第23話 MP自然回復

スラムから戻ってきたおっさんは冒険者ギルドの中に入る。

かなりの人数がごった返している。


(今18時過ぎだな。日が暮れる前に冒険者ギルドに報告をして飲みに行くみたいな生活なのかな。移動に時間のかかる世界だ。では狩場から戻るタイミングも早いということだな。それだとあまり長い時間狩りができないので遠方で活動する冒険者は活動先での泊り込みも考えられるな)


冒険者ギルド内の様子を見ておっさんは冒険者の活動を分析する。

当然タブレットの『メモ』機能は起動させている。


【ブログネタメモ帳】

・冒険者の活動状況予測


(さて。ドブネズミの尻尾はどこに持っていくんだ。とりあえずキツネ耳の受付嬢のところだな)


キツネ耳の受付嬢のいる受付カウンターに並ぶおっさんである。


(結構並んでるな。そういえばごりマッチョの冒険者に絡まれないな)


おっさんに比べてガタイのいい冒険者はたくさんいるが誰も絡もうとしてこない。

そういえば、さっきから誰も目を合わせないなと思うおっさんである。


(これはこの装備のおかげなんだろうな。スラムの家族も結構な反応だったしな)


Bランク相当のモンスターの素材でできた漆黒の外套を、目元を隠すまで被ったおっさんである。


(実際の冒険者のランクより高く思われてるんだろうな。まあ別に職業どおりの装備だし。最近流行りのMMOみたいに戦士がスキューバダイビングの格好をして、大根でドラゴンを撲殺するような絵じゃないしな。装備は職業らしい格好をしないとパーティー戦でパーティーメンバー反応遅れるしな)


昨今のゲーム業界のアバター人気に一言あるらしいおっさんである。

列が長くて思考が脱線してしまったようだ。


(Dランクの魔法使いか。魔法使いとしてはCランクらしいな。おそらくレベルでいうとDランク相当なんだろうな。パッシブスキルで威力の底上げをしてるからCランクなんだろう)


お昼前に受けた冒険者の適性試験を思い出す。


「はい。次の方どうぞ」


脱線しまくった思考をたぐり寄せるおっさんである。


「すいません。ドブネズミを狩ってきましたが、討伐の証の尻尾はこの列で大丈夫ですか」


「はい。大丈夫です。大きな獲物の場合は報告のみこちらで済ませ、奥にある買取カウンターで素材の引き渡し等を行っていただきます」


「ではドブネズミの尻尾15本です」


「確かにお預かりします」


「すいません。モンスターや薬草等の素材を入れる袋のようなものは売っていますか」


どうやら村でもらった袋とモンスターや薬草等の素材は分けたいおっさんである。

ドブネズミの尻尾15本を片手に握りしめたままだったようだ。


「ございますよ。こちらも奥の買取カウンター横で販売もしています。ドブネズミの討伐報酬は銀貨4枚銅貨5枚になります」


「ありがとうございます」


お金を小袋にいれ、ごわごわした丈夫で大きめの麻袋を1袋銀貨1枚で2袋購入し宿に戻るのであった。


ここは銀皿亭の一室である。

食事も終えたおっさんはベッドに腰かけタブレットを見ている。


『時計』機能を見ながら、何か検証をしたいようだ。


(魔法使いに大事なMPの回復条件を確認するか。MP切れは今後、外で冒険する上で死に直結するしな。長期間の冒険や泊まり込みの冒険もあるだろう)


(ステータスオープン)

MP:130/225


(ふむ。午前中の冒険者ギルドでフレイムランス使ってからMPが回復していないな。既に15時間くらい経ってるんじゃねえのか)


今は時刻20時過ぎである。

村でも街への道中でもMPは気付いたら完全回復していたことを思い出すおっさんである。


(多分休んだらMP回復するんだろう。RPGのゲームみたいに)


とりあえず2時間おき鳴るようにタブレット『時計』機能のアラームを設定する。


(さてお休み)



2時間が経過した22時過ぎである。


『ピピピピーピピピピー』

『ピピピピーピピピピー』


(ほう。おはよう)


短時間で目覚めたおっさんは、なぜかタブレット『時計』機能のアラームを消して感動を覚える。


(この音は10年以上使っている俺の目覚まし時計の音だな)


おっさんはずっと同じ目覚まし時計を使っている。

10年以上の中で2度壊れたが電化製品店やネット販売を駆使して同じもの使い続けているのだ。


(検索神さまの粋なはからいだな。さて同じ宿屋の住人の反応はなさそうだな。まあこれだけで結論はできないがアラーム音はおれだけに聞こえる可能性があるな。さてMPはと)


(ステータスオープン)

MP:130/225


(まだ一切回復していないか。また寝るか)


2時間にセットをしてベッドに横になるのである。



2時間が経過した合計4時間過ぎた24時過ぎである。


『ピピピピーピピピピー』

『ピピピピーピピピピー』


(どれどれ)


タブレット『時計』機能のアラームを消してステータスを確認する。


(ステータスオープン)

MP:130/225


(まだMPは回復していないな。もう一眠りだ)


2時間にセットをしてベッドに横になるのである。



2時間が経過した合計6時間過ぎた2時過ぎである。


『ピピピピーピピピピー』

『ピピピピーピピピピー』


(もういいだろう)


タブレット『時計』機能のアラームを消してステータスを確認する。


(ステータスオープン)

MP:225/225


「おおおおお」


思わず声が漏れるおっさんである。


(ふむ。6時間寝たらMP全回復か。たしか現代の日本の睡眠時間が6時間半くらいだったか。6時間必要ってことかな。だが5時間の恐れもあるな)


(ヒール)


ヒールを唱えMPを消費するおっさんである。


(ステータスオープン)

MP:223/225


5時間にセットをしてベッドに横になるのである。




5時間が経過した7時過ぎである。


『ピピピ』


タブレット『時計』機能のアラームをすぐに消してステータスを確認する。


(つーか寝すぎてほとんど起きてたわ。とりあえずMP確認だな)


自分の検証にノリツッコミをするおっさんである。


(ステータスオープン)

MP:223/225


(さてMPは予想通り回復していないな。飯食ってくるか)


いつものごとく既に空いている食堂で食事をとり、また自室に戻ってくるおっさんである。


食事を終え少しばかり時が過ぎるのを待っているようだ。


(そろそろだろ)


タブレットの『時計』機能で8時過ぎたことを確認する。


(ステータスオープン)

MP:223/225


(やはりそうか。MPの回復の法則が見えてきたぞ。さてもうひと踏ん張りだ)


2時間にセットをしてベッドに横になるのである。




2時間が経過した10時過ぎである。


『ピピピ』


タブレット『時計』機能のアラームを消してステータスを確認する。


(まあ当然眠れなかったな。とりあえずMPの確認だな)


(ステータスオープン)

MP:223/225


(概ね結論が出たな。ざっくりまとめるとこういうことだな)


・MP回復には6時間の休憩が必要である

・連続して6時間休憩しないと無効となる

・睡眠している必要はないが安静にする必要がある

・食事などは安静に入らない

・6時間経過すると段階を置かずMPは全快する


(MP回復の条件は結構厳しめに設定だな。ルルネ村の薬屋のばあさんはMP回復薬の存在をそう言えば知らなかったな。街の薬屋に今度くりだして探してみるか。もしかして魔法使いってネタ職業なのか)


(スキルオープン)

・魔力回復加速Lv1 100ポイント

・魔力消費低減Lv1 100ポイント


(この辺のスキルも早めにとっておいた方がいい感じなのかな)


『ドンドン』


おっさんが今後の魔法使いとしての立ち回りについて考えていたところ、部屋のドアのノックがなる。


「は、はい」


驚いて返事をするおっさんである。


「まだ部屋にいるかい。掃除できないんですがね」


どうやらもう11時近くだ。

恰幅のいいおばさんが部屋の清掃に来たようだ。


「すいません。もう部屋を出ます」


「はいよ。すまないね」



慌てて荷物をまとめ冒険者ギルドに向かう。


冒険者ギルドに入ると、もう人がほとんどいない。

ちなみにカウンターにも受付嬢がいないようだ。

カウンターの先の扉の奥で話声が聞こえ来る。


(完全にタイミング悪かったな。とりあえず今日は薬草でも拾いに行くか)


「すいませ~ん」


カウンターの奥にいる受付嬢を呼ぶおっさんである。


「はいはい。今伺います」


奥からキツネ耳の受付嬢がでてくる。


「遅い時間帯にすいません」


「あ。ケイタさんですね」


(ん。とうとう名前を覚えられたか)


「はいそうです。何かございましたか」


「はい。先ほど、ケイタさんを探している方が冒険者ギルドにお見えになりまして。お話がしたいとのことです」


(ん。だれだろ。スラムの親子くらいしか知ってる人いなんだが)


「そうなんですか。ちょっと心当たりがないんですが」


「なんでも領主様の使いの方のようですよ。もし今日冒険者ギルドに顔を出したら、明日の朝、鐘2つの時に冒険者ギルドによってほしいとのことです」


(鐘2つって朝6時に鐘がなり、3時間おきになるんで朝9時か。それにしても急な話だな。ていうか領主様に面識ないんだが。なんだろ)


「はあ。特に心当たりがございませんが、かしこまりました」


「では明日に鐘2つで大丈夫ということですね。冒険者ギルドの方から領主様の使いの方にご連絡しておきますね」


「分かりました。何か使いの方から要件とか伺ってますか」


「申し訳ございません。特にそのような話はございませんでした」


(ちょっと怖いな。なんだろ。最近牢獄に入れられたばかりなんだけど。また理不尽イベントが発生するのかな)


「それではその件については、そういうことでお願いします。あと今日は薬草の依頼を受けに来たのですが」


「薬草ですか、Eランクの…」


また低いレベルのランクの依頼でガッカリをするキツネ耳の受付嬢である。


(見るからにガッカリしているな。何だろ?魔法使いに受けさせたい特別な要件でもあるんだろうか。今日は薬草だけど今度聞いてみるか)


「そうです。どのような薬草なのか見たことがないので、実物を見せていただけませんか?」


「そうですか。少々お待ちください。サンプルの薬草を持ってきます」


「ありがとうございます。助かります」


受付嬢はカウンターの奥の部屋に戻っていく。



ほどなくして戻ってくる。


「こちらがサンプルです。」


受付嬢は2つの薬草を持っている。


「2種類あるんですね。何て名前の薬草ですか」


(カピカピに乾燥した『ヨモギのようなもの』と『レンゲ草のようなもの』を持ってきたな。目視で確認したぞ。地図機能で調べることができるな)


「リモネ草とココラナ草です。リモネ草に熱冷ましの効能があります。ココラナ草は怪我に効果があります。本当はもう少し種類があるのですが、初めての依頼のようですので見つけやすいものを持ってきました。」


(キツネ耳の受付嬢さん、すごくいい人に見えてきたぞ。今度依頼について相談に乗ってもらおう。ココラナ草はそういえばルルネ村で見かけたな。乾燥する前のだけど)


「ありがとうございます。街の周辺にありますか」


「はい。どちらも街の周辺の草原など広く自生しています」


「助かりました。いってきます」


そういって街の外にでるおっさんであった。

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