第59話 番人
そして、2日後の朝である。
14人全員で朝食を取るのである。
まだまだ薄いイリーナのスープを飲み干しおっさんは皆に声をかけるのだ。
時刻はいつもの8時過ぎである。
「いきましょう」
「「「はい」」」
誰も抜ける者がいなかったようだ。
アヒムが台車を引く。
念のために1カ月分の食料を積んでいるのだ。
そして、1カ月経っても戻らない場合は、失敗に終わった可能性が高い旨冒険者ギルドに伝えるようチェプトに伝えるのである。
その際、お金もそれぞれの家に送金する額も伝えているのだ。
拠点は、大通りから1つ中の道にあるため、ダンジョンを目指すべく大通りにでるのだ。
(あれ、人が多いな)
「「「いってらっしゃいませ!!!」」」
「「「ご無事で!!!」」」
「「「無理はしないでください!!!」」」
大通りを埋め尽くす人達である。
万を超える街の人達が、どうやらおっさんら一行の激励のために朝から待っていたようだ。
数百の兵たちがおっさんたちの行く道を街の人達がふさがないように道路整理をしている。
「セリムさまああああ!!!どうかご無事で!!!!」
「アヒムさま。またお店に来てくださあああい!!」
(やはり、セリムとアヒムが人気あるな。これはあれかな3日後にダンジョンコアに挑戦するって冒険者ギルドに伝えたからかな)
冒険者ギルドは99階層攻略達成と本日ダンジョンコアを取りに行く戦いをする旨をダンジョン広場に掲示したのだ。
おっさんから報告を受けたその日にウガル家に報告をした冒険者ギルドである。
3日は街の人達が知るには十分すぎる日数であったようだ。
声援の8割以上がセリムとアヒムである。
アヒムは声がする女性の方に笑顔で手を振っている。
セリムは泣きそうである。
消えない激励の道を20分ほど歩くと、ダンジョン広場に到着する。
ダンジョン広場を10分歩けばダンジョンだ。
冒険者ギルド証を見せ、広場に入ると、そこには広場を埋め尽くすほどの冒険者達がいたのだ。
ダンジョンの入り口まで道を開けている。
行列もないようだ。
そして、おっさんらのために開けた道の両脇側をAランクやBランクの冒険者達がいる。
何度もダンジョン攻略の講習会で見た顔ぶれたちである。
(やばい、これは悪いことをしたな)
そんな中、皆の食い扶持を邪魔したと思うおっさんである。
そんなおっさんの考えとは裏腹にまるで自分のことのように、誇らしく思う冒険者達である。
冒険者達に見送られ、ダンジョン入口前にできた壇上を回り込み、ダンジョンの中に足早に入っていくのであった。
99階層に到着するおっさんら一行である。
「では、予定どおり、ここで1日待機します。野営の準備を」
「「「はい!」」」
ワープゲートは一度入ると24時間使えないのだ。
もしもの時、逃げ切れるように24時間ここで待機して、ワープゲートを使える状態にしてからダンジョンコアの番人と戦うのだ。
まだ9時前である。
野営の準備をする皆を見るおっさんである。
(ウガルダンジョン都市について10カ月といったところだな。あっという間だったな)
講習会でのやり取りをブログネタにすべく整理をするおっさんである。
念のために現実世界に戻れるか確認したが、戻れるようである。
検索神はブログネタになると判断してくれたようだ。
アリッサがイリーナと共に夕食の準備をしている。
眺めているとアヒムから声が掛かる。
「あの、ヤマダ男爵様」
「はい、なんでしょう」
「実は結婚したい相手が出来ました」
(む、イグニルではなく、アヒムが先に結婚するのか)
「それはおめでとうございます。今度挨拶させてください」
「はい、もちろんです。それで実は」
話を聞くと、ウガルダンジョン都市の繁華街で働く女性であるということ。
これからダンジョンを攻略するという話をしたら結婚してほしいとお願いされた。
ダンジョンを攻略したら騎士になることを主にお願いするから、騎士になれたら結婚しようと約束したとのことである。
