第31話 ルミエの才能/スラムの闇
「ははは、みんな凄いよ! それじゃあ、残ってるのはルミエちゃんだけね!」
「あ、あのぉ、私、その、戦ったりするのは苦手というかぁ……」
「うーん、そっかぁ。じゃあ何ができるの?」
テスタはSクラスの担任。
生徒のデータはもちろん頭に入れているだろう。
それでもなお、ルミエに問いかけた。
「わ、私は、錬金術が使えます……」
「それを使って何ができるの?」
「そ、その、ポ、ポーションとかをつくったり………」
「ルミエちゃん、錬金術はどんなものだと思う?」
その問いを聞いてルミエは考えだす。
そして、答えが出たのか、顔を上げてこう言う。
「ジャンル問わず、幅広く活躍できる万能術………?」
その答えにテスタは驚きを表す。
先程までは確実に、ここまで的確な答えを持っていなかったはずだ。
しかし、今の短時間で錬金術に関する新たなな答えを導き出した。
───ルミエは天才。
テスタのルミエに関する評価が固まった瞬間だった。
「……ふふ。ならルミエちゃん、その錬金術を活かして戦闘を行うとしたら?」
「……罠。あらかじめ相手の出方を頭の中でどの方向からどのタイミングでどのような策で動くのかを予測、そこから最善の罠を完璧な位置に設置してどの動きにも連動できるような、自分だけの有利なフィールドを作り出す。例え予想外の策で攻めてこられて、設置した罠を突破されたとしても錬金術の力なら臨機応変な対応も可能………だ、だと思います」
これに関してはテスタもこう言うしかなかった。
「そ、それだけできていれば完璧よ……」
こうして、Sクラス最初の授業は幕を閉じるのであった。
〜アリエルside〜
冒険者の街づくりは順調に進んでいた。
今の領地を軽く説明すると、昨日帰る前に創ったダンジョン周りの外壁があるところと少し離れたところに僕の将来住むことになる家があるあの街があり、現在、ダンジョン周りの外壁の中の街づくりを行っている最中だ。
「それではみなさん!お昼休憩に入りましょう!食事を配給するので最初に集まってもらった場所に順番に並んでくださぁい!」
魔法を使って声を拡張してみんなにお昼休憩の合図をだすと、今まで働いていただろうたくさんの人が集まってきた。
「アリエルさんよぉ、ここまでしてくれてほんとぉに恩にきるぜぇ」
スラム街の人であろう一人の男の人がそう言うと他の人からも感謝の言葉を浴びせられた。
「いえいえ、みなさんが動いてくれるからその分僕達の感謝の気持ちとしてお返ししてるだけですよ」
「かっはっは! 気前のいいお人が領主だなんて、私りゃ恵まれてんぜ! お前らもそう思うだろぉ!」
「そうだなぁ」「これでこの街も安泰じゃあ!」「アリエル様、バンザ〜イ!」
「───ハッ、どうせそんなの最初だけに決まってんだろ」
そう言われた方へ顔を向ける。
そこには、見た目8歳ほどの猫の獣人の特徴である猫耳の生えた鋭い目つきをした男の子と、妹らしき見た目4歳ほどの女の子がいた。
「貴族ってもんは最初だけ気前よく接してくるくせにどんどん深く関わっていくほど人とは思えないほど俺たちをボロ雑巾のようにこき使って、最後には見捨てるクズどもだ」
そう言って二人分のご飯だけもらうとすぐにここを離れていった。
「あの子たちは………」
「はぁ、あいつらは俺ら以上に貴族を憎んでるんですよ」
「過去に何かあったんですか?」
「あいつらにゃ、最初俺らでさえ頼りにしてた本当に頼もしい二人の親がいたんです。どうもその話を聞いて前の………あんのクソ領主の野郎がスラム街にまで足を運んでやってきたんだ!」
「? ………あのゴランが?」
「そうだ……それがあいつの策だったんだ、スラムのやつらにも普通に接してくれて、最初はおれらも戸惑ってた。こんな貴族もいるのか? ってな……。そしてさっきも話したあいつらの親二人に向かって、私のところで働く気はないか? と聞いてきたんだ。俺らにとっちゃあそりゃ大出世もいいとこだぜ! だがほんとの意味は違ったんだ………」
「それは………?」
「ここから先はおれも聞いた話だ。あの二人も大喜びしてついていった、ガキどもを守るためにな。最初の数ヶ月はよかったらしい。普通に働いて普通に給料をくれた。しかし、だんだん普通とは思えない要求が増えていった。とくに母の方は身体を迫られたり、いろいろ非道なことをされたって聞いた。そんな日々が続いてついに二人とも倒れちまったんだ。だけどあのクソ野郎はそんなもんもおかまいなしにいつも以上に働かせた。最終的に病にかかったあの二人にあいつは何をしたと思う?」
「………」
「男は見捨てて、女の方は少しだけ治してから死ぬまで犯し続けたって話だ………。そしてその死体をあいつらのところに運んでからこう言ったんだ。お前らみたいな薄汚いやつらには手の届かない貴族という存在の役にたったことを光栄に思え、………ってな」
ゴオォォォォォォオオ
そんな音が聞こえてきそうなほどに濃密でどす黒い殺気が自分から出ているのに気づいてなかった。
「そこらでやめときな。みんながビビっちゃってるよぉ?」
そう言って肩に手を置いたのはキリだった。
「ッ………ごめんなさい。キリ、ありがとう」
「さすがに今の話を聞いたらそうなっちゃうのも無理ないよねぇ。………だからこそ、そこまで怒ってくれる君をみんなは信じてくれてるんだよ? それを裏切るような行為をすることがあるなら………俺が許さねぇぞ」
強者に相応しい圧倒的なオーラを前に僕もまた気を引きしめる。
「分かってます。僕は………ここの人たちが好きなので」
「………うん、それが聞けただけで十分だよ。それじゃ、みんなも頑張ってねぇ〜」
そう言って離れていくキリを見送る。
「絶対にこの街を、不幸な人がいない、そんな街に仕上げてみせる………」
そう言って改めて気を引き締めた。
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読んでいただきありがとうございます!
今から登場人物の容姿をちょっとずつ書いていこうかなって思います。
アリエル・フォン・アルバート……白銀の髪と碧眼が特徴。とてつもない美形を誇っており、あの化け物じみたパワーを持っているとは思えないほどスラッとしたスタイルも魅力的。
サシャ・フォン・ヴァーミリオン……赤い髪と赤目が特徴的な超絶美少女。親二人の影響か、アリエルに何かあったときはとてつもないオーラが溢れでる。
リヴェル・フォン・ローファウト……黒髪で黒目の鋭い瞳とつり目が特徴。学校では既にリヴェルのファンクラブができるほどにイケメンである。
今回はこの三人です!
………くそ、全員美形とか、羨ましすぎるだろ…………。
はい。理想と現実ですね。
次は他の三人です!
次の話もお楽しみください。
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