迷宮深層へ叩き落されたマリオネットマスターの俺、それをきっかけに、巨大人形をどんどん強化して、ホムンクルス(美幼女)とイチャコラしながら突き進み己の道を切り開く。お前らなんてもう知らねぇ!
第14話:ニーヤとお食事。そしてベッドイン!?
第14話:ニーヤとお食事。そしてベッドイン!?
捕まえた大魚はニーヤによると“鎧魚”という珍しい存在だったらしい。
しかも美味しくて評判がいいとのこと。
確かに軽く塩をまぶして焼いただけで、ほろほろとした口当たりと、強いうま味が舌の上にじんわりと広がる。
久方ぶりに美味いものを食べて、一馬は幸せだった。
しかしそんな彼の真向かいで、ニーヤは膝を抱えて寂しそうに座っている。
「どうした?」
「申し訳ございません、マスター。本来、食料の調達もワタシに課せられた使命です。ですが今回はマスターの手を煩わせてしまいました。申し訳ございません……」
「気にするなって。むしろこの成果はアインと俺と、ニーヤのものじゃないか」
一馬は串焼きにした魚の切り身ををニーヤへ差し出した。
「これは?」
「ニーヤの分。食べられるだろ? もしかしてこういうことって意味が無いか?」
「意味はあります。食物の経口摂取はマスターとのコミュニケーションの一環であり、また消化された食物はワタシに内臓されているストレージへ戦闘用の魔力として蓄積されます。僅かではありますが……」
「意味はあるんだな? じゃあ食べろ」
「いえ、そんな! これはマスターの栄養源です。頂くわけには参りません」
ニーヤは心底慌てた様子を見せた。
ならば――
「ならニーヤ、これからは俺と一緒に食事をしろ! 俺が食べるものはお前も一緒に食べる! これは命令だ!」
「ッ!! りょ、了解、マイマスター……」
命令とあらば仕方がない。ニーヤはおずおずと一馬から、鎧魚の串焼きを受け取る。
そして再び、戸惑い気味の視線を向けてきた。しかし、鼻はしきりにぴくぴく動いていて、魚の良い匂いを感じている様子。
一馬はニーヤの様子を見て、小さい頃に飼っていた仔犬のことを思い出す
「だから食べて良いって。よし!」
「は、はい! ありがとうございます……はむ……ん――っ!!」
突然、ニーヤの顔が真っ赤に染まった。
鉄面皮があっという間に崩壊し、頬がへにゃりに緩み始める。
「ど、どうした?」
「び、美味です……マスターにも召し上がって頂きたいほどに……」
「俺、すでに食べててるけど?」
「あっ……そ、そうですよね……
「ニーヤを作った人はずいぶんと人の気持ちがわかる人なんだな」
「ワタシはあらゆる意味でマスターへ奉仕する存在ですから」
「じゃあもっと食べて。遠慮せずに」
「はい!」
ニーヤははむはむと魚を食べ続ける。
こうして誰かが傍で美味しそうにものを食べて、それを共有できることが嬉しい。
(いつか先輩ともこうして食事がしたいな)
その願いを叶えるためには、ここから生還し、彼女を綺麗の下から救い出さねばならない。
(先輩。必ず貴方を救い出してみせます。アインとニーヤと俺が、必ず!)
やがて時は過ぎ、腹も膨れた一馬は就寝しようとした。
太陽がないはずなのに、泉エリアが夜のようなそれに包まれてゆく。
ニーヤの話ではここには"昼光虫"というのがいて、約12時間刻みで発光と消灯を繰り返しているとのことだった。
多少の熱も発してるようで、このおかげで灯りが点いている時は、暖かくて過ごしやすい。
ならばその逆も然り。
「寒っ……!」
一馬は寒さのあまり身震いした。更に近くに川が流れているので、泉のエリアの夜はことのほか寒さが厳しかったのである。
しかしこの程度で弱音を吐いている場合じゃない。
今、自分がすると誓ったことは、簡単に為し得るものではない。
それでもなさねば、きっと後悔が残る。
だから寒さなど、何するものぞ。
「マスター……」
不意にか細いニーヤの声が聞こえてくる。
なんだか嫌な予感がした。
(まさか、夜這いとかじゃないよな……)
そうして聞こえてきた衣擦れの音。
「失礼します……」
もそもそとニーヤは一馬の包まっているシーツに潜り込んできた。
「あ、あの!」
「お邪魔、ですか……?」
日中よりもか細く、弱弱しい声に、二の句が繋げない。
ニーヤは一馬の背中にぴったりと体をくっつけて来ている。ニーヤの身体のラインが感触としてしっかりと伝わってきている。
もはや逃れられそうもない。
(もうするっきゃないのか……)
ニーヤに全く興味がないわけではない。しかし踏み込んだら最後、元の自分には戻れなような気がして、これまで拒否を続けていた。何故か、瑠璃のことも頭に浮かんで、意図せず罪悪感を覚えることもあった。
だけどこんな状況になったらもはや決めるしかない。たとえニーヤがホムンクルスであろうとも、これ以上突き放すは可哀想だと思う。
「マスター……暖かいですか?」
「お、おう。なんか、とっても……」
「そうですか、よかったです。マスターの体温も平常値に戻りました。これで安心です」
「ああ……」
「先ほどマスターからいただいた供物のおかげです。どうか今夜はワタシを思う存分抱いてください」
「……わかった」
据え膳食わぬは男の恥。いざっ!
