第02話 飛竜
野宿を終わり、すぐに出発するフェステル子爵家一行である。
王都につながる大通りということもあって、行きかう馬車は多い。
もちろん馬車には家紋があり、皆道を譲ってくれるのである。
「まもなくフェステル子爵領を出るな」
「そうですね」
馬車の中でイリーナはおっさんに話しかける。
「む。前も言ったが敬語は不要だぞ」
ごり押しでおっさんの話し方を普通にしようとするイリーナである。
イリーナは体育会である。
「あ。はい。気を付けます」
「まただ。もしかして、以前の冒険者ギルドの一件を根に持っているのか」
「え。あ。そういうわけではありませんが」
(根には持っていないがとても怖かったでござるよ)
「ではなんだというのだ」
「私はこういう見た目なので、あまり女性に対していい思い出がありません」
「ん。どういうことだ。見た目とはなんだ」
「容姿のことです。ですので、イリーナ副団長みたいに容姿の綺麗な方と話すと緊張してしまうのです」
(異世界って見た目良い人多いね。おっさんの顔面偏差値30割ってそうで泣ける。見た目を良くするチートほしかったわ)
「な。容姿がきれいだと。それに男は見た目ではなかろう。もしや。だからフードで顔を隠しているのか」
(たしかに。男は見た目じゃないよね。でも限度があるんだよね。正社員になっても。お金を頑張って貯めても。ジムに通って体型に気にしても全くモテなかったけどね)
おっさんはここ10数年の思い出が走馬灯のように巡っているのである。
「そうですね」
「ふむ。その辺についても、しっかり話をしていかないといけないようだな。ってなんだ」
領が変わるので他領の検問に差し掛かろうとしているときである。
前の馬車が止まっているのだ。
身を乗り出して前を見てみると、前方の馬車も全て停まっており渋滞ができている。
「検問で渋滞ができてますね」
(ETCカードとかないもんな。料金払うのにもたついている人いるのかな。って他領に入るのにお金がかかるのかな)
「ふむ。なんだというのだろうな」
しばらく待っていたが一向に動く気配がない。
騎士団の1人が、歩いて検問の様子を聞きに行くようだ。
「たしか隣は男爵領でしたよね」
「うむ。次の男爵領で2日、王領で2日ほど移動すると王都だ」
そういえばフェステル子爵からとなりの男爵領は中立派だのなんだの言った話を移動中に聞いたことを思い出す。
そんなことをおっさんが考えていると、ほどなくして騎士団の1人が戻ってくる。
「それでどうだったのだ。何事だ」
「申し訳ありません。どうやら飛竜がこの土地に渡ってきておりまして。この先の丘で休んでいるとのことです。南から北へ移動中の渡りの途中に休んでいるようです。危ないので関所を封鎖しているという話です。このまま待つか回り道するようにとのことです」
(お。今。飛竜っていったな。ドラゴンだ。南はたしか獣王国で、北は聖教国か。西は帝国に確か王国は挟まれていたよな。でフェステル子爵領は王国の西のはずれと。東は何があるんだっけ)
冒険者ギルドで調べた情報を思い出すおっさんである。
「なんだと。いやしかし。飛竜か。フェステル子爵様とも相談が必要だな」
イリーナとおっさんは後ろの馬車にいるフェステル子爵に相談をすることにする。
「なるほど。飛竜か。ここまで来て回り道したら10日以上かかるな。しかし渡りの飛竜は移動中の食事のために村や街を襲うこともよくあるからな。下手に近づくのは危険か」
状況を理解したフェステル子爵である。
(なるほど、田舎な子爵領だと王都にいく道も限られているのかな)
都心に比べて田舎道は数が少ないなと思うおっさんである。
「では待ちますか」
イリーナはフェステル子爵の対応を伺う。
「あの」
おっさんが話の間に入る。
「ん。どうしたのだ。ケイタ殿」
さっきまで黙っていたおっさんが話したので、どうしたのだと尋ねるイリーナ。
「飛竜ってたしかAランクじゃなかったでしたか」
以前、冒険者ギルドの資料を読んで得た知識を思い出すおっさんである。
「な。倒そうというのか」
驚くイリーナ。倒そうというとは思っていなかったようだ。
「まあそうですね」
「飛竜はAランクだが、かなりの強敵だぞ。こんな人数では無理だぞ」
(Aならぎりいける気がする。Sならあきらめようと思ったけどね)
「たしかにな。無理はすべきではないな」
フェステル子爵も乗り気ではないようだ。
「無理はしません。しかし勝算がないわけではありません。ちなみに私1人で戦います」
「ふむ」
「もったいないなと思いましてね」
「もったいないだと。飛竜がか」
「せっかく、王都に向かうのに、荷物がオーガの素材だけというのもどうかなと思ってました」
「ほう。飛竜を手土産にするというのか」
「はい。どれくらいの大きさか分かりませんが、せめて頭だけでも王城に持っていきませんか。それにですね。たしかドラゴンの血は薬になると冒険者ギルドで聞いてますので、王に献上すれば」
「お。王に献上すれば。た。確かに良い手土産になるな」
反芻するように復唱するフェステル子爵である。
この数日話すことによって、おっさんはフェステル子爵の興味のポイントを押さえつつあった。
「はい。せっかく男爵にしていただけるのに。手土産がないのはと思ってました」
ちょうど良いというおっさんである。
「あい。わかった。では検問には事情を説明しよう。責任者を呼んでまいれ」
フェステル子爵は騎士団の1人が検問に話を通し手に行く。
ほどなく待つと、責任者らしき検問の兵がやってくる。
「あ。あの。ここを通せというのはまことでございましょうか」
フェステル家の家紋のある馬車ということもあり、遠慮気味に話す
「うむ。おぬしらも困ってあろう。これから何日ももしくは何十日も門を閉じるかもしれぬのだからな」
「はあ。しかし。子爵様になにかあれば。我々が」
「何を言っている。この者が1人で倒すと言っているのだ」
「な。1人で。み。見たところただの魔法使いのようですが」
「ほう。オーガ殺しの魔導士ケイタを知らぬのか」
「オーガ殺しですか。あのフェステル領を襲った数千のオーガを倒したっていう噂ですか」
「ほう。噂と申したな。では。これを見よ」
部下の騎士団が3台目の荷馬車のオーガの素材と魔石を見せる。
「おお。これは全てオーガの素材」
(やっぱり噂レベルだったのね。やはり飛竜は倒したほうがよさそうだな)
「で。では。馬車1台だけお通しします。飛竜の場所まで案内しますが、案内者はあまり近くまで案内できませんのでご容赦ください」
「あいわかった」
フェステル子爵がそう返事して、
検問を通る馬車が1台
何事かとみる立往生の人達。
「それでどうするんだ」
「まあ。普通に考えて土魔法で動きを止めてフルボッコですね」
「フルボッコってなんだ。まあ。あの壁で囲むわけか。飛竜はAランクの中でもかなり上位だぞ」
(INT的に今の俺の土魔法レベル2で既にBランクは破壊できないからな。土魔法レベル3ならAランクまで行けるはずだと思うんだがな)
トトカナ村で冒険者の拠点を築く際にいくつか実験したことが今回の勝つ根拠になっているようだ。
進むこと4時間が過ぎる。
「この先の丘に飛竜はいます」
「ほうほう。あとは歩いていきますね」
「本当に1人でいくのか」
「はい。ではいってきます」
心配するイリーナである。
歩くと丘の上に何かが乗っているのが見えてくる。
(おお。飛竜だ。ワイバーンよりかなりでかいな。ワイバーンは幼体だったけど。体長5mのワイバーンがかなり小さく見えるな)
丘の上の飛竜は寝ているようだ。
(確か飛竜はブレスがあるんだっけ)
戦術をいくつか考えながらどんどん近づいていく。
飛竜まで数十mまで近づく。
(まだ起きないか。できるだけ近づきたいな。大きさ誤って閉じ込めるのミスしそうだしな)