「分かりました。騎士ですね。イグニルも騎士にする予定ですが、だからと言って無理はしないでくださいね」
(みんなモテモテだな。だけど、〇〇したら結婚しようって話あまりしないでほしいんだけど。文化の違いか)
おっさんの言う文化は現実世界でも一部の人しか知らないのである。
体を休めるべく早めに階層前の広間で眠りに着くのだった。
そして、次の日朝食を食べ、ワープゲートの復活を待つ。
9時になり、24時間が過ぎたため、100階層を目指すのであった。
現在99階層の階層前広間からゆっくりとしたスロープで100階に降りていく。
台車は逃げるとき、逃げ切らない恐れがあるので、99階層の階層前広間に置いておく。
100階層にたどり着く。
1体しかいないので土壁を作らずソドンを先頭にゆっくり前に進んでいく。
歩きながらこの10カ月ほどのダンジョン生活に思いをはせるのだ。
(もうちょいか、頑張んないとな)
移動しながらやり残しはないか、タブレットで皆のステータスを見ながらもう一度確認するのだ。
NAME:ケイタ=フォン=ヤマダ
Lv:38
AGE:35
RANK:B
HP:1170/1170
MP:1200/1200
STR:237
VIT:348
DEX:348
INT:1150
LUC:363
アクティブ:火【4】、水【4】、風【5】、土【4】、回復【4】、治癒【4】、魔抵解除【5】
パッシブ:体力【4】、魔力【4】、力【4】、耐久力【4】、素早さ【4】、知力【4】、幸運力【3】、魔法耐性【4】、魔力消費低減【2】、魔力回復加速【2】
仲間:取得経験値上昇【2】、体力支援【2】、魔力支援【2】、力支援【2】、耐久力支援【2】、素早さ支援【2】、知力支援【2】、幸運力支援【2】
加護:検索神ククルの加護(中)
EXP:732948074
PV:738285
AS:33288
NAME:イリーナ=クルーガー
Lv:38
AGE:20
HP:780/780
MP:0/0
STR:530
VIT:306
DEX:230
INT:0
LUC:306
アクティブ:剣術【4】
パッシブ:礼儀【2】
EXP:722662347
NAME:ロキ=グライゼル
Lv:38
AGE:30
HP:706/706
MP:0/0
STR:460
VIT:230
DEX:301
INT:0
LUC:230
アクティブ:剣術【2】、槍術【4】
パッシブ:礼儀【1】
EXP:722671947
NAME:コルネ
Lv:38
AGE:16
HP:628/628
MP:0/0
STR:306
VIT:228
DEX:306
INT:0
LUC:191
アクティブ:弓術【4】
パッシブ:鷹の目【4】
EXP:722690997
NAME:セリム
Lv:38
AGE:17
HP:390/390
MP:289/289
STR:182
VIT:152
DEX:227
INT:274
LUC:474
アクティブ:剣術【1】、槍術【1】、格闘【1】、罠解除【3】、召喚術【4】
パッシブ:礼儀【2】、算術【2】、力【1】、罠察知【3】
EXP:722600072
NAME:パルメリアート=ヴァン=ガルシオ
Lv:38
AGE:19
HP:474/474
MP:0/0
STR:570
VIT:154
DEX:528
INT:0
LUC:191
アクティブ:格闘【4】
パッシブ:礼儀【3】、算術【1】、交渉【1】
EXP:720273888
NAME:ソドン=ヴァン=ファルマン
Lv:38
AGE:42
HP:827/827
MP:158/158
STR:269
VIT:450
DEX:113
INT:79
LUC:117
アクティブ:回復【3】、剣術【2】、槍術【3】
パッシブ:礼儀【2】、耐久【1】
EXP:720314031
NAME:アヒム=ペリオ
