帰り道—春海

いつもより、とても小さい歩幅で歩く。

背後から聞こえる小さな足音が、耳をくすぐる。



「………」



微かに声が聞こえた。

聞いて欲しいことがある、と彼女が言ったからわざわざ帰り道を共にしているのだ。声をかけてきて当然だろう。



「…何?」



なぜだか、振り返ることはできなかった。

何かが壊れる音が、近づいているような気がしたから。


気づけば、足音は消えていた。

彼女も、俺も止まっているから。


俺たちなどいないかのように、空から淡々と地面に向かって針を刺すに降る、雨。











「………好きなの」






振り返っても、彼女の顔は赤い傘で隠されて見えない。


俺は、自分の黒い傘を手放し、目の前の赤い傘をぐいっと持ち上げる。









そして、思わず彼女を抱きしめる。



































「……俺も」

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