小説『インタラクション』 第5章
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河川敷での花火のシーンの撮影を終えた智文たちは、いよいよラストシーンの撮影の準備に取り掛かった。
花火からクライマックスとなるラストへの流れは物語の順番通りに撮りたいという陽菜乃の提案に沿って、残る撮影はラストシーンのみとなっていた。今まで様々な場所でいろんなカットを撮ってきたが、もう間もなくそのすべてが繋がって集約し、物語的にも制作側にとっても感動の結末を迎える予定であった。
ラストシーンは帰りのホームルームが行われる教室のカットから始まる。先生が透華から直接受け取ったという手紙を直夜に渡し、それを読んだ直夜が教室を飛び出すという流れだが、この場面を撮影するにはクラスメイトが教室にいること、そして何より先生の協力が必要だった。
そういった条件を考慮し、智文たちは撮影日を決定した。
ところが肝心の撮影の日、直夜が学校に登校して来なかった。
主役の不在で朝から騒ぎになる二年三組の教室内に、他のクラスのテニス部員から前日の部活の練習中に足を捻挫したという情報がもたらされた。直夜はすぐに病院に連れていかれ、現在は入院しているとのことだった。
当然、撮影は中止になったが、智文はそれよりも直夜と一切連絡が取れないことが心配だった。こちらから携帯でメッセージを送ってみるも返信はない。陽菜乃も試したが駄目だったらしい。
嫌な予感がした。冷や汗が震える体を伝った。
状況がわからないし、とにかく学校が終わったら会いに行ってみるしかない。
このあとの撮影プランを練り直すためにも、まずは現状の把握が第一だった。
智文は陽菜乃と透華に声をかけ、放課後一緒に病院へと向かった。
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