第28話 条件

ここは1k8畳の賃貸マンションの一室である。

おっさんはブログを起こしていた。


「20階についてから、2日間ブログ整理に当てたから、今度は1週間でブログ起せたな」


ダンジョン都市編

第70記事目 魔力調整による生活魔法

第71記事目 石ころ式強化特訓の効果検証

第72記事目 ダンジョン10階ボス編

第73記事目 休日にお風呂作ってみた ~夢のDIY生活~

第74記事目 ダンジョンの記録 ~11層から19層編~

第75記事目 ダンジョン20階ボス編


PV:133369

AS:14100


「ASポイントはあまり貯めてもしょうがないので、そろそろ使うか」


攻撃魔力の上昇、耐久力、回復、仲間の支援など、優先順位を決め取得していく。


・火魔法Lv4 1000ポイント

・風魔法Lv4 1000ポイント

・土魔法Lv4 1000ポイント

・回復魔法Lv4 1000ポイント

・治癒魔法Lv4 1000ポイント

・体力向上Lv4 1000ポイント

・魔力向上Lv4 1000ポイント

・知力向上Lv4 1000ポイント

・体力支援魔法(仲間)Lv2 1000ポイント

・魔力支援魔法(仲間)Lv2 1000ポイント

・力支援魔法(仲間)Lv2 1000ポイント

・耐久力支援魔法(仲間)Lv2 1000ポイント

・素早さ支援魔法(仲間)Lv2 1000ポイント

・知力支援魔法(仲間)Lv2 1000ポイント


Lv:29

AGE:35

RANK:B

HP:900/900

MP:930/930

STR:122

VIT:178

DEX:178

INT:855

LUC:188


アクティブ:火【4】、水【3】、風【4】、土【4】、回復【4】、治癒【4】

パッシブ:体力【4】、魔力【4】、力【3】、耐久力【3】、素早さ【3】、知力【4】、幸運力【3】、魔法耐性【3】、魔力消費低減【1】、魔力回復加速【1】、気配察知【1】

仲間:取得経験値上昇【1】、体力支援【2】、魔力支援【2】、力支援【2】、耐久力支援【2】、素早さ支援【2】、知力支援【2】、幸運力支援【1】


加護:検索神ククルの加護(中)


EXP:10296547


PV:133369

AS:100


「明日は、とうとう30階層目指すのか」


セリムのことを考えるおっさんである。


「これはかなり困ったぞ。正直、コミュニケーション取れる自信ないな。仲間にするハードル高すぎやしないかな。普通もっと簡単に仲間になるんじゃないのかな。こういうのって」


読んできた異世界ものを思うおっさんである。


「次で30階まででセリムさんに依頼だせるの終わりかもしれないな。正直に話してみるかな。それでだめならそれまでか。頑張って見つけたんだけどな」


やるべきことはやったと言い聞かせるおっさんである。


「さて異世界に行くか」


『ブログ記事の投稿が確認できました。異世界にいきますか はい いいえ』


おっさんは『はい』をクリックすると、ウガルダンジョン都市で借りた物件の一室に景色が変わる。

横ではイリーナが寝息を立てている。


「お休みイリーナ」



そして、朝食を取り、ダンジョン都市の広場に集合するおっさんら一行である。

2の鐘までセリムを待つ。


「今日も来ますかね」


「多分来るんじゃないんでしょうか」


ロキの疑問に答えるおっさんである。


「なぜですか?」


「前回も来たからです。素材の回収も率先して手伝っていましたし、根は悪い人じゃないのかなって思います」


そういう会話をしているとセリムがトボトボやってくる。

相変わらず暗い表情だ。


「やはり、いんのか…」


「もちろんです、いきましょう!」


なるべく明るく声をかけるおっさんである。

野営の時にでも、今後について相談しようと心に決めるのである。

おっさんら一行はワープゲートをくぐり、20階に降り立つ。


「じゃあ、俺が先頭で罠察知するのでついてきて、モンスターいたら下がるからな」


そう言うと前を進みだすセリムである。

相変わらず元気はないようだ。


(さて31階まで1日2階いけるんだっけ。41階から1日1階とかきいたな。道に迷ったらその辺で休まないといけないって話だな)


転移先の広間を抜けるとそこは、うっそうとした森林である。


(冒険者ギルドで予習した通りか。それにしても、本で読むのと実際体験するのでは、感じが違うな。普通に空が見える件について)


皆も同じ感想なのかきょろきょろして周りを見ている。


【ブログネタメモ帳】

ダンジョンの記録 ~21層から29層編~


「全然罠があるって感じしないですね」


ロキがいう。


「そうですね。落とし穴とかあるのかな」


「…」


セリムは何も答えないようだ。

と思いながらセリムの後をついて行くとセリムの足が止まる。


「罠がある」


(お!)


