第28話 氷の君主vs火の神の神子
エルが領地でいろいろ動いているなか、Sクラスでは授業が始まっていた。
「あんれぇ?エルがいねぇけどどうしたんだ?」
「ふむ、確かに気になるな」
「はーい、せーしゅくにー!」
そこで担任のテスタが教室に入ってきた。
「今日は初授業ということで皆の実力を知っておきたいと思っているから訓練所にいきます!」
そういうとテスタはSクラスのみんなを連れて訓練所へと案内する。
「はいはーい、しつもーん!」
「はい!ハイネくん!」
「今から何をするんですかー?」
「ふっふっふ…、よくぞ聞いてくれました!そう!これからみんなにやってもらうのは──」
「1vs1のタイマン」
「………」
「俺たちの能力はかるにはタイマンが一番効率的だろ」
「………」
「……なんだ、黙り込む──「わあぁぁぁ!!!」ってなんだ急に!」
「ひどい!ひどいよリヴェルくん!今完全に私が答える雰囲気だったのに……」
「……はぁ、脅かすな。まったく、やるならさっさとやるぞ」
「──おい、ローファウト貴様、目上の方には敬語を使えと教育されなかったか?」
「……あ?」
「自分が少し強いと言うだけで偉くなったとでも思っているのか?」
「……貴様、言葉には気をつけろ」
「ふん、教育がなってないお坊ちゃまにそんなこと言われる筋合いは、ないと思うが?」
真正面から睨み合う二人──もといリヴェル・フォン・ローファウトとローズ・フォン・レウス──が、最初のカードとなった。
◇ ◇ ◇
「2人とも、準備はいい?」
「「ああ」」
「それでは、リヴェルくんvsローズちゃんで第一試合、スタートッ!」
〜ローズside〜
「(ふぅ、氷の君主と呼ばれるほどの実力はあるようだな……、こうやって正面から向き合うだけで冷や汗が出てきそうだ)」
強者はただ向き合うだけで相手の実力や格が分かるという。
まして氷の君主と呼ばれ、白い悪魔と呼ばれるアリエルの次に名が広まっているリヴェルとなれば、強者と言っても過言ではないだろう。
ローズも同じだ。
南の辺境では"火の神の神子"と呼ばれているローズも、れっきとした強者だろう。
だが───
「(ちっ、格はあっちの方が上か……、ならば──)」
先手必勝。
ローズは現在出せる最速の攻撃を繰り出す。
「ファイアバレッド」
これをアリエルが見たら驚いたことだろう。
銃という概念がないこの世界で、それと似た攻撃を編み出していたのだから。
ローズが出した炎は銃の形をした手の指先に集中した。
それが、発射されると高速でリヴェルに向かって飛んでいく。
それをリヴェルは難なくかわすが、ローズの絶え間ないファイアバレッドに足を止める。
そこをローズは見逃さなかった。
既に準備を完了させていた技を放つ。
「火竜の咆哮ッ!!!」
それはまるで竜の形をした炎だった。
それが真っ直ぐリヴェルの元へ飛んでいく。
とてつもない威力をもったローズの技はリヴェルに当た───
「甘い」
「なっ!?」
───ることはなく、超高密度の氷の盾に防がれていた。
「炎は氷に勝る、とでも思ったか?それは敵と自分が同格のときだけだ。───俺と貴様では格が違うんだよ」
そう言い切ると、氷の盾が木っ端微塵になる。そして、その欠片一つ一つが鋭利な礫となっていた。
「これで終わりだ」
そう言った瞬間、ローズに向かって一斉乱射する。
「ッ、私をなめるなよッ!」
ローズも負けじと超高密度のファイアバレッドで危険だと感じた礫をすべて撃ち落としていく。
「(よし!もう少しですべて撃ち落とせる!)」
そこで、礫を撃ち落とした後の先のことを考えだしていたその瞬間
「終わりだと言っただろう」
ローズの足元から何本もの鋭利な氷の氷柱がローズの首元に向かって伸びていた。
「くっ……、私の負けだ…」
終わってみれば、リヴェルの圧勝で終わっていた。
「(これほどなのか……、さらに上にいるエルはどれほど………いや、考えるまでもないな)」
数段、数十段、上にいる二人をみてローズは悔しさを隠せなかった。
「いずれお前たち二人を超えて強くなってやる、それまで負けるなよ」
「ハッ、ならその目標は墓まで持っていくことになるな」
「ほざけ」
「「「「「…………」」」」」
「クククク、かっはっは、ほんとすげぇなあんたら!これほどの魔法の戦闘を実現させてるのはずば抜けた魔力導線のレベル、そして圧倒的センス!どちらが欠けても成立しねぇ!くぅー、かっけぇなぁ!」
「うん!ローズは、魔力操作の技術はもちろん、あれほど小さな的を一発も外さない精密さ!そして、リヴェルくんはなにより、あの高威力の魔法を、しかも不利属性の魔法を止める超高密度の盾!ほんとにすごいよ!」
「……悪魔ならもっと上手くやった」
「え……?」
「あいつの魔力操作技術は誰にも及ばない、なにせあれほどの境地までたどり着いたなら相手の魔法すらも支配することができる。それほどなんだからな……」
沈黙。
すごいすごいと思っていたがこの氷の君主とまで呼ばれた男にここまで言わせることに驚きを隠せなかった。
「じゃ、じゃあ次は誰がやろっか……」
「はいはぁい!私がやりたい!」
元気にポニーテールの髪型をゆらしながら手を挙げた。
「それなら僕がやろうか。よろしくね、ハイネ」
「おっ!カインくんが相手かぁ。手加減はなしだよ?」
そんなハイネは不敵な笑みを浮かべてカインを見る。
「ふふっ、後悔しないようにね」
そして、二試合目のカードが決定した。
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読んでいただきありがとうございました!
テスト期間だったのでお久です。
少し変更があります!
リヴェル・フォン・ローファウトの二つ名を"氷剣"から"氷の君主"にしました。
氷剣、というより君主の方がしっくり来たからですね。
次の話もお楽しみください。
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