第42話 命名①
セリムが魔法書により才能が目覚めた。
よって、今後のダンジョンの攻略について話し合いが行われたのだ。
ダンジョンは、攻略の方針としては、下の階を目指していく。
宝箱はあれば獲るがあえて探しはしない。
新しい魔石があれば必ずセリムに吸収させる。
この点において、セリムに何かを損はさせないということで話し合いがついた。
魔石について現在Aランクの魔石30個を競りに出している。
在庫もAランク30個あるのだ。
お金について、財布の白金貨が残り30枚ほどになったおっさんに対して自由に使うお金として白金貨1000枚が渡された。
これはクランメンバーの総意であると、おっさんがいないところ話し合いが行われていたのだ。
今後も何かあればすぐに使えるようにという考えである。
また、イリーナ、ロキ、コルネ、従者、侍女の家元に一律で白金貨10枚の仕送りが行われた。
高額なのでちゃんと届いたか手紙を書いて返信の手紙をもらうようにするのだ。
同じ金額をセリム家20枚、パメラ10枚、ソドン10枚配られた。
これはおっさんの意向である。
なお、チェプトが管理する活動資金は、白金貨500枚ほどあるのだ。
武器について、Sランクのしゃべる鎧の持っていたオリハルコン製の盾はソドンが装備することになった。
2mの盾で前の盾同様に、魔法をかければ持てるということである。
同じくSランクのしゃべる鎧の剣はイリーナが装備することになった。
これもオリハルコン製である。
イリーナからはしっかりとちゃんと渡してほしいと言われたおっさんである。
とりあえず、両手で渡してみたら、満足げに受け取ったイリーナであった。
「では、本日は60階層を目指します。食料は30日分持っていきます。60階に着くまで帰りませんのでそのつもりで」
「「「はい」」」
いつもの朝の朝食に合わせた打ち合わせである。
荷物をまとめて60階層目指して出発するおっさんら一行である。
ワープゲートを抜け50階層のボスの間に入る。
Aランク2体のボスもこれで何度目という状態なので、苦戦もせず倒すのだ。
おっさんがいなくてもどうやら1体ならAランクモンスターも皆で倒せそうなのである。
連携もよくなってきたのである。
解体し魔石のみ回収する。
「セピラスと鎧のモンスターでしたね。セピラスは吸収してください。鎧は前回吸収しましたね」
「あ、ありがとう」
そう言って吸収するセリムである。
51階層を進むおっさんら一行である。
「でも、なんかDランクしか出せないし、全然役にたってないな」
「何を言ってるんですか?役に立つでしょう?」
「え?なんでだよ」
「いいですか?大切なのは戦術です。Dランクでも役に立つことを証明しましょうか?」
「え?本当か?どうするんだ?」
「コボルトを出してください。そして、私達の先頭少し前を歩かせて見てください」
「こ、こうか?」
難なくコボルトを出し、おっさんら一行の10歩ほど前を歩かせる。
皆これで何が役に立つのだろうといった顔をしている。
「これでどうですか?先に敵に狙われるのはコボルトになりましたね。私達はコボルトを攻撃する敵を必ず先制攻撃できるようになりませんか?これからの敵をずっと先制攻撃できるとなると、長いダンジョン生活です。私たちの負担がかなり軽くなると思いませんか?」
「「「おおお!!」」」
一行から感動の声が上がる。
【ブログネタメモ帳】
・召喚術による戦術講義 ~セリムは俺が育てた~
(セリムは召喚術が体得でき、おれは新たなブログネタができると、これこそWINWINの関係だな)
「おとりに使うのか?じゃあ、後ろに配置すれば、背後からの不意な攻撃を防ぐこともできるってことか?隊形を整える時間に使うことができるな」
「確かにその通りですね。そうやって強いなら強いなりの。弱いなら弱いなりの戦術を磨いていくのです。高ランクのモンスターを出すだけが召喚士ってわけではないのです」
「そっか、こういうことも物語に書けばいいのか?」
「いえ、10歳くらいの子供が読むのであまり具体的な話は好ましくないでしょう。役に立った。助かったみたいな話を簡単に書いた方がいいですね」
「なるほど」
「ちなみに今コボルトを出してますね。ゴブリンは出せますか?」
「こうか?」
コボルトの横にゴブリンを出す。
「ありがとうございます。別の種類も同時に出せるのですね。せっかくなので、前に2体と後ろに3体配置させてください。スキルレベルの向上と、召喚の練習と、敵の攻撃を防ぐためにつかいましょう」
「分かった」
そう言って、進むこと2時間経過する。
すると、
「あ、あれ、一体消えたぞ!」
セリムが召喚したモンスターが消えたことに気付くのである。
「たしか、そのコボルトだけ、2時間前から出し直してないですね。恐らく1刻が連続して出せる限界なのでしょう」
(どんどん召喚術の特性が見えてくるな)
2時間の間に2回の戦闘があり、今消えたモンスターだけ2時間前から生き残っていたのだ。
倒されたコボルトは光る泡になって消える事も分かったのだ。
「なるほど、そういったことも戦術に活かさないといけないんだな」
「そういうことです。そうだ、思ったのですが、召喚したモンスターと同じのモンスターと戦ったりしたとき呼びづらいですね。長い名前のモンスターもいますしね。召喚したモンスターの総称を短い言葉でほしくないですか?」
「そっか、確かに言いづらい時があるな。何がいいかな?」
「私のおすすめは『召喚獣』です。他に呼びたい名前があれば、セリムの呼んだモンスターです。好きな名前に決めるといいですよ」
(召喚獣は男のロマン)
「召喚獣か。なんか召喚士のモンスターっぽいな。それで呼ぶよ」
コルネが自分の弓を持って、名前を付けてほしそうにおっさんを見ている。
だが声はかけないようだ。
検証を続けながら一行は下の階層を目指すのである。
そして、現在12日の行程を経て、60階ボスの間の前である。
今回の攻略では隠し部屋もなく行程が進んでいったのだ。
ボスの間を開くと、そこには4体の竜がいた。
色が同じなので何らかの属性竜であるのだ。
「ふむ、50階層はAランク2体で、60階はAランク4体であるな。まあ、見たことない竜だがSランクではなかろう」
ソドンが竜を見て分析をするのである。
「では、そうですね。私は魔法で恐らく2体までは接戦する前に倒せそうなので、残り2体は皆さんでお願いします。とりあえず赤いので水に弱そうですね。水魔法で攻撃します」
まだ、仲間を魔法で巻き込むか不安で試していない。
接戦するとLv4の攻撃魔法は使えなくなるのだ。
陣を組む、おっさんら一行である。
「ではいきます」
「パーフェクトストーム」
「パーフェクトストーム」
2体の属性竜は攻撃魔法によって死ぬが、残りの2体が多少のダメージを受けながらも突進してくる。
Aランクモンスターは大きいため、2体の竜を完全に抑えることはソドンには無理なようだ。
30レベルを超え、支援魔法がかかった、ロキ、アヒム、イグニル、アリッサの槍部隊が接近を阻止する。
4人は敵を倒すより接近を阻止することを優先しているようだ。
もちろんソドンがカバーしきれない方の竜を優先してけん制している。
そこへ、イリーナ、コルネ、パメラが体力を削っていく。
(これは槍4人いて正解だな)
そんな感想を持ちながら、敵を削っていく。
おっさんも敵が近いためLv3の攻撃魔法で応戦するのだ。
その際は近距離タイプの、剣を装備しているイリーナと、拳士のパメラを巻き込まないように注意するのだ
特に、支援魔法によって素早さが1400もあるパメラがたまに視界から消えるので、狙う場所は注意するのであった。
(パメラは攻撃力と素早さ特化型だな)
4体同時のAランクモンスターでも倒せたようだ。
(50階層ボスは2体で、60階層ボスは4体か。この流れだと70階ボスはAランクモンスター2体増の6体か、倍増の8体か。さすがに8体はつらいかな。その時は土壁も考えていかないとな)
