第12話 武道大会

明日は武道大会の決勝戦だ。

そして、僕は協会に泊まっている。


「なぁ、お兄は彼女とかいるの?」


「いないよ」


「じゃあ、シスターは好き?」


そう、所謂恋ばなというのが男子部屋では行われていた。


「どうだろう」

実は僕にも分からなかった。

シスターを女の子としてこの間から意識してしまうようになったけれど、これが好きと言う気持ちなのかが分からない


バルに聞いてみよう

「バルはメリーが好きだよね。

どうして好きなの?」


顔が真っ赤にして枕に顔を埋めてしまった。

これは聞いちゃダメなことだったみたいだ。


「どうしてバルがメリーの事を好きって知ってるの。マクロスが教えたのか?」


「バルってメリーの事好きなのか?

そんな事俺は知らなかった」


マクロス知らなかったの。

見てればわかると思うけど、

「何となくそうかなって思ったんだよ。

でも、この話は辞めにしよう。ねっ、バル」


あれ?反応がない


「あっ、バル。そのまま寝てるぞ」


「そっか、じゃあ僕たちも寝ようか。

おやすみ」


そして、次の日。

僕は綺麗な歌声と共に目覚めた。


誰の歌声だろう?

あっちの方から聞こえる、行ってみよう。


大きい広間まで来ると歌っている人物が見えた。

そして、歌っていたのはシスターだった。


しばらく、見ているとシスターが僕に気づいた。

「あっ、おはようございます」


「おはようございます。

綺麗な歌声ですね」


少し頬を赤らめたその姿に僕は何とも言えない気持ちになってしまった

「ありがとうございます。

この後、子供達とも一緒に歌うんですよ

ユウトさんも一緒にどうですか?」


それは難しい、何故なら音痴だから。

「すいません、歌は苦手で」


「そうですか、一緒に歌いたかったので残念です」


「…」

「…」

このなんとも言えない空気を壊してくれたのは子供だった。


「おはよぅ シスター、ユウトにぃ、」

「おはよー」


その眠たそうな目を擦りながらゆっくりと集まってきた。


「みんな、おはよう!」


少し時間が経ち、全員が広間に集まると大合唱が始まった。

子供たちの元気な歌声が何だか僕の心を満たしてくれた気がした。


そして、僕たちは武道アリーナに来ていた。

「決勝戦だけなのにこの人数?」


「正確には決勝戦とエキシビションマッチがあります。

ですが、それでも凄い人数ですね。」


いや、本当に凄い人と熱気だ。

始まるのが待ち遠しい


「こんな凄い席で見れるなんて凄い。

ねぇ、シスター」


「えぇ、本当に」


すると僕の耳元に小声で

「本当に良いんですか?

とても値段が高い席に私たちまでご一緒させて頂いて」


そう。僕たちはシロウさんの計らいもあり特等席で決勝戦を見れることになった。


「シロウさん。本当に良いんですか?」


「だから、何度も良いって言ってるだろう。

俺は4位の負け犬だから特等席を用意されているんだよ。

そんで、俺は君らを招待した。ただそれだけ」


シロウさん曰く、この特等席は

「決勝戦を見て君の弱さを自覚しなさい」という惨めな証らしい。

僕は4位でも凄いと思うんだけどね。


そして、いよいよ決勝戦が始まった。


「さぁ、始まりました、武道大会決勝。

現在オッズはニコラ選手が8倍、テンネル選手が2.3倍となっております。

解説は私と前回優勝者シリカさんで行っていきます。

シリカ選手 よろしくお願いします」


「よろしくお願いします」


「まず、このオッズの差から見ても、やはり強いのはテンネル選手なんでしょうか?」


「どうでしょうか。オッズの差以外にそう思った根拠を聞かせてください」


「やはり、才能つまりスキルの差ですかね。

テンネル選手はおよそ20ものスキルを持つと言われています。

対しては、ニコラ選手は3つだけです」


「そうですねぇ。

スキルの数が果たして強さなのか?


なんてね、良くわかないですけど言えることは1つ、勝った方が強い。

それだけです」


「そうですか。ありがとうございます。

ここで、選手の入場です」


その言葉通り、二人の選手がそれぞれの登場口から出てきた。

そして、その一人が対戦相手に話し始めた。


「良く出てきたな。無能!

ビビって出てこないと思ったぜ ハッハッ」


「いえいえ。ビビりまくりですよ、何せ無能ですから」


「さっさと降参しろよ。

どうあがいてもスキル3つじゃ勝てないんだからな。

良い思い出にしたいだろ」


「そうですね。頑張れせて頂きます」


僕の距離でギリギリ聞こえるぐらいだったから多くの人は聞こえていないだろう。

だが、僕はニコラさんを応援することに決めた


「では、私が始め!と言ったら始まりです。


始め!」

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