第07話 おっさん、ゴブリン村を襲撃する
・・・・・・・・・
ここはおっさんがゴブリンの村を襲撃している場所から20kmほど歩いた場所にあるのどかな農村である。
冬が終わり、立春を迎え、草木が育ち始めたばかりの、のどかな田園風景がそこらかしこに見える。
そんな春うららな農村が喧噪としていた。
40過ぎと見える、畑仕事で恰幅のいい壮年の農夫が年寄りに対して何かまくし立てている。
その周りを農夫たちが取り囲んでいる。
「村長、隣ん家のコルネがゴブリンに攫われちまったのに何で動かねんだよ」
「ふむ」
「ふむじゃねえ。領主様も動かねえし、俺らで討伐隊を作って、コルネ助けに行けばいいだろ」
「領主様は寛大なお方だ。今返事貰いに代理人を領都に向かわせたわい。もう少し辛抱せい。領主様なら騎士団をきっと派遣してくださる。去年の不作の時も税を減らしてくれたであろう」
「だから、先月に『森の獲物が少ない』っていうヨハンの話信じたらよかったじゃねえか。こんな村近くにゴブリンの巣が出来上がる前にな」
「いまさらそんなこと言っても仕方ないわい。コルネのことも仕方ない。これは村長の決定じゃ」
「そんっなぁ」
・・・・・・・・・
そして場所はおっさんが襲撃しているゴブリン村に変わる。
門番を爆死させられ、8体ほどのゴブリンがぼろぼろの剣や槍を持って現れる。
(ふむ。ゴブリンもわいてきたし、ちょっとこの人間が生きているかすぐに判断できそうにないな)
人間らしきもののそばに近づいたおっさんは、少女であると認識したものの、ゴブリンに意識を集中する。
(MPは48だったな。レベルが3になっていくつか増えたか分らんが。練習で1発、ゴブリンで4発つかったから残りは少なくともMP38で19発使えるな)
(MP0になると精神がおかしくなる異世界ものの小説もあるから少しMP残しておくか。それだと残りファイアーボール18発分か)
(18発魔法を使ったら一度元の世界に戻ってMPを全快にし、できるだけ狩るか。量多すぎて狩りきれないなら娘抱えて退散だな)
「ファイアーボール」
「ファイアーボール」
「ファイアーボール」
「ファイアーボール」
「ファイアーボール」
「ファイアーボール」
「ファイアーボール」
「ファイアーボール」
8匹のゴブリンに対して全弾命中する。
(ふむ、またレベルが上がった気がするぞ。これでレベル4か。残り10発か)
残弾数を計算しながらおっさんはさらに湧いてくるゴブリンに対してファイアーボールを打ち続けるが10匹を超えてゴブリンは湧いてくる。
(ふむ。残りMPいくつかわからんがここまでか。でもまたレベルが上がった気がするな。これでレベル5か)
「ゲートオープン」
(ふむ。ステータスオープンのノリで言ってみたが、普通に出てきたな。魔法もそうだが、意識だけで反応してくれるようだな。)
タブレットにメッセージが表示される。
『ブログに投稿できる程度の体験をされました。日本に帰還しますか。はい いいえ』
ゴブリンの第二陣がまだ村の門から出てきていないことを確認しつつ『はい』をタップする。
門から30~40mにあり、門から出てきた瞬間に爆撃しているのでタップする程度の余裕があるのだ。
意識のない少女を残し、一人おっさんは元の世界に戻る。
「さて現実世界に戻ってきたが、まずは検索神サイトの画面の確認だな」
検索神サイトの画面を見ると、ゴブリン村の門が見える。
魔法が何発も着弾したため、門の付近が焼けただれているが時間は止まっているようだ。
特にゴブリンの動きはない。
「時間はやはり止まっているようだな」
「ゴブリンの討伐やレベル上げの体験をブログに起こすか。そのあと少し休んでもう一度異世界に戻って最後までゴブリン狩ろうかな」
まだ現実世界は時間が止まっているので日曜日の朝である。
「なるほど。こうやってブログ書かせるために、片方の世界の時間は止めているのかな。検索神様のお力まじ半端ないな」
そんなことを考えながら、先ほどまでに起きた、森での索敵とゴブリン村入口で起きたことをブログに起こしていく。
それから、ブログ記事を書き終え昼間に差し掛かる。
「ブログも起こしたし、コンビニに行くか。今日は卵サンド、カップうどんにするかな。あとチョコミントのアイスの新しいの出ていたな」
ゆっくり昼飯を食べ終える。
体型を気にしてもチョコミントは食べるようだ。
「さっきは戻る条件確認せずに異世界に行って後悔したから、異世界に行った瞬間の立ち回り整理をするか。」
「つーか疲労感はあるのな。森を歩き回って、ブログ投稿で頭使ったしな。少し寝るか」
思案を巡らせながら、日曜の昼間から寝るらしい。
それから6時間近く経過した夕方過ぎである。
おっさんは目覚める。
「おはよう」
おっさんしかいない部屋でおっさんはつぶやき、頭の中を整理する。
「移動した後やるべきことはこんなもんか。」
・ステータスの確認(主にMP残量の確認)
・PVの確認(ASポイントで新たにスキルをふる暇ないだろう)
・倒れている少女へのヒール
「貴重なモンスターの湧きスポットなんだがな。人さらっているみたいだしゴブリン村は殲滅だな。」
おっさんはかなりのゲーム脳である。
レベル上げにとって、モンスターの湧きスポットはとても貴重であるという認識である。
そして、これまでもゲームでそうしてきたように、レベルはマックスまで上げるものであると確信をしている。
「今後のことを考えるとタブレット画面の情報は生命線だからなるべく見ながらの戦闘も必要だな」
下着姿でPCの前に座る。
おっさんは寝るときは下着派である。
検索神サイトを開きメッセージを確認する。
『ブログ記事の投稿が確認できました。異世界にいきますか はい いいえ』
おっさんは『はい』をクリックすると、ふっと目の前の風景が現実世界に戻る前のゴブリン村前方30~40メートルに変わる。
20発近いファイアーボールを受け、門付近は焼けただれているのが見て取れる。
門や木柵の一部は焼け焦げ村の内部に達している部分もあるようだ。
後続のゴブリンはまだ湧いていない。
「ゴブリンの第三陣がやってくる前にしないとな」
決めておいた段取りを素早くおこなうおっさん。
「ステータスオープン」
名前:ケイタ ヤマダ
Lv:5
AGE:35
HP:72/72
MP:84/84
STR:16
VIT:20
DEX:20
INT:66
LUC:22
パッシブ:火魔法【1】、水魔法【1】、風魔法【1】、回復魔法【1】
アクティブ:体力向上【1】、魔力向上【1】、力向上【1】、耐久力向上【1】、素早さ向上【1】、知力向上【1】、魔法耐性向上【1】
加護:検索神の加護(極小)
EXP:128
PV:15P
AS:1P
「ふむ」
「相変わらず、PVもASもほとんど伸びないな。今度アクセス数増やすための検証をするか。それに、ゴブリン村討伐はいいネタになるしな」
意識が別の方に行きそうになる。
おっさんは急いでPVを経験値に割り振る。
「お、やったレベルが上がったぞ」
名前:ケイタ ヤマダ
Lv:6
AGE:35
HP:84/84
MP:96/96
STR:18
VIT:24
DEX:24
INT:78
LUC:25
パッシブ:火魔法【1】、水魔法【1】、風魔法【1】、回復魔法【1】
アクティブ:体力向上【1】、魔力向上【1】、力向上【1】、耐久力向上【1】、素早さ向上【1】、知力向上【1】、魔法耐性向上【1】
加護:検索神の加護(極小)
EXP:143
PV:0P
AS:1P
「レベルが上がるとHPMPは全快するようだな。これもRPGと同じか。いかんいかん次は回復だ。」
地面に倒れた少女に近づくおっさん。
生存確認よりまず回復魔法を唱える。
「ヒール」
淡い光がでて、少女全体を包み込む。
光がだんだん消えていく。
しかし少女は動き出さない。
「もう死んでたか。」
少女の手首に指をあてる。
脈はあるようだ。
さらに回復魔法を唱える。
「ヒール」
淡い光がでて、少女全体を包み込む。
光がだんだん消えていく。
しかし少女は動き出さないようだ。
気を失っているようだ。
「これで様子を見るか。」
少女が動き出さないので、村に入るべきか検討をする。
思案していると、また村の中から動きをおっさんは感じる。
「グフ、グフ」
「グギャグギャ」
「グオオっ」
どうやらボスゴブリンを呼んできたようだ。
かなり大型のゴブリンが1体とそこそこ大型のゴブリンが複数わらわらと門から出てくる。
「ふむ。あの一番でかいのは、2mくらいかな。」
「そこそこ大型のはおれの身長と同じくらいか。剣持ってるのはいいとして、弓と杖持ってる奴は優先だな。」
まだ30-40m遠くにいるため、正確な体格は分らないが、120cmのゴブリンと遠目で比較をする。
なお、おっさんの身長は175cmである。
ブサイクだが身長はそこそこあるようだ。
距離を縮めようとするゴブリンの集団。
遠距離攻撃してくるものを優先してファイアーボールを連射する。
「ファイアーボール」
「ファイアーボール」
「ファイアーボール」
「ファイアーボール」
「ファイアーボール」
5発のファイアーボールがゴブリンの集団を襲う。
レベルアップを何度もしてか、ファイアーボールの大きさは以前の30cmから50cmほどのビーチボール並みになっている。
ゴブリンに当たるとそのまま後ろのゴブリンまでなぎ倒していく。
そのうちの一発がボスゴブリンに当たる。
吹き飛ばされるボスゴブリン。
まだ死んではいないようだ。
そこそこ大型のゴブリンは弓と杖を持っているものは起き上がろうとしない。
剣を持っているゴブリンだけボスゴブリンと追従して迫ってくる。
ボスゴブリンを先頭に突進を続けようとする。
そのときである。
「きゃあああああああああああああ」
どうやら、少女は目覚めたようだ。
おっさんがゴブリンを魔法で吹き飛ばす最悪の状況である。
状況が呑み込めず、悲鳴を上げて震える少女である。
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