(7)
本編が終了し、画面が暗転する。
光と音を失った教室。
どこからともなく音楽が流れ出す。
静かな歌い出しで始まったのは、楽曲『インタラクション』である。
それに合わせてスクリーンにも再び映像が映し出される。
流れるのは、思い出。
帰り道。屋上。教室。廊下。
クランクインしてから撮り溜めた動画や写真が、次々と画面に現れては消えていく。
エンディングに登場するクラスメイトたちは、真剣な表情をしていたり、ふざけて笑い合っていたり、涙していたりして、そこに広がる世界にもきっと映画とは違った別の物語が存在していたのだろうなということを感じさせる。
長いようで短かった時間。映像にしたらもっと短い。
でも、そこに詰まった出来事は語り尽くせないほどある。一人一人の視点から追っていったら、その間に繰り広げられていたドラマは無限にあるだろう。
エンディングの映像はみんなが花火を楽しむ様子を映し始める。
クラスメイト全員が揃うという、あの一つの大きな奇跡が起きた夜の光景。
智文と陽菜乃が何かを言い合っている。
直夜と透華が恥ずかしそうに見つめ合っている。
四人が幸せそうに笑っている。
黒い背景になって、スタッフロールが流れる。
それが過ぎていくと、エンディングも終わりが近づく。
ラストに控えるのは二枚の写真。
一つ目は花火で描いた『Thank You』の文字。
映画を観てくれた人に、撮影や制作に協力してくれたすべての人に、贈る言葉。
そして、最後の一枚。
場所はここ。二年三組の教室。
先生も含めた四十一人で撮った、笑顔の集合写真。
映画が終わった。
溢れんばかりの拍手と歓声が、じんわりと温かくなった智文の心に響いてきた。
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