第26話 ダンジョン創作
「冒険者の街?」
「ええ」
そうして、先程の武器屋で買った一本の長剣をだす。
「これを見て何を思いますか?」
「何を?……すみません。私には普通の剣にしか見えないのですが」
「ですよね?しかし、この剣、実はそこらへんの鉄くずを集めて作った材料最悪の剣なんです」
「!?それは本当ですか!」
「はい!これだけで、匠の腕の良さが見られます。これを有効活用出来ないか、そう考えた結果、冒険者の街にすることが最善だと感じました」
「………確かにこれはなかなかの拾い物でしょう。しかし、これを宣伝するだけでは冒険者の街など到底とどかないと思うのですが…」
「もちろん、ただ、宣伝するだけならそうなるでしょうね。しかし、奇跡的にこの街にダンジョンが出現したらどうなると思います?」
「?……冒険者ギルドが黙ってないでしょうね。しかし、そんなことはありえないと思いますが…」
「出来ると言ったら…?」
「……もしかして、本当に出来るのですか!?」
「やってみない事には分からないです。初めての試みですから」
でも、と一泊おいて
「出来ると思います」
なぜか疑わなかった。
たったの10歳の子どもがダンジョンを出現させることが出来るという妄言に……
そう思わせる雰囲気をエルは醸し出していた。
「───全力でお手伝い致します」
「ありがとうございます!」
◇ ◇ ◇
そして僕は、ダンジョンを出現…、いや、
「んー、やっぱりここが一番かなぁ」
そこは、街から少し離れた平原だ。
「ここにダンジョンを創るとして…、周りに家やらなんやらを建てようかな。となると、地下ダンジョンみたいな感じになるか……」
そう口にしながら頭の中で設計図を描いていく。
「大賢者、世界最大級のダンジョンは何層ぐらいあるの?」
──冒険者の国と呼ばれている国のランベルツダンジョンですね。そのダンジョンは、塔のようなダンジョンになっており、上に登っていく形態のダンジョンです。80層あります。ちなみに、踏破した人は未だ二人しかいないそうです──
「冒険者の国なんてあるんだ!行ってみたいなぁ。…じゃなくて、80層か。意外と少ないんだね」
──多い方ですよ。実際、そこらへんのダンジョンでは2、30層で大きくて50層あるかないかぐらいです──
「ふ〜ん。じゃあキリがいい100層のダンジョンを創ろうかな」
言うやいなや、固有スキル【万物支配】を使い、スキル【迷宮創造】作成。早速スキルを使用する。
すると、自然とダンジョンの創り方が頭に入ってくる感覚がした。
──まずは、核ですね。それほど大きいダンジョンになると相当、魔力を持っていかれると思います──
「了解! まずは形を造って……とりあえず、100階層の最奥の部屋に飛ぶか」
そして、形の形成だけが完了したダンジョンの最奥に来た僕が思ったのは……
「ひっっっっろ!!!!」
真っ暗だったため、光魔法を使って周りを照らすと、王城の敷地ほどの広さが目の前には広がっていた。
「確かに広めの部屋を想像してたけど……、まさかここまでとは。それより、初めてだし不安だから……大賢者、サポート頼んだよ」
──お任せ下さい。マスター、魔力を丸い形状のようにして集めてみてください──
「ん、……こんなもん?」
魔力を自分の体から放出し、魔力導線Lv:Exの力でほんの少しの魔力漏れを逃さないような緻密な魔力操作を行う。
──あと、その10倍ぐらい魔力を増やしてもらっていいですか?──
「了解……、まだか?」
──いえ、結構です。ありがとうございます──
そう言って、とんでもない魔力密度のものを正八面体のような立体形に作り替える。
そして、完成したのか、何もせずとも宙に浮かんでいる。
「出来たの?」
──はい。正直、この作業をするにはマスターの負担がものすごく大きくて危険だったのでこちらで終わらせました。ダンジョンマスターとしての登録も終わらせていますので、核を経由することで、どの魔物をどこに配置するかなどの作業が出来るようになっております──
「なるほど。なら、魔物の配置までやったらいったん帰ろうかな」
──魔物を配置するとき、注ぐ魔力の量によって強さが変わるのでご注意ください──
「分かったよ」
そして、二時間ほど時間が経過したところで作業が終わった。
「うん。大体こんなもんかな。我ながらよく出来たと思うよ」
そして、後ろを向き最下層のラスボスとして配置した、The魔王って感じの玉座に座った吸血鬼をみる。
「そういえば軽く流してたけど、ダンジョンってどんな原理で創られてるんだ?」
──壮大な話になりますが、この世界の核と先程創ったダンジョンの核を魔力で繋ぐのですが……少しでも操作ミスしたり、なにか問題があったりすると、世界の核が異変を起こし、簡単に言えばハイザル王国ごとぐちゃぐちゃになります──
そ、それってかなりやばいのでは……?
とりあえずダンジョンの創りに納得した僕は帰ることを決意する。
「僕の魔力の5割を持っていったんだ。簡単に負けないでよ?」
それだけ言い残し、領主邸に飛ぶ。
「明日、冒険者ギルドに動いてもらいます。そして、周りに壁を作ってから中に建物を建てましょう」
「了解しました。私は何をすればいいでしょうか」
「そうですね……。なら、建物を建てる時のために労働者を集めておいてください」
「分かりました」
そう言って、すぐに仕事に移る。
「もうすぐだね。誰が一番最初に踏破するかな……?」
そう呟いたエルは、不敵な笑みを浮かべていた。
────────────────────
読んで頂きありがとうございます!
(少し書き変えました)
最近、更新ペースが遅いというのを自覚してます……。
次の話もお楽しみください。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます