第36話 VS Sクラス
「学・内・交・流・戦! がついに始まります!」
下克上戦を終えてしばらく経ったある日、僕たちはテスタ先生の話に耳を傾けていた。
「学内交流戦といえば、年に一度行われる全学年対象の大規模トーナメントだよね」
「おれ決勝戦見に行ったことあるぜ! 最っっ高にバチバチした試合だったなァ!」
そういえば、父さんたちから兄さんたちが学園の大会かなにかで暴れてるって話を聞いたことがあるようなないような……。
「ちなみに前年度優勝者は、現生徒会長でもあるノエル君だったね。準優勝者はベールさん、アリエル君のお姉ちゃんだよ」
そうテスタ先生が教えてくれる。
……姉さん、ノエルに負けたのか。
少しノエルの警戒レベルを引き上げた。
「概要を説明すると、これは希望者のみ参加ということになっているわ。でも勝ち上がれば名声は上がるし、その分将来も安泰になる確率はぐっと上がる。さっきカイン君が言ってくれたように、全学年対象の大規模トーナメント戦で行われるわ。……つまり、一年生でも最上級生の五年生とも戦うことになる可能性は十分にある、ということよ」
「……たしかに、厳しい戦いになりそうだね」
「先輩方と戦えるとは、光栄なことだな」
「えぇぇぇ、私は絶対ごめんなんだけど」
「ただ先に産まれただけの同じ人間だろうが。相手が誰であれ、徹底的に叩き潰すだけだ」
「それが出来るのはあんたたちくらいだっての……」
「早く始まんねぇかな! 楽しみすぎるぜッ!!」
「ま、姉さんを負かしたあのノエルの実力を見るいい機会だ。都合がいいね」
「……」
「話を戻すね。トーナメント表が貼り出されるのは1週間後、そして学内交流戦が始まるのがさらに1週間後、つまり今から2週間後だね」
「1週間の内に戦略を練って本番に励め、ってことかな」
「ふむ、十分な時間だな」
戦略、戦略ねぇ。
「(なにも考えてなくても負ける気しないんだけど)」
──マスターは所謂、
この学園でまともに勝負になる人は数えるくらいしかいないから心配しなくてもいいと思っている。
それこそ、今はステータスやスキルに制限をかけてるから人によっては互角にやり合えるが、万全の状態で望めば……。
──1秒もてば拍手喝采を贈りたいですね──
「(だな)」
正直、今のステータスは世界最強レベルに桁がとんでいる。
この成長速度で大人になれば、神の領域にまで手が届くかもしれないほどだ。
「という訳で、今日からしばらく学内交流戦に向けた実戦形式の時間を増やします。前回はアリエル君もいなかったことだし、みんなで研鑽していこう!」
「滾るねェ!」
「たしかに、燃えるな」
「せっかく出るんだ、いいとこまで勝ち上がりたいね」
「よっっし! 全力全開フルスロットルでいくよ!」
「本番当日までに燃え尽きないでよね……」
「わ、私は、み、みなさんのサポートに回るので……わ、私にできることがあれば、え、遠慮なく言ってください……!」
そんなみんなの気持ちは、共通して"待ち遠しい"と感じていた。
◇ ◇ ◇
「そういえばみんなって何が得意なの?」
さっそく訓練場についた僕はふと疑問に思ったことを口にしてみた。
「そっか、エルくんいなかったもんね」
「サボり魔め」
「あ、あはは……」
仕方がないじゃないか。
将来の自分のものになる領地が気になったんだもん。
「僕が知ってる限り、ドールは持ち前の身体能力と格闘術を駆使した近接戦。こっちは少ししか知らないけど、リヴェルの氷魔法を軸とした遠近共に対応できる万能型。それに、カインの偉人憑依くらいかな」
「オレはエルと一緒に魔物狩りまくってたからな」
「そうだね」
リヴェルに関しては、入学試験のときの様子を見てたからな。
特に氷の城を創りだしたことには僕もびっくりしたことだ。
「じゃあ、今から全員と1VS1、する?」
「それじゃあ時間がかかっちゃうからさ、……全員でかかってきなよ」
「……舐められたもんだね。これでも強さにはかなり自信あったんだけど?」
「いんや、ハイネ。それくらいのハンデがあっても、たぶん足りねぇくらいだぜ?」
「ドールまで……はぁ、いいよ。後悔しても知らないからね!」
「王国全土までその名が知れ渡っている男と手合わせ出来るとはな。感謝するぞ」
「……なぜ共闘などしなければならない」
「まぁまぁ。とりあえず──始めようよ」
その言葉で、カインとハイネが飛び出す。
「(ハイネは二刀流か……カインの剣術は見たことあるけど、偉人憑依の力はまだ見てない……どちらにせよ剣で向かってくるのは変わりないか)」
すぐにお決まりスキル、【並列思考】【高速思考】【瞬時理解】を発動させる。
「やぁっ!」「ふっ!」
ハイネの二本の剣と、カインの剣が襲いかかる。
「アドリブのはずなのにも関わらず、連携がとれたいい攻撃だね」
そんな二人の攻撃を、避ける、避ける、避ける。
「避けるだけじゃ勝てないよ!」
その瞬間、ハイネの剣が首元まで飛んでくる。
だが──
「甘いね」
──ハイネの剣を二本の指で掴み、胴体に迫っていたカインの剣も同じように掴む。
「いい攻撃だったけど、──まだ届かない」
「甘いのは貴様だ」
その瞬間を待っていたように、リヴェルとローズの魔法が同時に襲いかかる。
「ははっ」
その魔法を、掴んでいたカインとハイネの剣を奪い、一振り……全てをはじき飛ばした。
「さすが、ドンピシャのタイミングだったよ二人とも」
「……木剣で魔法をはじき飛ばすとは、恐れ入る」
「ほざけ。貴様はこの俺が潰してや──」
──オルゥゥゥァァァァァッ!!
ドゴォォォオォン
「──ぺちゃくちゃ話してる暇なんざ与えねぇぞ?」
「ドールッ……!!」
僕は自然と口角が上がるのを感じた。
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読んでいただきありがとうございます!
このコロナ禍の影響でだいぶ休みが増えたので書ける時間がとれました。
ほんとにすごい数のコロナ感染者が出ていると聞いてるので、皆さんも感染しないよう祈ってます。
次の話もお楽しみください。
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