Lv:38
AGE:22
HP:622/622
MP:0/0
STR:343
VIT:230
DEX:306
INT:0
LUC:191
アクティブ:槍術【3】
パッシブ:礼儀【1】、魅了【1】
EXP:652706874
NAME:イグニル=ファスター
Lv:38
AGE:21
HP:443/443
MP:0/0
STR:342
VIT:228
DEX:305
INT:0
LUC:263
アクティブ:槍技【3】、剣術【1】
パッシブ:礼儀【1】
EXP:719361364
NAME:アリッサ=ロンド
Lv:38
AGE:18
HP:406/406
MP:0/0
STR:306
VIT:228
DEX:232
INT:0
LUC:228
アクティブ:槍技【3】、調理【2】
パッシブ:礼儀【1】
EXP:719337554
(ASポイント的に新たにスキルは2~3個取得できるか。臨機応変に取得しないとな)
なお、仲間支援魔法で全ステータスは3倍になっているのだ。
ソドンを先頭に前進を続けるおっさんら一行である。
「退避といった場合は速やかに退避を」
「「「はい」」」
掛け声を再度確認するようだ。
100階層を進み続ける。
宙に浮いたダンジョンコアの番人はだんだん大きく見えてくるのだ。
歩くこと2時間ほど。
数百mの距離まで近づいてきたのだ。
(敵は1体か。ならばソドンが押さえ込んで、周りを槍で倒すか。魔法で倒すならINTかMP上げるか。長期戦なら魔力消費低減か)
ASポイントで選択するスキルについて、拠点でも何度も考えていたことが頭の中を巡っていく。
50m近くまで近づいたところである。
ようやく、番人と思われる敵の細部まで見えるようになったところだ。
そろそろ目の前の敵に注意すべきと考えていたころ、セリムが呟くのである。
「ん?何だ?おかしいぞ」
「え?」
(フルプレートではないのか。イリーナやロキと同じ感じのハーフプレートだな。騎士っぽいな)
一旦動きを止めるおっさんら一行である。
「何がおかしいのですか?」
「いやもう少し近づかないと分かんないけど、あの鎧見たことあるなと」
「そうですか、もう少し近づいてみましょう」
(あれ、ほんとうだ。なんとなく見覚えがあるぞ。どこで見たっけ?)
さらに近づいていくおっさんら一行である。
40m
35m
30m
「あ!これってウガル家の鎧じゃないか!」
セリムがどうやら分かったようだ。
「本当ですね。たしかに、これ…」
『また、モンスターがやってきたか…』
おっさんが言い切る前に不気味な声を番人が発し始めるのだ。
しゃべる鎧と違い、口が動くのが見て取れるのだ。
「え?」
『どれだけ敵が来ようと向かってくるなら倒すのみだ!!どんな敵が来ようと我らは負けるわけにはいかぬのだ!!!』
セリムが反応する。
響き渡るように声を発しているようだ。
なぜなら、敵らしくない言葉であるからだ。
まるでおっさんらがモンスターだと言いたいように。
よく見ると腐敗した肉体が鎧のない部分から見て取れる。
兜も被っているがフルフェイスではないので顔も見て取れる。
顔も腐敗しているようだ。
「これはどういうことであるか?」
ソドンも動揺しているようだ。
『我はアレク=フォン=ウガル。王命の元にダンジョンコアを手に入れるまで、前進を止めるわけにはいかぬ!』
「「「な!!!」」」
『ゆくぞ!そして薙ぎ払え!わが勇壮な騎士達よ!!』
『『『おおおおおおおぉぉおぉぉぉ!!!!』』』
一体の浮いたアレクと名乗る番人の掛け声とともに、後方に2000体の騎士が出現したのであった。
地響きのような声が部屋一面を満たしたのだ。
ゆっくりとアレクと名乗る番人は地面に降りていく。
ダンジョンコアの番人との闘いが始まったのである。
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