第23話 王立魔法騎士学園受験②
早く終わった僕は何もせず残り50分も待つのは暇すぎると思い、別の試験会場を見てみることにした。
スキル【神眼】を使い、目を飛ばす。
ちなみに、このスキルは目を使うスキルの最上位に位置するスキルで例えば透視や、今使っている千里眼のような使い方もできる万能スキルだ。
「(ふむふむ…、実技の試験を受けている子達の中には目を見張るような子はいないっぽいな……ん?巨大な魔力反応!?これはもう一つの実技の試験会場からか!)」
急いでそこに目を移動させる。
するとそこには、とても10歳の子供が作り出したは思えない巨大な氷の城が建っていた。
「じゅ、受験番号38番、一次実技試験合格ッ!」
「「「「お、ぉぉおおおおおッ!!!」」」」
「な、なんだよこれ…」「こんな化け物が同年代にいるのかよ…」「か、かっこいいぃぃぃぃ!!!」「さすがは氷の君主だ!!」
「(これが氷の君主……想像以上だな…ッッッ!?)」
その瞬間、氷の君主と視線があう。
ニヤリと口角を上げるリヴェル・フォン・ローファウトのその姿は、まさに氷の城に君臨する王のそれだった。
「(ははっ、上等だよ。入学が待ち遠しい…)」
◇ ◇ ◇
「今から一次実技試験を始めます!この試験では自分の特技を披露してください!ここにある的も使っていいです。それでは一列に並んでください!」
そう言い終えると、皆が我先にと前に並ぶ。
必然的に最後尾になった僕は大人しく並ぶことにした。
それから、一人ずつ特技を披露していったがここでも目を見張るような子はいなかった。
「次の子〜、どうぞ」
あっという間に順番が回ってきた僕は何をしようか悩む。
「(ん〜、何を披露しようかなぁ。ただ神気を纏ってすごーいってなるのも面白くないしなぁ。披露するなら皆に魅入ってもらいたいし……あっ、これはどうだろ)」
「テスタさん、特技じゃなくても皆にすごいと思って貰えるものでもいいんですよね」
「?別に問題はないけれどそれで不合格になってもしらないよ?」
「ありがとうございます。それだけ聞ければ充分です」
そう口にした僕は、水魔法の応用で辺り一帯に霧をつくる。
「な、なになに!?」「急に霧が…!」「なんだよこれ!!」
「(さあ、ショーのスタートだ…!!)」
〜テスタside〜
「(霧…?こんなもので何をするのかしら?)」
すると、だんだん霧が晴れていき見えてきたものは…
「み、湖…!?」
試験会場ではなく幻想的な湖だった。
これは、幻覚魔法…?
でも幻覚魔法をくらった時は夢を見ているようなそんな感覚に陥る。
けどそんな感覚は一度もなかった…。
だがそれは本物の湖にしか見えなかった。
周りには森の中なのだろうか…、たくさんの木の周りにうっすらと霧が漂っている。
ふと上を見た。
「綺麗…」
そこには、満天の星空にエメラルドグリーンのオーロラがかかった絶景があった。
何秒経っただろうか。
目に映る絶景に魅入ってしまった私は次の一言とともに我に返る。
「楽しんで頂きましたか?」
「はっ…、これはあなたが?」
「もちろん。あ、ちなみに幻覚魔法は一切使用してませんよ」
「そう。でもどうやって…?」
「水魔法や光魔法などの応用ですよ。精密な魔力操作やこの景色のハッキリとしたイメージさえできればいくらでも創り出せます」
言葉が出なかった。
たったの10歳が大人顔負け…いや、大人でさえ霞むような魔法を披露してみせたのだから。
「受験番号6番、一次実技試験合格よ」
一礼する目の前の子供にただただ戦慄した。
〜アリエルside〜
「(はぁ、成功してよかったぁ。ちょっとでも乱れたら台無しだったからね)」
──さすがはマスターです──
「(だろ)」
──聞いた事ありません。幻覚魔法も使わずにあれほどの絶景を創り出すなど…
、しかも
「(成長したってことだよ)」
──マスターは成長しすぎです──
その後の試験、二次実技試験は受験者同士の
これは、3回対決してどれも圧勝で終わった。
今日一日振り返ってみても不合格になる要素が見当たらなかったから不合格になることは基本ないと思っている。
そうして、無事受験を終えた僕は合格発表を待った。
そして合格発表当日、受験日と同じように登校すると、これも受験日と同じくたくさんの人で混雑していた。
落ちて泣き崩れる子もいれば、受かって声を張り上げている子もいる。
そんな人混みの中からサシャが溢れてきた。
「キャッ!!」
「おっと…大丈夫?」
「え、エルくん…ありがと」
顔を赤らめながらそう微笑んでくるサシャは相変わらず天使だった。
「それよりもどうしてこんな人混みの中から出てきたの?」
「ここからだとよく見えなくて…」
「なるほど。じゃあサシャの分も僕が見てあげようか?」
「いいの?ありがとうエルくん!」
「どういたしまして」
視線を結果が書かれている方向に移す。
「ふむふむ……あっ、サシャの番号があったよ!」
「ほんとっ!?やった!エルくんのは?」
「ちょっと待ってね…6番6番と、あれ?」
「どうしたの?」
「いや、僕の番号が載ってなくて…」
「え!?え、エルくんが落ちるはずないよ!」
おかしい。
実際僕も落ちることは最初から頭に無かったため少し焦る。
と、そんなことを考えていたら後ろから声をかけられる。
「おい、貴様がアリエル・フォン・アルバートか?」
「なにか用?今はチンピラの相手をしてるひま、は、ない……氷の君主?」
「名前でよぶどころかチンピラ扱いか。舐められたものだな」
そこには、氷の君主の二つ名を持つリヴェル・フォン・ローファウトとその取り巻きがいた。
「いや、ごめん。そういうのに慣れててつい、ね」
「それよりなんでそんなところを見ているんだ?」
「なんでって、合格したかどうか見てるだけだけど……」
「冗談も大概にしろ。お前程のやつがそこらの有象無象と同じ場所にある訳がないだろう。Sクラスとして受験合格しているやつらは他の所にある。……あれだ」
少し見渡してそう言う。
そこには、先程見ていた結果表と同じような大きさがあるものがあった。
「これとは違うのか。それは知らなかったよ」
「首席、貴様だろ」
見ると一番上には僕の受験番号である6の数字があった。
「ほんとだ…」
「次いで、次席は俺だ。こういう結果になったってことは俺が解けなかった問題も解けたのだろう?」
「解けなかった問題?」
「一番最後に書かれていた問題だ。あれはこの学園の最上級生ですら解けるか否か怪しい問題だ」
「へえ、そんなに難しかったんだ」
「ちっ、とにかくそれだけだ。いずれその座を奪う。覚悟しておけ。じゃあな」
それだけ言い放って帰っていくリヴェルを見ながらエルは、
「う、受かっててよかったぁぁぁ……」
安堵の息をついていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます