第35話 店名

40階層まで攻略したおっさんらは、2日ほど休みを取ったのである。

その間にAランクの魔石と、Aランクの素材を冒険者ギルドに持っていったところ、競りに出すということで、戻ってきたら競りの代金をいただく予定であるのだ。


その後、冒険者ギルドの資料室で41階層の確認をしたのであった。

ダンジョンは砂漠であるという情報だったのだ。

31階層から40階層までの階層と同じ程度の広さということだったので、まずは前回行った土魔法によるダンジョンの出口探そう戦略が通用するか確認し、確認できるのであれば、50階を目指してみようということにしたのだ。


そして、今日はまたダンジョンを攻略する日の朝である。

皆で席を囲って朝食を食べている。

いつもダンジョンの話が多いのだが、今日はどうも毛色が違うらしい。

従者の1人のイグニルに彼女ができたのとのことだ。

休日に知り合ったとのことらしい。

前の大通りのパン屋の娘とのことだ。

イグニルには、今度挨拶に伺いますと言われ、どんな顔して会えばいいのかと思うおっさんであった。


話もそこそこに出発をするおっさんら一行である。

広場にいると何人かの冒険者が、おっさんらが持ってきた台車を見るのである。台車は鍛冶屋で2台を連結させ、1人で運ぶことにしたのだ。

台車は1台にして、1人でも多く槍を持たせたかったからだ。


ワープゲートの順番が進んでいく。


「これが終わったら、俺もBランクかもしれないんだな」


セリムが呟くのである。

まだセリムの冒険者ランクはDランクである。

次のダンジョンへの攻略でBランクになるかもしれないので、わざわざCにはしなかったのだ。


ワープゲートを抜け、まずは40階のボスの間に入る一行である。

15mの大きさの巨大な鎧が立っている。

その周りに、10mくらいの鎧が武器と盾を持って30体立っているのだ。


(また、見たことないAランクモンスターだな。Aランクモンスター見たことない奴多いからな。地図にどんどんモンスターの種類を記憶させていかないとな)


風魔法Lv4で瞬殺するおっさんである。

もう、みんなあまり驚かないようだ。


「あ、久々にレベル上がりました」


(レベル30になったぜ)


思わず声が漏れるおっさんである。


「おめでとうございます」


忠臣ロキから祝福の言葉を貰う。

魔石のみ回収し、元来た道を戻り、41階層の攻略に戻るのである。

Aランクの魔石は無事であった。

そして、入口の広間を抜けると、そこは広い砂漠であった。

太陽も照り付けている。


「遠くまで見通せますね」


「そうですね。出口が見えたらいいのですが」


おっさんは土壁を作り、コルネと共に上るのだ。


「あります、あっちの方角です」


コルネが出口を発見したようだ。

範囲も同じくらいで、墓地以上に凹みが目立つとのことだ。


「ではいきますよ」


出口の場所も分かったので、事前に攻略方法どおりに出発を宣言するおっさんである。


「ほ、本当にそんなこと可能なのか?」


ソドンが心配そうである。

当然この心配の声はコルネの出口発見に対してではない。


「大丈夫かと。ではいきます」


目標に向かって土魔法Lv1を砂漠に寝かせて発動するのだ。

INTが2655あるため、1辺30m近い土壁が発生する。

厚さは5mほどに達している。


「ではこの上を進んでいきましょう。陣は昨日のとおりです」



砂漠に作った土壁の上を移動するのだ。



冒険者ギルドの資料を確認したら敵は砂の中から襲ってくるとのことだ。

Aランクモンスターが40階以降襲ってくるため、砂の上に土壁を引いてその上を進もうという話をしたのであった。

砂上だと数百キロの荷物を台車ではなく、ソリで運ばないといけないことも土壁を利用する理由の1つである。


陣は、正面は土壁を敷いているため、襲われやすいサイド重視の陣を敷いているのだ。

土壁の中心を移動し、中心から4隅にイリーナ、ロキ、パメラ、ソドンを配置して、中におっさん、コルネ、セリル、従者と侍女の配置だ。


「これだと罠もなにもないな」


セリムがあきれているようだ。


「このような攻略法があるとは…」


パメラも驚きの声が漏れている。

土壁はコルネが指さした方向へ100m以上伸びている。


ほどなく進んでいると、


「グルアアアアアアア」


10mを超えるワームが出てくる。


「エアプレッシャー」

1発の魔法で四散するモンスター。

死体が土壁の淵にへばりつく。


(経験値6000か)


「Bランクモンスターです。当面の間は魔石の回収は不要です」


おっさんのタブレットが、地中を探知できるか分からなかったためだ。

察知できないのに素材回収のために土壁の端まで行くのは危険と判断したのだ。

地中の探知が確認できること、フィールドにいるモンスター全種類倒すまで、素材の回収は禁止にしたのだ。

前進を続けるおっさんである。


(お、地中も判別できるのか)


赤い点が地図上に表示されている。

地中にさっき倒したモンスターがいるようだ。


「右からワームが来ます」


「「「は」」」


敵を殲滅しながら、進んでいく一行である。



AランクとBランクを結局100体ほど倒したのだ。

出口を発見し、本日の探査は終了したのだ。

アリッサが作った夜食を食べているときのことである。


「すまぬ、今よろしいか?」


ソドンから話しかけるおっさんである。

神妙な顔をしている。


「はい、なんでしょう?」


「実は、パメラ様と某を検索神様の力の宿る仲間に入れてくれぬか。十分にその力理解したつもりだ。お願いできぬか?」


「はい、もちろん喜んで。今仲間にしてもいいですか?」


「もちろんである」


皆がその会話を聞いている。


タブレットの『仲間』機能をする。

『近くにいる人を仲間にする』をタップすると、

『近くに仲間にできる人がいます。誰を仲間にしますか?』

『パルメリアート=ヴァン=ガルシオ』

『ソドン=ヴァン=ファルマン』


2人をタップし仲間にする。


「パメラとソドンを仲間にしました」


(元奴隷で素性言えないってソドンが出会った頃言ってたし、ステータスを開示するのは待った方がいいかな)


奴隷解放した日のことを思い出すおっさんである。


「ふぬ、何も違和感がないな。確かに銀の板は見えるようになったがの」


「では、魔法をかけてみましょうか。力を強くするので、注意してくださいね」


「うぬ、お願いする」


力支援魔法(仲間)Lv2をかけるおっさんである。


「どうですか?」


「うおおおおおおおおおおおおお!!!!こ、これが!!!!」

「こ、これは、そんな、こんなことが・・・これが検索神の力か…」


雄たけびを上げるソドンである。

部屋の隅にいって、ハルバートの素振りを始めた。

両手を握りしめ、力の入り具合を確認するパメラである。

そんな中、アリッサから小さく声が漏れる。


「いいですね、あたしも仲間に入りたいです…」


「すいません、仲間に検索できないと仲間にできないのです」


「そうなんですね…」


暗い顔をするアリッサである。

申し訳ない気持ちになるおっさんである。

言い訳をするようにもう一度検索する。


『近くにいる人を仲間にする』をタップすると、

『近くに仲間にできる人がいません』


(やっぱり無理か。正直、Aランク以上は仲間支援魔法がかからなくて、50層以上の荷運びはそろそろ考え物だな。Sランクモンスターとか出たら即死だろうしな。荷物持ち無しの攻略か)


画面を見ながら考えるおっさんである。


(検索に引っかからないか。普段どうしてたかな。今まで検索できなかったものはないんだけどな)


35歳のおっさんである。

もう10年以上検索に触れてきたのである。


(あらゆる方法で検索して…、そういえば、テレビ見て行った流行りの立ち食いステーキ屋のときは…)


いつも1人で外食するおっさんである。

テレビでやっていたステーキ屋の店をネットで検索して食べに行ったのだ。

どうやってお店がどこにあるのか探したか思い出しているのだ。


「そ、そうだああああああ!!『店名』だ!!!」


普段大きな声を発しないおっさんから雄たけびが鳴る。


「ど、どうされましたか?」


ロキが駆け寄ってくるがおっさんの耳には入らない。


「そうか、肉屋で検索したら十数件だ。ステーキ屋で検索したら数件に減る。『店名』入れたら1件じゃん!!!」


おっさんは立ち上がる。

広間に広がる大声で叫ぶのだ。

素振りをしていたソドンも戻ってくる。

どうされたかと皆に確認するソドンである。

皆わからないという風に首を横に振り、おっさんの様子を見るのである。

おっさんは慌てて今まで使ってこなかった『仲間』機能を操作しだす。

それは仲間アイコンをクリックすると最初に表示されているのだ。


(そうか、最初から選択肢は検索神に与えられていたんだ!)


『仲間』機能のアイコンをタップしなおし、最初の画面に戻す。


『名前を入れて仲間にする』

『近くにいる人を仲間にする』


初めて、『名前を入れて仲間にする』をタップする。


画面には入力ボードと入力した名前を表示できるようになっている。


「アリッサ!」


「はい!」


「もしかして、仲間にできるかもしれないけど、仲間にしても大丈夫か?」


「もちろんです!」


『アリッサ』と入力するおっさんである。

確定ボタンを押す。


すると、



『存在しない名前です』



「そ、そんな、できなかった」


(名前が存在しなかった、存在しない、できないわけでは…)


「そうですか…、でもありがとうございます、私のために…」


「まだだ、アリッサ=ロンド、まだだ!」


『アリッサ=ロンド』と入力するおっさんである。

確定ボタンを押す。

さっきとは違うメッセージが表示される。



『アリッサ=ロンドを仲間にしても良いですか?はい いいえ』



「おおお、仲間にできるぞ!!」


「ほ、本当ですか!!」


『はい』を押そうとするとき、最下層で死闘をするおっさんら一行の光景が頭をよぎるおっさんである。


(これは覚悟を決めないといけないな)


「アリッサ=ロンド、あなたは、検索神は仲間にふさわしくないと判断した。私は、神に選ばれなくても、私があなたを選ぶ。最後までくるか?」


「はい、もちろんです!!」


まっすぐない瞳で回答をするアリッサである。

『はい』をタップするおっさんである。

仲間の一覧にアリッサの名前が表示される・


「仲間にしました、アリッサ」


「ほ、本当です。見えます。銀の板が見えます!!」


アリッサが喜んでいるところ、2人の男がおっさんに近づいていく。


(おっと、アヒムとイグニルもこういうのはちゃんと聞かないとな)


おっさんが2人を探そうと視線を変えると、2人の男が片足をついて跪いていた。

どうやらおっさんから尋ねさせるのは失礼だと思ったようだ。


「アヒム=ペリオです。最後の一振りまでヤマダ男爵様のために振るう所存です」

「イグニル=ファスターです。ヤマダ男爵様の真の配下の席に加えてください」


それぞれ一言いい、首を垂れる。


「分かった。2人ともこれからもよろしく頼むよ」


アヒムとイグニルをタブレットの『仲間』機能で仲間にした。

これで9人を仲間にし、おっさんら一行は10人になった。


明日以降も砂漠地帯を前進する一行である。

話し合いの結果Aランクが1体の時はソドンが壁となり皆で戦うという話になったのだ。

なぜなら、おっさんの魔法で倒しても皆のスキルレベルが上がらないからだ。

スキルレベルは使用頻度に影響を受けている可能性が高いのである。

なお、ソドンの耐久力は仲間支援魔法かけると900を超えているのだ。

また、体力は1500超えているため、回復魔法を使うタイミングも余裕があるのだ。

必要経験値の増加から、レベルもある程度のところで上昇が止まるので、スキルレベルが生命線になる恐れがあるのだ。

そして、50階のボスの間の扉前である。

10日間かけて41階から50階まで移動したのである。


「ここまで来ましたね。中に入りましょう」


中に入るおっさんである。

中には、15mはある蛇とサソリのモンスターが1体ずつ2体広間の中央でじっとしている。


「そうか、この階層ボスはAランクのみだけど、30体もでるわけではないのか」


【ブログネタメモ帳】

ダンジョン50階ボス編


41階から50階までの情報について、序盤以降の情報が少なかったため31体いつものとおり出ると思っていたのだ。


「そうですね、私が1体を風魔法レベル4で倒します。恐らく2体は倒せないと思いますので、2体目は皆さんで倒してください」


「「「はい」」」


ソドンを先頭に陣形を組むのである。


「サソリを狙います、スパイラルサイクロン」


毒がありそうな方を風魔法Lv4で攻撃するおっさんである。

竜巻が発生し、サソリは粉々になるようだ。

蛇は攻撃をくらいながらも、一行に向かってつっこんでくる。

15mの蛇の突進を受け止めるソドンである。

両サイドから攻撃をする一行である。

ロキの一刺しが喉元深くに突き刺さる。止めだったようだ。


「素材を回収しましょう」


サソリの方も魔石は無事なようだ。

こうして、50階層を突破したおっさんら一行であった。

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