セリムはじりじりと前に進み、草の茂みをかき分ける。

何かの引き金のようなものが見える。

おっさんものぞき込む。


(なるほど、草の茂みに罠が隠れているって感じなのか。なんか踏んだら何かが起こるのかな)


「これなら回り込めばいいから、こっちから行こう」


(まあそうだな。宝箱とかの罠解除は必須らしいが、それ以外は避けたらいいよな。よっぽど狭い道じゃなければ。そういえば宝箱ないな。まあ全力で下の階目指してるしな)


皆回り込みながら進んでいく。

おっさんも思考が脱線しながらついて行くのだ。

21階から29階はCランクのモンスターが出てくる。

台車を引かない方の従者とアリッサは石ころ式強化特訓をモクモクと続けるようだ。

セリムは見慣れたのか何も言わない。

1日で4つの罠を発見し、回避したのであった。

ここは22階入り口の広間である。

他の冒険者グループも思い思いに寛いでいる。


(よし、言うぞ。くそ、断られたら皆ごめん)


今回出発にあたって皆にはセリムをクランに誘う旨伝えているのだ。

なお支援魔法の威力を今回上げたけど、セリムが混乱するから、スキルの件で反応しないように言い含めてあるのだ。

皆としては態度が悪いのでクランに入れるのはどうだろうと思っているが、おっさんの一存に乗っかる形である。


「夕食が出来上がりました!」


アリッサが、夕食の完成を宣言する。

皆が焚火を囲んで食事をする。

おっさんはセリムの横に座り声をかける。


「ちょっといいですか?セリムさん」


「ん、なんだ?」


「今回は依頼に乗ってくれてありがとうございます」


「え?なんだ気味悪いな」


(がんばれ、おれ)


「実はセリムさんにご相談があります」


「相談?なんだ?お金は返せねえぞ」


「いいえ、そうではないのです。実は私たちのクランに入っていただけないでしょうか?」


「え!?な!!」


おっさん話す言葉の意味を一瞬呑み込めないセリムである。


「ぜひ、セリムさんに私のクランに入っていただきたいのです。仲間に入ってほしいということですね」


改めていうおっさんである。


「い、意味わかんねえよ。今日も見ただろ。全然役に立ってなかったじゃないか」


セリムはほとんど戦闘に参加していないのだ。

レイピアという細身の武器は持っているのだが、モンスターがいると後方にいる人の影に隠れるのだ。


「構わないです、とりあえず今は罠感知と罠解除、32階までの道案内でいいです。32階以降も同行をお願いしますという話です」


「え?なんでだよ?」


(お、いきなり断らないな、まだいけるか、こわいよう)


「なぜと答える前に2点伝えないといけないことがあります」


「2点?なんだよ?」


「1点目は、冒険者ギルドで初めて会ったときから仲間にするつもりでした」


「な!?初対面じゃねえか!」


「はい、ですので、最初は依頼という形で関係の構築に努めていたのです」


「なんか、よく分かんねえな。仲間にすること前提で依頼していたってことか?2点目は?」


「2点目は、確かに貴族の道楽と見られても仕方ないかもしれません。しかし私達にはこのダンジョンに目標があるのです」


「目標?」


「はい、ダンジョンの踏破を目標にしています」


「な!?」


「その上でどうしてもセリムさんのお力が必要なのです」


「い、意味わかんねえよ。1点目以上に意味わかんねえよ」


その後、検索神の話、セリムがやっと仲間として検索された話を伝えるおっさんである。


「にわかには信じてもらえない話ですが、その上で仲間にしたいのです。あなた無くしてダンジョンの踏破は厳しいと私は信じています」


「いや、そんな?え?俺だぞ?」


「はい、例えば信じられるまで帯同するとかでもいいので何とかなりませんか?」


「少し考える…」



セリムが考え始めて3日が過ぎる。

罠は見つけるものの、セリムが発見するので安全に進んでいけるのだ。

明日は29階の攻略と、30階のボスの間というところで、焚火に当たっていると、セリムから声が掛かる。


「あ、あのさ、俺は剣も魔法も使えないし、罠解除くらいしか役に立てないんだ。だからさせっかくなんだけど、やっぱり無理なんだ」


「別に戦う必要がないと言ってもですか」


「あ、当たりまえじゃないか、戦わないのに惨めなだけだろ。お前は皆に戦わせているみたいだけど、そんなことできないよ。神様に言われたからってなんで、こんな何もない俺を信じられるんだよ。それにさ」


