シャー芯

田土マア

シャー芯

 私は背中を押してもらわなければ何もできない。

背中を押してもらって、初めて仕事ができる。


 情けない。と自分でも思う。


 せっかく背中を押してもらったのに途中で心が折れることもある。

その度、何度も背中を押される。


 私はもう無理だと思うのに、無理にでも仕事をさせられる。

私の仕事は自分の身を削り、何かの形に表すこと。

 自分の身を削るから、極力きょくりょく仕事をしたいとは思わなかった。

だから背中を押してもらうんだろうけど…。


 この世界に私に似ている仕事をする人は何億といる。

それだけの代わりがいるということだ。


 だから私は無理に働く必要がない。

私が仕事を放棄ほうきすれば代わりが身を削ってくれる。

その方が私にとっては好都合こうつごうかもしれない。


 私の代わりはいくらでもいる。


 私が心折こころおれ、もう立ち上がれない程に身を削ったところでやっと代わりと仕事が変わる。


 けどね。それと同時に私の人生も終わるの。

今まで身を削り続けたのが、馬鹿らしく思えるくらいあっさりとてられる。


だから、私は生きている限りこの身を削って生きた証を残したいの。


――ほら、また仕事だよ。

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シャー芯 田土マア @TadutiMaa

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