第2話

 信二の家を拠点として、すなわち居候として過ごしてから早二日が経過した。

 今日は水曜日、信二は月から金までの曜日は学校という場所で過ごす。ので、今日も昼はこの家にはいない。

「おはようございます、尚子さん」

「はい、おはよう」

 そのころ私は、信二の母、もとい取牧尚子とりまき しょうこに朝の挨拶をすませ、居候なりに家事の手伝いをする日々だ。

「そろそろ私も出かけるから、後はよろしくね」

 彼女も彼女で、私たちを養うために働きに出かける。夫は死別したらしく、稼ぎに出られるのも尚子しかいないようだ。

「分かりました。いってらっしゃい」

 そう言って私は尚子を見送り、せっせと洗濯を干し始める。

 家事代行のおかげで料理もできるようになった。簡単だ。冷凍庫から袋を取り出し、適量を器に乗せてレンジと呼ばれる箱に入れる。あとはボタンを押して待てば勝手に料理が出来上がる。便利な時代だ。

「……ん?」

 机の上に小さな包みが置かれている。間違いない、信二の弁当箱だ。忘れていったのだろうか?

「なるほど、なるほど……」

 そういえば、私は学校というものを見てみたかった。

 というのも、一度そのような建築物が出来た際に訪れたのだが、不要人物として追い出されてしまった経験がある。

 この際だ、届けるという口実もある。一度『がっこう』とやらに入ってみようじゃないか。

 私は袋包みを片手に持ち、家を飛び出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る