第12話 ドラゴンステーキ
ここは1k8畳の1室である。
おっさんは競りが終わったあと、現実世界に戻り王都でたまったブログネタの整理に取り掛かったのである。
投稿には1週間を要したので今日はいつもの土曜日である。
机にはコーラの空きペットボトルが散乱している。
おっさんはダイエットコーラしか飲まないようだ。
ダイエットコーラを飲みながらパソコンの画面につぶやくおっさんである。
「なるほどロマネスク様式が王宮に近かったな。ゴシック様式かもしれぬがな」
王都編
第44記事目 防具屋と武器屋の態度の違いについて
第45記事目 姫騎士と王都デート
第46記事目 姫騎士は肉食女子
第47記事目 王城に行ったみた ~白亜の宮殿ロマネスク様式~
第48記事目 謁見してみた ~ダンジョンの目標が出来た件について~
第49記事目 貴族のお茶会 ~利権と派閥社会の縮図~
第50記事目 飛竜の競りに参加してみた ~魔石はいくらに~
「とうとう50記事上げたぞ。それにしても、1日平均PVで1200か。ASだと160まで行くようになったぞな。ダンジョンも詳しく書いたらもっとアクセス増やせそうだな」
検索神サイトのアクセス分析を見ながら1人ニマニマするおっさんである。
PV:18719
AS:1930
「ポイントもずいぶんたまってきたな。レベル4の魔法のために1000ポイントはとっておきたいな。回復か土魔法の防御か攻撃魔法のどれが必要か分からんしな。100ポイントで取れるスキルはとっておくか。これからダンジョンだし耐久低くて即死とか嫌だしな」
・火魔法Lv3 100ポイント
・水魔法Lv3 100ポイント
・治癒魔法Lv3 100ポイント
・体力向上Lv3 100ポイント
・力向上Lv3 100ポイント
・耐久力向上Lv3 100ポイント
・素早さ向上Lv3 100ポイント
・幸運力向上Lv3 100ポイント
・魔法耐性向上Lv2 10ポイント
・魔法耐性向上Lv3 100ポイント
Lv:29
AGE:35
RANK:B
HP:600/600
MP:620/620
STR:122
VIT:178
DEX:178
INT:590
LUC:188
アクティブ:火魔法【3】、水魔法【3】、風魔法【3】、土魔法【3】、回復魔法【3】、治癒魔法【3】
パッシブ:体力向上【3】、魔力向上【3】、力向上【3】、耐久力向上【3】、素早さ向上【3】、知力向上【3】、幸運力向上【3】、魔法耐性向上【3】、魔力消費低減【1】
加護:検索神ククルの加護(中)
EXP:10288672
PV:18719
AS:1020
「そういえば、勢い余って力向上も取ってしまったな。短剣すら使わないんだがな。魔力回復加速の100ポイントの方を取得すればよかったかな?まあ、またブログ起せばいいか。外套の魔力回復加速とスキルとの重複可能かも今後検証が必要か。ダンジョン行くならMP管理は生命線だからな」
検索神サイトのメモ機能のページにアクセスし、検証が必要なものについて、新しい『メモ』を作成するおっさんである。
「あとはすべきことはこれだけだな」
アクセス分析の画面にページを切り替えるおっさんである。
そこには、新機能のアプリの選択が表示されている。
「仲間10人でダンジョン行くって宣言したからな」
おっさんは、『仲間』のアプリを選択しクリックする。
扇型のダウンロード表示が現れ、ゆっくりダウンロードが進んでいく。
「相変わらず、新機能の追加に時間がかかるな。これは期待して待つしかないな。とりあえず異世界にいってても、インストールは進むだろうしな。あとは異世界で待てばよいか」
『ブログ記事の投稿が確認できました。異世界にいきますか はい いいえ』
おっさんは『はい』をクリックすると、ふっと目の前の風景が王都にあるフェステル家の一室に変わる。
時間は夜22時過ぎである。
競りが終わった後、軽く王都を散策したおっさんは、フェステル家の一室に戻ったのである。
(2人とも遅いな、王城に泊まるのかな?)
帰ってこないと2人を心配していると馬車が敷地内に入ってくる音が聞こえる。
(お!帰ってきたぞ)
家に入ってくるフェステル子爵とイリーナ。
「遅かったですね、王命の用事は無事終わりましたか?」
おっさんが2人に声をかける。
「お、そ、そうだな。今戻ったぞ!用事はすぐ済んだが、王城の貴族にその後捕まってしまってな」
おっさんをみて若干挙動が悪くなる、今日、国王の話を聞いたばかりのフェステル子爵である。
1階の打ち合わせ室で今後の予定を話すことになった。
おっさんからは無事競りが終わったので、ガリヒル男爵と男爵使いの騎士も呼んでドラゴンステーキパーティをしたいとのことである。
その時、競りの代金の半分も渡したい。
フェステル子爵からは、それなら夕方以降ガリヒル男爵を呼ぶ。
それまで王都での貴族の付き合いがあるため、不在にするとのことである。
王城に呼ばれた2人が疲れていたので打ち合わせは手短に終わった。
次の日ゆっくり起きるおっさんである。
9時過ぎに起きると、フェステル子爵はもう家にはいなかった。
(異世界はみんな朝早いな。イリーナさんも出かけてしまったのかな)
最近ほぼ一緒にいたイリーナがいなかったので、無意識に探すおっさんである。
木窓から庭にイリーナがいることを発見する。
「あ、おはようございます」
「おはよう」
イリーナは、今日はスカートではなく、動きやすい格好をしている。
「あれ、素振りをしていたのですか?」
「ああ、うむ、そうだな。もらった剣に早く馴染まないといけないからな」
(おお!買ってあげた剣使ってくれてる!)
