会いたい人は……

前編

窓が藍色に染まりふちが白くつもる12月のある日の夜。


俺は同じクラスの女子とMINE(マイン)というメッセージアプリでトークしていた。


……間接的にいうと、好感度が高い女子と、だ。


高校に入ってから8ヶ月ほどがたったたった今月、つまり12月の今日。


ようやく俺は隣の席になれたのだ!!


善は急げ、と俺は今日のうちにマインの連絡先交換を済ませておいた。


準備はととのった!


そう、クリスマスイブを一緒に過ごす、それが俺の目標!!


そのためには今のうちになじんでおいたほうがいい。


席が隣になる前はあまり話せなかったのである。


ピロン♪ 


メッセージがきたようだ。


「はやく会いたいな」


ドクン!


ドクッ、ドクッ、ドクッ……


……何だ何だ!? この心臓に悪い文章は!?


そんな気持ちを鎮めつつ、


「誰と?」と送信する。


「……」


しかしスマホは沈黙したままだ。


なんだ、この間は? 


もしや、


「俺、とか?」


いや、ないない!


ないから!


……さすがに、な。


送信ボタンは押さずに、代わりに「坂町駿斗とか?」

と打ち、こんどこそ送信した。


坂町駿斗さかまちはやとは今売れてる若手俳優である。


ピロン♪


「いや、ハヤトじゃないよー」


「えっ違うの?」と送りつつ、最近ファンだと言ってたのにな、などと考える。


ピロン♪


「うん、違う。私が会いたいのは……」


またしても、間。


『俺、とか?』

さっき送りかけた文字を思い出した。


いや、ないない。


……ほんとに?


何で決めつけてるんだ、俺。


あるのかもしれないだろ!


……玉砕覚悟だぁ!


「もしかして、俺とかだったり」と文字を打ち、送信ボタンを……


押す前だった。


ピロン♪


「ちょっと恥ずかしいけど、言うね」


バクン!


さっきよりも激しい動悸。


まずい、心臓が死ぬ。



落ち着こうとベッドから立ち上がり部屋の中を歩きまわる。


次のメッセージを待つ。


たった数秒のことなのに、何時間にも感じた。


まだか。


まだか。


落ち着け、と目を閉じた。


ピロン♪


おそるおそる目を開ける。


……そのメッセージを確認した次の瞬間、俺は転んで、頭をしたたかに打ち、




気を失ってしまった。




スマホに表示されていた文字は、












「サ・ン・タ・さ・ん♡」





俺はその後病院に運ばれたらしい。











  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る