伝わってきた。
「ニーヤでも? ほら、昨日見せてくれたアナライズとかで」
「あれはあくまで迷宮構造とモンスターの位置を確認するためのものです。地中深くまでの鉱石までは検索不可能です。申し訳ございません……」
これ以上、どうしようもないことで問答を重ねても、ニーヤを困らせてしまうだけだろう。
第一プランのマド鉱石による球体関節の成形は却下。
「じゃあ第二プランってのは?」
「アコーパールの採取です。この物質は球体という点がマスターのご注文に合致しました。幸い、この付近にアコーシェルという巨大魔物の群生地を探知しました。採取に関しての問題・危険性もワタシと現状のアインの力をもってすれば可能な限りゼロです。このプランを実行しますか?」
ニーヤは決して嘘は言わない。彼女が断言するなら信用しても良いと思う。
「わかった。じゃあそうしよう」
「かしこまりました。では支度を整えましょう。ワタシはマスターへの供物を用意してまいります」
「ニーヤちょっと! もしかしてまた長い?」
嫌な予感がした一馬がそう聞くと、
「? 30キロほどの行程です。なにか問題がありますか?」
やっぱりニーヤはポンコツかもしれない。
●●●
ニーヤの案内に従って、一馬はのべ30キロの行程を進んでいた。
どうやらこの階層は他とは雰囲気が違い、水が豊富にある様子だった。
「迷宮にこんなところがあるんだな」
「モンスターも生き物です。こうしたエリアがあるからこそ、休息・水分補給を取ることができ、生存が可能です」
「って、ことはもしかしてここには……」
「お察しの通り数多のモンスターが闊歩しております。しかしご安心ください。常に安全なルートを選んでおります。万が一の時は、このニーヤが、たとえ機能を停止しようとも、マスターをお守りいたします!」
小さな女の子に守ると言われても微妙な感じ。それに――
(なんだかんだでニーヤが傍に居てくれるから寂しくないけどね)
アインが微妙に震えたような気がする。もしかして“嫉妬”しているのか、などと思う。
そんなこんなで目的地に到着した。
泉のエリアと同じく、水と樹木が息づく、生命の息吹を感じさせるエリアだった。
「あちらがアコーシェルです。あの中にアコーパールという球体が存在します。かのものは魔法発動の触媒にもなり、強度もかなりのものです」
「まんま真珠貝だな……」
水辺にドーンと鎮座する巨大な貝を見て、一馬はそう零した。
「作戦プランを提示いたします。まずはワタシがけん制。アコーシェルの殻を開かせます。その隙にマスターはアインを突貫させ、開いた殻を無理やりこじあけてください。そうすればかのモンスターは主神経を引き裂かれ、瞬時に絶命いたします」
さらりと恐ろしいことを口にするニーヤに一馬は苦笑を禁じ得なかった。
「マスター、ご準備はよろしいでしょうか?」
「あ、ああ」
「では参ります!」
ニーヤが飛び出す。
アコーシェルはすぐさま巨大な貝殻を開く。
「ふわっ!」
貝の触手がニーヤを捕らえた。
「やっ! ふわぁっ! んんっ!」
ぬめぬめした触手が遠慮なくニーヤを蹂躙して、べとべとにし始めた。
「な、なにやってんだ!?」
「マ、マスター、んっ! い、いまですぅ!」
「ああもう! アインッ!」
「ヴォッ!」
指示通り一馬はアインを突進させた。残った右腕を思い切り突き上げて殻を無理やりこじ開ける。
アコーシェルからぶちぶちと嫌な音が聞こえて、変な液体が辺りに飛び散った。
すぐさまニーヤを弄んでいた触手が力を失い、彼女をあっさりと開放する。
目の前には待望の球体関節の素材、きらりとした白色を放つ、アコーパール。
しかしアコーパールはとりあえず置いておいて、一馬は妙な液体でべとべとになったニーヤを抱き起こした。