素材を回収するおっさんである。
今回は4体とも同じモンスターで、初めてのAランクモンスターなので、セリムが1個吸収するのだ。
「ありがとう」
「これで、在庫30個あったので、今回の攻略で65個のAランクモンスターの魔石が手に入りましたからね。合計95個です」
「そうだな」
イリーナが返事をする。
「できれば、王都に送ったように、フェステルの街にも魔石送りたいですね。どこかの配送業者にお願いして」
「ん?いいんじゃないか。あとで相談だな」
今現在フェステルの街は、公共事業真っただ中である。
拡張されたり、新設された施設にAランクの魔石が必要になったりしているのである。
後で集まって話し合うことになったのだ。
「これで俺らが、60階初達成ということでいいんだな」
セリムが嬉しそうだ。
スキルも手に入れ、今回の攻略でずいぶん元気を取り戻しているようだ。
「ああ、そうだ。61階見ておきましょう。前回なぜか51階見ずに帰ってしまったので、今回は見てどういうダンジョンか確認してから帰りましょう」
いつもの癖で51階見ずにワープゲートをくぐってしまったおっさんら一行である。
冒険者ギルドにも情報がなく、悔やんでしまったのだ。
魔石をセリムに吸収させた後、61階を見てから帰ることにしたおっさんら一行である
ワープゲートは避けて、61階を見ると、地面は水であった。
一面水以外何もないのだ。
「海ですね…」
おっさんが呟く。
「これが海なのか?」
王国は西を帝国、北を聖教国、南を獣王国に囲まれているが、王国の東側は海なのだ。
最西端がフェステルの街で、海を見たことがおっさん以外ないようだ。
「そうですね」
おっさんが水をなめると確かに塩辛い。
波は無いようだ。
波紋も揺れもない水面がはるか先まで続いている。
「これは41階から49階までやった砂漠と同じ形式で、高台から下に行く出口を探しましょう」
「うむ、そうだな。だが、その分障害物がないから攻略も早いのではないのか」
(鷹の目レベル3に期待だな。敵は魚や海竜系かな。これは敵を倒したら敵は水に沈んでいくのか?魔石の収集はこの階層は無理ってことか)
61階からの攻略を後で打ち合わせをしようということで、拠点に戻る一行である。
夕食会で、明日の予定を伝えるおっさんである。
「明日は競りのお金の回収と全員で60階層の報告にいきます。そのあと2日間は完全休息です。セリムは物語を少し書いておいてくださいね」
「分かった」
昨晩の話し合いの結果、次の階層は魔石の回収がとても難しい恐れがある。
魔石の競りは行わず、当面見送るということ。
また、話し合った結果、フェステル家に20個ほど、Aランクの魔石を送ることになったのだ。
60階層にたどり着いた近況報告も兼ねているのだ。
当然報告はイリーナが手紙を書くのだ。
これで、Aランクの魔石の在庫は75個である。
魔石は安全のため、庭先に土魔法で固めるのだ。
2台の馬車に乗って移動するおっさんら一行である。
受付のカウンターにはゴリマッチョとウサギ耳の受付嬢がいる。
「ケイタ、男の受付の方が空いているぞ」
ゴリマッチョを勧めるイリーナである。
「は、はい…」
トボトボとゴリマッチョのところに向かうおっさんである。
「あの、すいません」
「ん、なんだ?」
相変わらず、ぶっきらぼうな受付の対応である。
「60階層へ着いたので、その報告と競りの代金の受け取りきました」
「ちょっと待ってろ」
その後、支部長に呼ばれ明日51階から60階ボスまでの説明をするという話になった。
また、30個の競りの代金は白金貨1800枚で前回よりさらに値下がりしている。
王都で飛竜の競りの時は魔石1個で白金貨200枚だったのに、魔石1個白金貨60枚まで下がったのだ。
その他、宝箱やそのほかの素材も合わせて白金貨200枚になり、全てチェプトの管理する活動資金になったのだ。
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