後編

目をあけたら、大勢の人が俺を見下ろしていた。


みんなが歓声をあげ、何か言っている。


しかし俺はぼうっとして、まだ聞き取ることはできない。


もう一度、目を閉じた。


□□□


……頬に指の感触を感じ、目が覚めた。


「……ごめん、起こしてしまった」


もうはっきりとした意識で聞き取った、あの子の声。


「大丈夫、もう充分寝たよ」


寝過ぎで体が少しだるい。


「体は大丈夫?」


「うん」


「……そういえば、みんなは?」


大勢来てたのにな……?


「私が来たら、帰ってしまったわ」


そうなのか……


それって。


「……気を使ってくれたのかな」


「……」


ノーコメント、か。


勇気を出して聞く。


「その、マインのことなんだけど、あれってやっぱり……カタカナだよな」


「……どっちに受け取ってもいい、よ?」


えっ。


はやくはやくと次の言葉を紡ぐ。


「じゃあ……漢字でもいい?」


おそるおそる、聞いてみた。


「私はそのつもりで言ったの!」


すごい勢いだ。


でもそれだけ俺を想ってくれてるということだよな?


「嬉しい」


そうやって微笑む彼女が眩しい……


……さっとまわりを見回して、ドアもしまっていることも確認した。


彼女に顔を寄せていく________




□同時刻□


そろそろ見回りの時間だ。


ナースセンターから出て向かった先は、今日意識を取り戻した患者の部屋だ。


その名前は、「松井まつい 三太さんた」。


ガララッ


「えええっ!?」












         


         〈終〉




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