素振りを今日は続けるということなので、おっさんは1人で冒険者ギルドに競りの代金を取りに行く。
すると、
「私も手伝いますよ」
「え?いいんですか?」
気が利くロキが高価な競りの代金の受け取りもあるので付いてきてくれるようだ。
今日も徒歩で出かけるおっさんである。
(そうだ、香辛料もいいの探してからにしようかな。せっかくのドラゴンステーキだ!)
市場で2人でぶらつきながら、店の人に肉に合う香辛料をいくつか聞いて買う。
昼飯を外で済ませ、冒険者ギルドで競りの代金白金貨400枚を受け取るおっさんである。
(400枚も硬貨があるとかなりずっしりくるな)
そんな感想を持ちながら、フェスタル家に帰るおっさんである。
時間は15時過ぎであるが、庭ではイリーナが素振りを続けている。
(え?6時間も素振りしているんだけど、騎士ってこういうもんなのかな?これはイリーナさんの分ステーキ大きめにしないとな!)
半日過ぎたのに真剣に素振りをするイリーナを見て、そう思いながら、家に入りフェステル家の一室でタブレットの確認をするおっさんである。
(あれ、まだダウンロード続けている。これは24時間かかる感じか。この高速回線が謳われる昨今で、異世界は回線弱いのかな。まだ夕方まで時間があるから、ガリヒル男爵とフェステル子爵が戻ってくるのはもう少し先か)
数時間過ぎると、馬車が戻ってくる音が聞こえる。
2台の馬車が敷地に乗り入れる。
どうやらガリヒル男爵も自身の馬車で騎士を載せてきたようだ。
イリーナも素振りをやめて、汗を拭きに部屋に戻る。
この世界ではお風呂が普及していないため、桶に水を汲んで布切れで汗を拭きとるのが一般的である。
なお、ちなみにフェステル子爵用のお風呂は整備されている。
全員揃ったのでドラゴンステーキパーティを始める。
なお、おっさんは料理しないため、香辛料もフェステル家のメイドに渡して料理してもらうのだ。
みんなが打ち合わせ室に集まったのでおっさんも席に着く。
「これはガリヒル男爵の分です。白金貨200枚です、ご確認ください。ちなみに競りの帳簿もお渡しします」
「おお!ありがとうございます。いやいや、こんなにいただいたら十分ですよ。競りも価格が上がってよかったです。もちろん競りの帳簿は不要です」
帳簿の確認はしないようだ。
なお、騎士達は貴族がいる手前、別室の部屋でドラゴンステーキを食べるようだ。
ちなみに世話になったということでおっさんはメイドにも振舞っている。
(さすがに、こういうところは階級社会だな)
部屋に肉が焼かれるいい香りがしてくる。
「そういえば、王都でいい香辛料が手に入ったのです。肉に合うといいですね」
「お、おうそうか。そうだな」
『香辛料』という単語で使徒チフル=スズキの話を思い出すフェステル子爵である。
(昨日から若干挙動が悪いな。やはり王命の来城で何かあったのかな?まあ無理に聞くのも野暮か)
ドラゴンステーキが焼き上がり、各自に配られる。
「ふむ、これは、うまいな。初めて食べたぞ!」
「おお!飛竜を食べたのは私も初めてです!!」
フェステル子爵とガリヒル男爵が感想を漏らす。
(貴族でもあまり飛竜を食べるものではないんだな。王族やもっと爵位の高い貴族のみなのかな)
おっさんも一口食べてみる。
「おいしいです!」
(かなりうまいぞ!ドランゴンステーキ!!でも例える肉の味がないな、ドラゴンだけに。脂身のない肉なのに食べやすくて肉のうまみが半端ないな!)
【ブログネタメモ帳】
・ドラゴンステーキパーティー
今まで食べたことがない肉の味がおっさんの口いっぱいに広がるのである。
「たしかにうまいな!飛竜を食べることがあるとは思わなかったぞ!!」
肉食女子の口にも合ったようだ。
500g以上の大きさのドラゴンステーキをもりもり食べるイリーナである。
「そういえば、今日も王城に行ってたのですか?」
「ああ、そうだな。何人かの貴族と話があったのでな。実は明日と明後日も予定があってな。フェステル領に戻るのは3日後を考えている。ケイタもすまないが付き合ってもらうぞ」
今後の予定の話になる。
フェステル子爵は国王との話もあり、あまり王都にケイタを拘束したくなかった。
2日間ではあるが、これでも最低限の貴族の付き合いに抑えた形だ。
「はい、もちろん構わないですよ」
「それで、そのあとは直接、このまま王都から南下してウガルダンジョン都市に向かうのか?」
「いえ、フェステルの街の城壁が完成していません。もしかしたら1年近くダンジョンにいるかもしれないので、城壁を完成させてからダンジョンに向かいたいなと思います」
「そ、そうなのか?大丈夫なのか?10日以上ダンジョンに行くのが遅れるのではないのか」
「まあ、帝国が攻めてきたら後悔もできませんからね。できることはしておきますよ。早めに作ってダンジョンに向かいます」
「そうか、では先ぶれを明日にでもフェステルの街に出して、測量士や建築士を待機させていよう」
フェステルの街についたら、すぐに城壁の作成に当たれるよう、対応するフェステル子爵である。
前回のトトカナ村の時も、城壁を築くとき、測量士や建築士のアドバイスをいただいていたのだ。
「ありがとうございます。そういえば、アロルド様、聞いてもいいですか?」
おっさんは、謁見後のお茶会で気になっていたことを口にする。
「うん?なんだ?」
「私に婚約者がいるって本当ですか?」
そのとき、ドラゴンステーキパーティに沈黙が生れるのであった。
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