第5話 ふこうなきおく

僕は今、夜の街に来ている。

前にいた村では夜になると月明かりのみだったのに対しこの明るさは異常だと思った。


ただ、昼と夜だと雰囲気が全然違うな

なんかすごく賑わってる。



(うわぁー)

冒険者ギルドの酒場凄い、

なんとなく入ったけどすごいな。


「不幸話大会!!

俺は今日、ちょっとばかしやらかしてしまった。

そこでだ、俺よりも不幸だったことを話してもらい勇気を貰いたい。

お眼鏡にかなったやつはなんでも奢ってやる。


どんどん話していけ」


なんか始まった。


「俺から話そう。

1ヶ月くらい前かな、俺は借金をしてまで良い感じの大剣を買ったんだけどな。

新しい武器だし、強い武器だし。

結構、テンション高めで討伐依頼を引き受けたんだよ。


その武器はやっぱり強くて森ウルフを一発で倒せたんだけどよ、


だが、何故かあいつがでたんだよ。

あの魔物の捕食者、イーター・プラントがな


あいつの別名を知っているだろ、ウェポン・イーター


そう、俺の武器は溶かさせられたよ


それで、今も借金だけが残ってる状況さ」


「うーん。そうだな、たしかに不幸だなだが、奢るまではいかないな。

銀貨3枚ってところだな」


何あの人、お金をあげてるんですけど、

それより、ウェポン・イーターなんているのか、やばいね。


「じゃあ、次は私かな。

私はこの間まである男の人と付き合ってだけど、

その人は顔もカッコ良くて性格も良かったの。

それで、このままいけば結婚だ。嬉しいと思ってたんだけど、

彼はAランク冒険者になった瞬間に私を置いてどっかに行っちゃったの。

手紙と映像用水晶もちゃんと置いてあったわ。


風の噂ではものすごい美女と結婚したって聞いたわ」


「うーん。おれと付き合うか?


なんてな、冗談だ。

それは、どうしようか。

確かに裏切られるのは不幸なことだよな。

でも、そんな裏切るようなやつと結婚しなくて良かったと思うべきだな


銀貨5枚 よいしょー!」


人を信用するから悪いんでしょ。

しなければいい


「ところでシロウさんはどんな事があったんですか?

口に出した方がいい時もありますよ」



あの真ん中にいる人はシロウさんって言うんだ。


「あー、俺か。

俺さ、結構な大口の依頼を達成できて浮かれててさ昨日の夜、酒を飲みまくちゃったんだよ。

んで、朝起きたら、

何故かな、貴族様の家にいた。

やばいよな。


執事の人から話を聞いたら、

俺は昨日、

「こんな家に住みたーい」

「ちょっと見させてくれー!」

とかって行って乗り込んだらしい


たまたま、知り合いの貴族様で優しい方々だったからこうやって五体満足でここに立っていられるけど

やばいよな」


「それはやばいですね」


「俺の話なんかどうだっていいだろう、

そこの坊主、なんか不幸話してくれ」


なんか、みんなすごい体験をしてきているんだね。僕には無いから此処を出よう


「おいおい、どこ行くんだよ。

そんなに話したくなかったか?

ごめん」


ん?ぼく?


「すいません、あっ、でも

僕は不幸だったことなんてありませんよ」


正確には不幸な記憶が一切ないんだのね。

忘れさせてるのかな?


「そうか、君は幸せなんだな」


「はい、僕は幸せに生きています」


「そりゃそうっすよ、シロウさん。

そいつはまだガキっすよ。親が大事に大事に育ててますよ


「まぁ、子供に不幸になって欲しいと思う親は少ないからな。

坊主、今のうちに親孝行しておけよ、したいと思ったらもういないからな。俺の時みたいに」


「残念ですけど、それはできません。

僕にはもう親がいませんから」


「いや、お前、不幸なことないって言ってただろ。ねぇ、シロウさん」


確かに両親がいた時も幸せだったような気がするけど、別に今も不幸ではないな。


「それは、お前が人と比べすぎなのかもな。

あー、いやそうじゃないかもしれないぞ。もちろんな。

若くして親がいないことが何故不幸だと思ったんだ?

周りに親がいる奴が多いから親という存在がこの世にいない人は不幸だとでも思ったのか?


だが、坊主は不幸な事なんかとは思はなかったんだろ。そうだよな」


「そうですね。

自分を不幸だなんて全く思いませんでした。

両親が亡くなった時は確かに悲しいとは思いましたけど、沢山の思い出もあります不幸とは思わなかったですね」


「お前、奢ってるわ。

これは同情とか一切ないぞ。

単純にお前が好きだからだ」


えっ、いや。

「すいません。僕は女性が好きなので

あなたの気持ちには応えられません」


「いやいや、俺も女性が大好きだぞ。

お前の人間性が好きなんだよ」


そういうことか

「ありがとうございます。

じゃあ、オレンジジュースください」


「なんだ、オレンジジュースでいいのか?

酒は飲まないのか?」


「飲んだことないんで」


「ふーん、そうか。


じゃあ、食べ物は適当に、オレンジジュースとバッドライトをください」


店員さんに丁寧タイプの人なんだ、そういう人は僕も結構好きだな


「バッドライトってなんですか」


「飲むか?酒だけど」


「いらないです」


「いつか、お前と酒が飲みたいは」 


僕もお酒は飲んでは見たい


「いつかですよ。楽しみにしていてください」


「おう、楽しみにしてる」


そんな嬉しそうにしてくれるんだ。


それにしても雰囲気が父さんに似ているんだよな、

気を許してしまいそうだ。


~後書き~

自分自身は失敗をすると自分はなんて不幸なんだって思ってしまうんですよね。


その後直ぐに、いかに自分は恵まれていて幸せなのかを再確認してます。

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