「ニーヤ、しっかりしろ! ニーヤっ!」
「や、やりましたね、マスター……大成功、はぁ……」
粘液のせいでぬるぬるべとべとちょっと生臭いニーヤは、肩で息をしつつも、無事をアピールしてきた。
「成功じゃないよ! 危ないじゃないか! 何を考えてるんだ!?」
「捕食はされませんのでご安心ください。アコーシェルは舌で僅かに魔力を舐めとるといった行動をします。ただの人間では致死量の吸収ですが、ホムンクルスのワタシでしたら問題ありません。今朝頂いたお食事で余裕もありますし……」
職務に忠実なのは嬉しいが、これは良くない。
色々と。主に倫理的に。
「あの戦法は禁止! 危ないから! これ命令!」
「イエス、マイマスター……。マスターははお優しい方ですね。ワタシのような人造生命体にまで、人間のような扱いをしていただいて、ありがとうございます。改めて一馬様のものになれたことを誇りに思います、」
ときおり見せるニーヤの人間のような表情に、一馬は胸を高鳴らせた。
やっぱり控えめに表現しても可愛い。
「よ、よし! 次のアコーシェルだ! 今度は俺の指示通りにやってくれよ!」
「かしこまりました、マスター!」
――そして次の戦闘。
「マスターのご命令です! 触れさせませんっ!」
ニーヤは突貫し、彼女を絡め取ろうとした触手を避ける。
別触手が現れるが、腕からの光の剣で切り裂く。
その瞬間にアインが殻をこじ開けようと突っ走る。
そんな中別のアコーシェルが触手を伸ばして、アインを操るために無防備をさらしている一馬へ襲い掛かる。
「マスターにはちょっとだけも、触手の先っぽだけでもダメですっ!!」
するとニーヤが飛び出してきて、青い光の剣で触手を断ち切り、事なきを得た。
そして訪れた絶好のチャンス。
「ヴォ―ッ!!」
アインは再度、アコーシェルの殻を無理やりこじ開けた。
巨大な貝はぶちぶちと嫌な音を立てつつ、妙な液体をまき散らしながら絶命する。
「はぁー危なかった……」
「マスター、どこにもお怪我はありませんか? 大丈夫ですかっ!?」
ニーヤは心底心配そうに一馬の辺りをくるくる回っていた。
「大丈夫。ニーヤが守ってくれたからね。ありがと!」
「当然ですっ! マスターをお守りするのがワタシの役目ですっ! やはりこの戦法は承認しかねます。アコーシェルは魔力吸収の際、全ての神経をそこへ集中させます。そこが一番のチャンスなのです。ですからやはりワタシが囮に……」
「いやダメだ。このままで!」
「ッ!? りょうかい、マイマスター……」
渋々と言った様子でニーヤはうなずく。
正直、ニーヤの痴態をみて、激しく動揺している一馬がいた。
(いやいや駄目だ! 絶対にダメ! ニーヤはダメ!!)
ニーヤへ手を出したら、きっと変な世界に落ちてしまいそうだと思う。
そんなこんなで、アコーシェルの狩猟は順調に進んでゆく。
目標数の獲得は案外楽勝だった。
【素材獲得状況】
*鎧魚の骨×30
*アコーパール×13
そしてラッキーなことに、新しいスキルも手に入れたのだが、今は使えないらしい。
【木偶人形:アイン】現状(更新)
★頭部――鉄製アーメット
★胸部及び胴部――丸太
★腕部――伸縮式丸太腕部×2(左腕大破)
*攻撃スキル:ワームアシッド
*攻撃スキル:セイバーアンカー
★脚部――大クズ鉄棒・大きな石
★武装――斬魔刀×1
*必殺スキル:エアスラッシュ
★武装2――ホムンクルスNO28:ニーヤ×1
★ストックスキル
*防御スキル:シェルバリア(使用不可) NEW!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます