拝啓、欠陥品の皆様へ。

人には誰にでも、欠陥箇所が存在します。

それは運動音痴であったり、歌が下手だったり、勉強ができなかったり、様々です。


しかし、欠陥箇所が少し違っただけで、人はそれを社会不適合者と呼びます。

すなわち僕のような人間のことです。


僕はシステムに大きなバグをもたらす欠陥を持つ人間でした。

そんなの直ぐに修復すればいいと皆様はお思いでしょう。しかし、私にはそれを直すための部品がありませんでした。


だから、他の方から少しずつ拝借しようと思ったのです。


僕は焦っていました。だからそれが周りの迷惑になるだなんて気が付かなかったのです。

今では本当に取り返しのつかないことをしたと心の底から後悔しています。


だからこそ、私は命を持って償います。

欠陥品の私の命でそれが少しでも許されるなんて思っていません。ですが、欠陥品の僕にはこれしか方法が思いつきませんでした。


もうこれで。僕は僕でなくなります。その前に。

最期に我儘を言うことを許してください。


完璧でありたかった。

欠陥だけじゃなく、何かが欲しかった。

それが無理ならせめて


欠陥を愛してもらいたかった。


僕は今からいなくなります。


これからは僕のような不良品な欠陥品が増えないことを祈ります。



ーーーーー



本日未明、札幌医療刑務所で身元不明の遺体が発見されました。警察はこの医療刑務所で治療中だった23歳で元大学院生の…



(暗転)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る