第19話 タブレット機能の拡張
ここはアルバイト先の事務室である。
男は1人勉強をしていた。
その周りで談笑したり、本を読んだり、寝ていたりと、思い思いの休憩をしている人たちがいる。
今は夜勤の休憩時間のようだ。
夜勤の休憩は仮眠もできるよう日勤より長く休憩時間が設けられているのだ。
「お。今日も山田くんは勉強しているね」
「はい」
男に50過ぎの人が話しかけてくる。
男は勉強を止め返事をする。
「会社の正社員採用試験受けるんだって」
「そうです。去年は落ちてしまいましたけど今年も受けようかと」
「そうなのか。去年は残念だったね。今年は頑張るんだぞ」
「はい。がんばります」
どうやら50過ぎの男は檄を飛ばしに来たようだ。
「でも。それだとバイトリーダーの君に来年から抜けられるのか。ははは。厳しくなるね」
「ありがとうございます」
一言声をかけて50過ぎの男は去っていく。
夜勤のフリーターの人生に焦ってバイトを頑張ってみた男。
3年も頑張るとバイトリーダーとなっていたようだ。
・・・・・・・・・
土曜日の朝、おっさんは1k8畳の一室のシングルベッドで目覚める。
(田村課長にはお世話になったな)
50過ぎの男は田村課長というらしい。
10数年過ぎた今でもお世話になった課長の名前をたまに思い出すようだ。
おっさんは起き上がりパソコンを起動させる。
起動させ、検索神サイトの画面を見るようだ。
「おお、さすがに投稿数が増えてPVとASが伸びてきたな。今週あげたブログ記事は結構小粒のネタだったんだけどな。記事数も大事ということか」
検索神サイトのPVとASのポイントを確認しているのだ。
PV:1503ポイント
AS:109ポイント
一日あたりのポイントの獲得平均PVは120ポイント程度、ASは14ポイント程度に達しているようだ。
SNSによるブログ情報の拡散と新記事をこつこつ上げてきたことが少しずつ結果になってきたようだ。
この一週間に投稿した新しい記事はこちらになる。
第12記事目 フェステル街編 フェステルの都にやってきた~街を探検してみよう~
第13記事目 フェステル街編 冒険者と一般人の装備事情
第14記事目 フェステル街編 異世界あるある獣人っているんだよ~猫耳の神秘~
第15記事目 フェステル街編 ガラが悪いけどやさしい武器屋で短剣買ってみた
第16記事目 フェステル街編 異世界の屋台の焼き鳥をレビューしてみた
「さて、異世界にいくかな。なんか週末異世界冒険者になってるな。」
毎週末に異世界に行ってるなという感想を持つおっさんであった。
検索神サイトの『扉』をクリックし、いつものメッセージを表示させる。
『ブログ記事の投稿が確認できました。異世界にいきますか はい いいえ』
おっさんが『はい』をクリックすると、ふっと目の前の風景が現実世界に戻る前にいた宿屋銀皿亭の泊まっている一室に変わる。
(さてと、まずはASポイントは使っておくか。土魔法だけとっていなかったので土魔法もレベル2まで取得しておくか。やはり後衛職とはいえ、検問のおっさん程度の力も欲しいからな。力は必須だな。それと、風魔法レベル2はワイバーン戦も苦労したな。レベル2にしたらレベル3獲得するためにASポイント貯めるか)
・火魔法Lv2 必要ポイント10Pポイント
・水魔法Lv2 必要ポイント10Pポイント
・土魔法Lv1 必要ポイント1Pポイント
・土魔法Lv2 必要ポイント10Pポイント
・力向上Lv2 必要ポイント10Pポイント
・耐久力向上Lv2 必要ポイント10Pポイント
・素早さ向上Lv2 必要ポイント10Pポイント
・知力向上Lv2 必要ポイント10Pポイント
・幸運力向上Lv2 必要ポイント10Pポイント
あらかじめ決めておいたスキルをタブレットから選び取得していく。
スキルを取得し終わり、ステータスを確認する。
(ステータスオープン)
Lv:13
AGE:35
HP:210/210
MP:225/225
STR:44
VIT:62
DEX:62
INT:203
LUC:69
アクティブ:火魔法【2】、水魔法【2】、風魔法【2】、土魔法【2】、回復魔法【2】
パッシブ:体力向上【2】、魔力向上【2】、力向上【2】、耐久力向上【2】、素早さ向上【2】、知力向上【2】、幸運力向上【2】
加護:検索神ククルの加護(小)
EXP:4693
PV:1503ポイント
AS:28ポイント
(よしよし全部スキルレベル2になったな。っておいおい。またこっそり加護を上げているな。今度は騙されないぞ)
加護の欄は必ず見るようにしていたおっさんは加護が『微小』から『小』に変わったことに気付くのである。
(これはたぶん累計PVポイントに合わせて加護が変わっていってるかもしれないな。今回加護が変わったのは累計PVポイントが1000ポイント超えたからだと思うんだがな。前回の『極小』から『微小』は累計PVポイントが100超えたからじゃないのかな。とりあえず次に累計PVポイントの桁が10000に変わるときに注意が必要だな)
加護の変化の原因を分析するおっさんである。
(さて。今回は何が追加されたかな)
新たにタブレットのアイコンが増えたと思うおっさんはタブレットを開くのである。
(タブレットオープン)
(おお。アイコンが2つ増えてるぞ)
体で喜びを表現する
(こいつは『地図の絵』だな。こっちは『時計の絵』だ)
地図のアイコンをタップするおっさんである。
上部に『フェステルの街』という表示がある。
どうやら街の地図のようだ。
(街の絵だ。上下に十字に街並みが見えて、その周りが灰色になってるぞ。街の全体の輪郭はわかるな。これは先週にフェステルの街を大通り沿いに歩き回ったところが表示されてるな。これは実際に行った部分が塗りつぶされていく系の地図か。ゲーム風の地図だな)
タブレットに表示した『フェステルの街』を見ながら地図の機能を分析するのである。
(画面を操作すると、街からフィールドに変えられるな。こっちがルルネ村か。フェステルの街までの細い線が移動して通過した場所なんだろう。村をタップすると村の中に表示が切り替わるぞ。)
操作しながら『地図』の機能を確認するおっさんである。
(この国の全体像はどうなってるんだ)
さらに操作するが、この国やこの世界の様子は分らないようだ。
(むむ。これはたぶんフェステル子爵領の範囲しか見えないってことだな)
かなり操作範囲はシビアに設定しているようだと感じるおっさんである。
(地図は大体分かったぞ。こっちの時計はどうなってる)
ダブレットの『時計』のアイコンをタップする。
(普通に時計だな。時刻は7:12か。異世界の時間帯でそれくらいか。9時の鐘で『時計』の時刻と比べてみるか)
おそらく異世界時間を表示してあるという認識だが確認をしようとするおっさんである。
(ストップウォッチや目覚まし時計の機能もあるな)
『時計』に付属している機能も確認する。
(目覚まし時計は、アラームの音が人に聞こえるかが問題だな。異世界だと夜番の時間交代の時とかに使えそうだな。ストップウォッチはいまのところ何に使うか思いつかないな。おれは料理もしないしな)
一通り機能の確認を終える。
昨晩の泊まりから朝晩の食事も予約しているので銀皿亭の朝食を取りに1階に降りる。
異世界の朝ははやい。
今は7時過ぎ。
宿泊客は既に食事を済ませ、食堂は席ががら空きである。
「遅かったね」
前回カギを預けようと声をかけたカウンターに立ってたスカーフを頭に巻いた女性に話しかけられる。
「すいません」
いつものように謝罪をするおっさんである。
「いいのよ。朝食はキッチンのカウンターからとってね」
キッチンのカウンターにはトレイがあり1人分のスープとパンが取り分けられている。
席につき食事をとるおっさんである。
(さて、前回お願いした防具は出来上がってるかな。食事を済ませたら取りに行くか。そのあとは冒険者ギルドだな)
村で初めて食べた食事と同じ感じだったなという感想をもつおっさんである。
食事を済ませ、荷物は全て持ってきているので、そのまま店を出る。
大通りを歩いてほどなくすると防具屋にたどり着く。
「いらっしゃい。ああ昨日の」
店の主人に声を掛けられる。
とっさにタブレットの『メモ』機能を起動させる。
【ブログネタメモ帳】
・物腰柔らかい防具屋の主人
メモの内容を追記するためだ。
どうやら宿屋の朝食はメモをするまでもない内容だったようだ。
「昨日お願いしたものはできていますでしょうか」
「もちろんできてるよ。着ていくかい」
「はいお願いします。鎧を着ることがあまりないため着方も教えていただけますか」
「もちろん構わないよ。ちょっと出してきますね」
お店の奥から昨日予約した商品を持ってくる主人である。
・真っ黒なフード付きの外套
・外套の中に着る薄手の皮の鎧
・革靴
・下着2点
「予約札と金貨37枚と銀貨70枚のお金です」
「たしかに」
渡された硬貨を数えながら主人は思う。
結構な金額なのにぞんざいに払う旅人なんだなという感想をもつのである。
「・・・」
外套と鎧を見て心弾むおっさんである。
「さて、皮の鎧だけど、ここの留め具をとって。それから」
鎧の着方を、一通り説明を受けるおっさんである。
そこまで難しい構造にはなっていないようだ。
装備を一式身にまとうおっさんである。
(鏡がないからどんな感じかわからんな)
それは年を重ねたおっさんの気合の入ったコスプレイヤーになったような格好である。
「ありがとうございます」
「こちらこそ。またよろしくお願いしますね」
袋も全部持ってきておいて良かったな。
新しい下着と脱いだ服を入れておけるぞ。
でも村でもらった保存食はじゃまだったかな。
荷物を整理し、お互い挨拶を交わし、店を出る。
(さて次は冒険者ギルドだな)
大通りを抜け、冒険者ギルドを目指すおっさんであった。
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