【2】
夏休み明け一日目はあっさり終了した。
今日は始業式が行われるだけで通常の授業はなく、お昼前には下校となった。
明日からは普通に授業があるので準備をしておかなければならないのだが、いつもきっちりと予習をしていくような真面目な生徒でもないので焦りというものはあまりない。
変わり映えのない、冴えない日常がまた淡々と始まっていくのだろう。
一人校舎を出た僕は、行きつけのハンバーガーチェーン店で昼食をとることにした。
その店は学校からも駅からも離れた場所にあった。そこの辺りまで来ると同じ学校の生徒はおらず、知り合いに会うことはそうそうない。孤独に慣れているとはいえ、こういった日に一人で昼飯を食べているところを知っている人に見られるのは抵抗があった。
そうして選ばれた妥協点がここだった。我ながらよくわからない自意識に振り回されているなと思う。
店の中はお昼時ということもあり、がやがやと騒がしかった。僕以外に一人客がいないわけではなかったが、大半が二人以上で席を陣取り、それぞれ内輪のお喋りを楽しんでいた。
空いた席に適当に座り、僕はハンバーガーの包みを開けてそれをほおばりながら、そんな会話に少しだけ耳を傾けた。
よくもまあそんなに話すことがあるなと感心してしまうが、隣のテーブルの他校の制服を着た男女数名のグループが先ほどから大きな声で話している内容を整理すると、どうやら同じような他愛もない話を延々と繰り返しているに過ぎなかった。
時間の無駄だ、と僕はそれ以上聞くのをやめた。彼らがなんでそんなに楽しそうにしているのか理解不能だった。
けれども、会話とは得てしてそういうものなのかもしれない。
内容なんかなくてもその場のノリに合わせて適当に相槌を打っていれば成り立つもので、何か実のある話をしようとか考えるから難しく感じてしまうだけだとも言える。
しかし、仮にそうだったとしても、僕はいつまでもそういったことが苦手なままだろう。
知らず知らずのうちに培われた疎外感が普通になれないことへの絶望と普通であることに対する拒絶を生み、自分は特別だという捻じ曲がった矜持を持つに至った。
だから、僕は変わらない。
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