「では、スリープモード起動します……」
「すりーぷもーど……?」
「温度はこのまま維持をします。ワタシを暖として抱いてください…………では……」
「あ、えっと……ニーヤ!?」
「すぅー……すぅ……」
ニーヤは静かな寝息を上げ始めた。
拍子抜けした一馬はモゾモゾと隣で寝転んでいるニーヤの顔を見た。
穏やかな顔で、安らかな寝息を上げている。控えめに言っても、かなり可愛い。
そしてニーヤが寄り添ってくれているおかげで、あったかくて気持ちが良いが――
(生殺しだ……)
ガッカリなのか、安心しているのか、一馬自身が一番よくわからなかった。
しかしこんな穏やか寝顔を欲望で崩したくはない。やっぱりニーヤとそういうことをするのは良くない。
とりあえず今日のところは、緩やかな熱を発して、穏やかな寝顔を浮かべるニーヤの頭を撫でるに留めておくのだった。
今はおそらく状況的に最悪にある。だけど、ニーヤと出会ったことで、そんな中でも一握りの幸せを手にすることができた。
そして瑠璃にも、こんな最悪な世界ではあるが、少しでも楽しく、幸せに過ごしてほしいと願ってやまなかった。
(先輩、大丈夫かな。綺麗とかに嫌なことされてないかな……って、煌斗は幼馴染だっけ? あいつが今、先輩を守っているのかな……)
煌斗は悪人ではないし、瑠璃をどこか特別視している雰囲気がある。
ある意味では安心だが、またある意味では、一馬の胸を悩ませる存在である。
しかし迷宮の深層にいる一馬は、ただ瑠璃の無事を祈ることしかできない。
(先輩、俺必ず戻ります。だからどうか、その日まで無事で居てください)
決意を改め、一馬は眠りに就いてゆく。
「マスタぁー」
「――ッ!?」
すると寝ぼけたニーヤが、更に身を寄せるというか、抱き着いてきた。
結局一馬は昼光虫が輝きだす瞬間まで、緊張のためにロクに眠れなかったのである。
⚫️⚫️⚫️
翌朝、一馬は冷たい泉の水で顔を洗って寝不足を吹き飛ばす。
ほんの少し眠れたので、問題は無い筈。
「マスター! お食事の準備が整いました!」
と、寝不足の原因を作ったニーヤが、向こうから元気な声を上げている。
どうやらニーヤは元気いっぱいな様子。心なしか、鉄面皮では無いように感じるのは気のせいか? はたまた別に何か原因があるのか否か。
「今回も頂いて宜しいのですか?」
「だから命令だって言ってるだろ? 素直に食べろって」
「はい! では、頂戴いたします!」
「ちょっと待った!」
「?」
「えっとだな、食べるということは他の命を貰うということ。ちゃんと食べ物にも感謝をしないとね」
「確かに! 気づきませんでした! 仰る通りです! さすがはご聡明なマスターです!」
またまた偉い褒めようで恥ずかしかったが、ニーヤが目をキラキラさせて尊敬のまなざしを贈っているので悪い気はしない。
「でも感謝とは具体的にどのようにすれば?」
「俺たちは食事の前に必ず、食べ物を手を合わせて、感謝を込めてこう言う――“頂きます!”って」
「なるほどなるほど! 祈りを捧げるのですね! 素晴らしい習慣です!」
「あはは……腹も減ったし、さっそく行くぞ?」
「はいっ!」
二人は魚の切り身へきちんと手を合わせて、
「「いただきまーす!」」
二人の元気な挨拶が泉のエリアに響き渡る。
それにしても、鎧魚の身は何かヤバいものが成分として混じっているんじゃないかと思うくらいに美味だった。
たった二回の食事で、巨大魚はあっという間に骨に代わっていたのである。
(俺も結構食べたけど……)
「鎧魚は美味しい、鎧魚は美味しい、鎧魚は超美味しい……マスターも大好き、マスターも大好き、マスターも超大好き…………記憶完了」
むしろニーヤの方が一馬よりも食べていた。あんな小さな体のどこに入るのかと考えてしまうほど、ニーヤは大量の切り身をぺろりと平らげていたのである。
(まぁ、戦闘用の魔力に変換されるっていうし、今後に期待しますかね)
そんなことを考えつつ、何気なしに鎧魚の骨に触れる。ひんやりと冷たく、そして思いの外固い感触を得た。
それこそ“金属”と同等と考えても差し支えない。すると唐突にアイディアの神様が、一馬へ降臨する。
(これは使える!)
*ニーヤとのイチャイチャパートは一旦この辺りで。次回からまた戦闘に戻りまーす。
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