おっさんは従者のレベル上げ前提のため何もしていないのだ。

仲間の支援魔法を得られないし、今後モンスターが強くなることも想定しているのだ。

当然そんなことはセリムに言わないおっさんである。


「はい、なんでしょう」


「お前は神の力を借りているといったな?」


「はい、言いました」


「じゃあさ、次のボス1人で倒せるのか?神の力なんだろ?」


「倒せます」


「ほ、本当なんだな?Bクラスのモンスターが数十体もいるんだぞ、たった1人だぞ」


「問題ないです」


「本当に1人で倒せるなら話も信じるし、仲間にもなる」


(やったあ、良かった!力を見せたら仲間になる系の話だったのか)


「あ、あの、ケイタ様、あまり軽はずみなことは言わないほうがいいかと」


たまらず、ロキが声を出す。

他のみんなも心配そうである。

なぜロキがこの程度敵に不安になるのか考えるおっさんである。


「え?ああ、そうか!まだロキや皆の前で私って戦ってないですね。いい機会です。神の力の宿りし、私の全力を次のボスでお見せします。皆さんセリムさんが仲間になるので、終ったら打ち上げに行きますよ」


コルネはまだレベルが低いころのおっさんしか見ていないのだ。

オーガの大群の時はイリーナもロキもいなかったのだ。

飛竜の時は、イリーナはいたが、せこせこ窒息死させていたのだ。

おっさんの全力はまだ、この中のだれ1人見ていないのだ。

語られているだけの力を皆が信じているのだ。


「ま、まだ仲間になってねえよ。倒したらだ」


そして翌日である。

30階のボス前の扉は人がいないようだ。


(攻略組くらいなのかな。30階のボスと戦うの)


「誰もいないですね。打ち上げにこれから行かないといけないのでさくさく行きましょう」


セリムはこれ以上つっこまないようだ。

ボスの間に入る一行である。


正面に体長10mのワイバーンが見える。

その周りを30体のハイオークが囲んでいる。


(お?ワイバーンの成体か、本当に昔倒した幼体の倍くらいあるな。もう大きさ感、若干忘れたけど)


【ブログネタメモ帳】

・ダンジョン30階ボス編


「さて少々下がっててください。壁際でいいです。全力だすので危ないので近づかないでくださいね」


(飛竜倒したときはそういえばINT590の風魔法レベル3だったな。仲間支援魔法でINT2655での火魔法レベル4を試すいい機会だな。)


「ではいきますね。ここから魔法を放ちます」


「はい」


ロキが代表して返事をする。

おっさんはゆっくり中央にいるワイバーンに手をかざす。


「インフェルノフレア!」


ワイバーンの上空に赤い巨大な魔法陣が発生する。

数十メートルの1つの火の塊が魔法陣から発生するようだ。

火の塊はものすごい勢いで、まだ動かないモンスターの群れを襲うのである。


ズッッドオオオオオオオン


着弾すると轟音と共に火の塊は天井に届く火柱を生み出す。

モンスターの群れを飲み込み発生した火柱はやがて消えていく。

そこには焼肉の鉄板に残った燃えカスのようなものが床にへばりついている。

もうどのモンスターが何匹いたかすら分からないようだ。


「ふむ、すいません、素材回収できそうにないですね」


(レベル4は単体高威力か。単体でも範囲が大きすぎて全部倒したけど。MP消費は32ってことは、魔力消費低減スキルを使わない元は40なのか。もう少し手加減すればよかったか、これなら飛竜いけるのか?)


おっさんが分析をそこそこに後ろを向くと、皆広間の中央で起きたことがまだ理解できていないようだ。

目を見開き固まっている。

アリッサは腰が抜けたのか立ち上がれない。


「こ、これが、オーガ3000体を討ち滅ぼし、飛竜を1人で倒すわが主の力か」


「セリムさん」


固まったセリムに話しかけるおっさんである。


「は、はい、なんでしょうか?」


「神の力、確かにお見せしました。今後ともよろしくお願いしますね。クラン名はアフェリエイターです。ロキ、打ち上げのお店どこにしましょうか。まだお昼過ぎですね。とりあえず私たちの拠点を案内しましょうか。今後来てもらうこともあるでしょうし、すぐそこです」


5日目は29階と30階のボスのみなのでまだ14時過ぎである。



15時にはセリムも含めておっさんらの拠点に着くのである。


「ここがクランのアジトか。大きいな」


そうつぶやくセリム。

ボスの間から1時間ほど経過したので、皆の意識は回復してきたようだ。


「そうです、部屋も余っているので、空いている部屋使っていいですよ。家賃は1年分くらい払い済みです」


「え?そうなのか」


「もちろんです、少し時間があるので私の部屋で今後についてお話してもいいですか」


4人目の仲間にするために、セリムを拠点の中に招くのだった。

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