飛竜に近づくこと30m
飛竜に近づくこと25m
飛竜に近づくこと20m
じわじわと飛竜に迫るおっさんである。
「グルルルル」
(お。おきたか)
「グッルルルルアアアアアッ」
「アースウォール」
「アースウォール」
「アースウォール」
一度の魔法4枚の一辺15mの土壁がでる。
がんがん土壁を出して飛竜の動きを止めていく。
(やはり起き上がると15m近くあるな。だが何とか閉じ込めたぞ)
『ズッドオオン』
土壁に体当たりをしてすごい音が丘に響く。
「エアプレッシャー」
「グルアアアア」
首元に当たり軽く吹き飛ばされる飛竜である。
(あれ。ダメージ少なくない。INTが足りないのか。魔法効きにくいのか)
魔法耐性のスキルについて思い出すおっさんである。
『ズッドオオン』
『ズッドオオン』
(ふむ。さすがに壁は壊されないと。だが攻撃魔法のダメージは微力だと。スキルレベル4を取得するにはASポイント全然足りないと)
どうやって倒すか考えるおっさんである。
「グオオオオオオ」
飛竜は大きく口を開ける。
口が光りだす。
(やばい)
土壁の影に逃げるおっさんである。
まもなくものすごい熱量が土壁の隙間、おっさんが飛竜に攻撃するためにあけた隙間から漏れ出る。
(クッソ熱い。やばいな。直撃したら灰になるか。ん。灰か)
思ったより苦戦を強いらせる中、妙案を思いつくおっさんである。
「アースウォール」
こぶし大の小さな穴を残して土魔法で完全に塞ぐおっさんである。
「だ。大丈夫か」
雄たけびを聞き心配になってやってきたイリーナである。
「あ。はい。攻撃魔法がほとんど効かなかったのでちょっと方法を変更していました」
(フレイムランス)
穴に向けて魔法をかけるおっさんである。
(フレイムランス)
「魔法が効かなければどうしようもないな。何をしているんだ」
「火を中に入れて、中の空気を抜いて窒息死させようと思いまして」
(土魔法でできた壁は破壊させても土壁の破片はその場に残る。火で焼いたモンスターも火を消しても消し炭のモンスターが元に戻るわけではない。この世界では魔法は自然現象に作用をしていると考えられるからな。火魔法を出せば酸素は減るはずだ)
いくつかの魔法の実験が今回の発想に至ったようだ。
(フレイムランス)
(って熱い)
手に熱風がかかる
どうやら中で飛竜がブレスを吐いたようだ。
おかげで中の酸素は急激に減少していく。
30分が経過する。
(ほうほう。動きが弱くなってきたな。もうちょいか)
飛竜の壁への体当たりが少なくなったように感じる。
(ファイアーボール)
MPの節約のために火魔法Lv1に変更して持久戦に変えたようだ。
壁の一角に空いた穴にこそこそ魔法をかけるおっさんに対して、飛竜狩りってこういうもんだったかと思うイリーナである。
さらに30分が経過した。
中の酸素はだいぶ減ってきたようだ。
(ファイアーボール)
『ズウウウウウウン』
「お。飛竜が倒れましたね。もうちょいです」
タブレットを見ながら経験値の上昇で倒したか確認するおっさんである。
(ファイアーボール)
さらに15分が経過した。
「お。経験値が入った」
(経験値120万か半端ないな。Bランクの100倍かよ。それでもレベル上がんなかったけどな)
「む。経験値とはなんだ」
(やばい。声に出してしまった。後ろに姫騎士がいるの忘れてたぜ)
「どうやら。飛竜を倒せたようです」
「何。それは本当か」
「はい。大丈夫だと思いますがどうしますか」
誤魔化すおっさんである。
「ふむ。どちらにせよ解体せねばならぬからな。とりあえず皆を呼んでまいろう」
こぶし大の穴を完全にふさぎ、案内をしてくれた馬車まで歩いて戻る。
案内してくれた馬車まで戻り、検問まで戻る2人であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます