第21話 闇ギルド殲滅戦③

「うちのやつらが世話になったな」


「いえいえ。それにしても、若いね」


「前のボスが倒れたからな。代替わりしたってことだ」


「闇ギルドは実力主義。その若さで頭に立てるぐらいの実力を持っている時点で末恐ろしいよ」


「あんたが言えないだろ。言った通り闇ギルドは実力主義だ。その幹部達を言葉ひとつで片付けちまうあんたは俺より余程化け物だろ」


「まあ、否定はしないね」


「……名は」


「君たちに名乗るようなものは生憎と持ち合わせてないよ」


「ふん、その減らず口も出せないようにしてやろう」


「ああ、やっぱり一つあったよ。まぁ、僕は納得してないんだけど──白い悪魔、僕はそう呼ばれているんだ」


 瞬間、先に動いたのはクロウだった。


「フッ」


 短剣を5本同時に投げる、と同時に走り出す。

 その短剣をネロの力で弾くと向かってくるクロウに対して僕は


「なっ」


 躱した瞬間、闇の精霊王に接近する。


「この黒い領域じゃ敵と見なすモノの魔法とスキルも封じられる。他の大精霊と神気以外はね!」


 付け加えると、僕に対してステータスの大幅ダウンにクロウに対してのステータス大幅アップの効果がある。


 しかし、僕はこの領域にはまだ他に隠している切り札があると思う。万が一にもそれが僕に対して効果抜群なら領域の大元である精霊王を無力化してしまえばいい。


 僕の決めていることの一つ、相手の切り札はなるべく切らせず(切らせる前に)に仕留める。


「はあぁぁ!」


 右手に神気を纏い、闇の精霊王に向けて振りかぶる。白く、仄かに輝く腕でそのまま闇の大精霊を殴る。


 後方まで吹き飛ぶ闇の大精霊を見ていたクロウが叫ぶ。


「アリエルぅぅぅぅうッ!」


 領域が解けたのを確認して、クロウに対してスキルを発動する。


「スキル【万物支配】」


 スキルを発動して、周りの酸素を無くす。

 クロウは何が起こったか分からないまま気絶する。


「やっぱりチートすげぇ……」


「ちーと……?」


「いや、なんでもないよ。それよりネロ、こいつどうする?」


「決めるのはあなたよ。契約するもよし、精霊界へ送還するもよし」


「それなら……、おい、おきろー」


 頬をペチペチして闇の大精霊を起こす。


「契約するからな」


「え?あ、え?」


「エル、あなたの力なら無理やり契約できるわよ」


「そうなの? じゃ、お前はシャドウだ。いいな」


「は、はい…」


 すると左手の精霊紋が輝き、しばらくしておさまる。


「これからよろしくね」


 その微笑みかけた顔にシャドウはとてつもなく恐ろしいものと契約したんだと悟った。





◇ ◇ ◇





 闇ギルドアジトを制圧した後、全員を拘束し王都まで連行した僕は今絶賛謁見中である。


「面を上げよ」


 その一言で顔を上げる。


「マルベル」


「は、今回、極秘裏に進めていた闇ギルド殲滅戦において、多大なる功績を残したアリエル・フォン・アルバートに子爵位と報奨金として大白金貨5枚を与える」


 ここでお金に関してを説明しておく。

 この世界には、石貨、鉄貨、銅貨、銀貨、金貨、大金貨、白金貨、大白金貨、黒金貨、大黒金貨がある。順に、


石貨→1円

鉄貨→10円

銅貨→100円

銀貨→1,000円

金貨→10,000円

大金貨→100,000円

白金貨→1,000,000円

大白金貨→10,000,000円

黒金貨→100,000,000円

大黒金貨→1,000,000,000円


 と言った感じだ。


「はっ、ありがたき幸せ」


「これにて謁見を終了する」


 もちろん、俺は帰れない。

 応接室に向かうと国王陛下と宰相であるマルベルさん、いつのまにか帰ってきていた父さんの姿もあった。


「エルくん、よくやったね。見事だよ」


「ありがとうございます」


「こんなに早く自立するとはなぁ。もっと甘えていいんだぞ?」


「きm……機会があればね」


 きもいっていいかけてなんかないよ?

 あー、ほら、ちょっと半泣きになったじゃん。


「本題に入らせてもらいます。アリエルくんは子爵位をもらったので領地を貰うことになると思います。ですが、君はまだ未成年。ということで学園を卒業して成人してから領地を運営してもらうことになります」


「分かりました」


「あとは家ですね。王都に1つ、領地に1つ家を建ててもらいます。あー、その分のお金は国から出させて頂きますのでご心配せずとも大丈夫です」


「そこまでして頂かなくても「大丈夫です」あー、はい、分かりました…」


「そのくらいでしょうか」


「あっ、そうそう。エルくん、公爵家のものと婚約するんだったら最低でも伯爵まで上げとかないと貴族的にできないよー」


「まだ誰と婚約するとか決まった訳じゃないです」


「え? サシャちゃんと結婚しないの?」


「ブッッ、ゴホッゴホッ、陛下!」


「ま、正直なとこエルくんなら些細なことでもそれ理由にして陞爵させるからたぶん出来ると思うけどね」


「そういうのはあまり口に出しちゃだめなんじゃないですか?」


「まあまあ、今日はこれくらいにしようか。エルくんも疲れてるかもしれないしね」


「よしっ、帰ったらお祝いパーティーだな!急いで帰るぞ!」


「いいね!それ僕も参加していいかな!」


「陛下はダメです。まだいろいろとしなくちゃいけないけ事があります」


「たまにはいいじゃん!息抜きも必要だよ!」


「陛下は息抜きしすぎです」


 その後も、陛下がギャーギャー騒いでいたが無視して帰路につく。


 家に着けばもちろんパーティーの準備を終わらせた家族が出迎えてくれた。その日もまた姉さんが「ご褒美のチューしてあげる♡」と言って迫ってきたがそこは我が妹のソフィ、決して侵略を許さなかった。


 そんな攻防をガン無視して僕は双子の兄妹たちを愛でていた。





◇ ◇ ◇





 翌日、朝食を食べ終えた僕は冒険者ギルドへ向かう。入ればまた騒がれるため転移でギルマスの部屋に直接とんだ。


「おはようエルくん」


「おはようございます」


「座って座って」


 促された場所に座る。


「まずは報酬金からだね」


「お金は謁見のとき貰ったはずじゃ」


「あれは報奨金・・・。国からのお礼的なやつで、こっちは報酬金・・・だよ」


 そう言って机の上に置く。


「大白金貨5枚だね」


「すごい額ですね。合計で黒金貨1枚分ですか」


「そうだね。で、まだ話は終わらないよ」


「分かってますよ。Sランクの昇格、ですよね」


「そう。実力的にはすでにS1ランクはあるんだけど、功績が足りない。今はS3ランクまでにしか上がらないね」


「十分ですよ」


「まあ、そういう訳で今日からS3ランクだ。今後の活躍を期待してるよ」


 そうして、7歳にして最速のSランクの仲間入りを果たしたエルだった。



 アリエルの伝説は続く……。





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