第14話 初デート

「きゃっ、エルくん、そこ、当たって、あっ」


な、なぜこうなった〜〜〜〜〜〜〜ッ///


〜3時間前〜


これは、精霊契約をした翌日の話である。サシャから「二人で遊びに行こ!」と誘われた僕は承諾し、二人で王都にでた。もちろん、離れたところに護衛として何人かついてくれている。


「エルくん!この服とかどうかな!やっぱこっち?いやでもこっちも捨てがたいかな...」


「サシャはどれを着ても似合うよ」


と言うと顔を真っ赤にした。


「そっ、そうかな!あ、ありがと。...へへ♡」


いや、正直これはお世辞ではなく本当のことだ。赤みがかった髪に整った顔立ち。幼いながらもスラリとして綺麗なスタイル。絶世の美女と言う言葉が似合う子である。そんな子はどんな服を着ようとも輝いて見えるのである。結局、可愛いは正義なのだ。

その後も服屋を数店舗周りちょうど昼をすぎた頃だった。


「少しお腹がすいてきたね。どこかの飲食店に入ろうか」


「そうだね!」


目についた飲食店に入って注文をし、待っているときである。


「おい、てめぇ!俺の肩にぶつかってきてその態度はなんだゴラァ!ぶっ潰すぞ!」

「てめぇこそなんだ!ぶつかってきたのはてめぇの方だろうが!殺すぞ!」


「(はぁ、店内で騒いで迷惑なやつらだ...ちょっと大人しくしてもらおうかな)」


そう思った時だった。


「上等だ、てめぇ生きて帰れると思うなよ!オラァァ!」


そう叫ぶと近くにあった酒の入ったグラスを思っいっきり横から手の甲で叩き割る。グラスは割れ破片がとぶ。その破片がサシャに向かってとんできた。


「ッ!危ないッ!」


「きゃっ!」


ガタガタガタッ

咄嗟のタイミングでサシャを押し倒し避けることが出来た。そして、冒頭に戻る。


「ごめん、サシャ。怪我はない?」


「え、ええ、大丈夫よ...あの、エルくん、そろそろどいてくれないかな?」


「あぁ、すまない」


すっ、と立ち上がりサシャを立たせる。そして、男達に向かって


「おい貴様ら、覚悟はできてんだろうな?」


とてつもなく、低い声で発した言葉は店の中まで飲み込む。スキルの殺気も使用したことからこの中で動けるものは、エル以外いなかった。


「あっ、カッ、たっ、たすげ」


「だまれ」


「ぐっ、うっ...」


二人にゆっくり近づいていく。その度に男達は顔が真っ青になっていった。


「何をしたか分かってるんだろうな?」


ゆっくり右手をあげ思っいっきり殴ろう、としたその瞬間...


「えっ、エルくんッ、だめッ!」


「ッ...サシャ」


「もういいよ、エルくん。落ち着いて?ね?」


サシャの声で我をはっきり取り戻した僕は、二人の方を振り向き


「次、こんなことがあったら...容赦はしないぞ」


「「ヒィッ!!」」


怯えながらこの店から全力で逃げ出していく。


「ごめん、サシャ。ちょっと血が上って...」


「ううん、いいの。私のことで怒ってくれたんだもん。ありがと、エルくん!嬉しかった!」


「ッ...うん」


そして、店の周りを見渡す。


「ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。とても、反省しております。本当に、申し訳ありませんでした」


どんな罵詈雑言を言われるんだろうか。そんなことを考えていたら


「兄ちゃんありがとよ!」「おかげで助かったよ!」「よっ、ヒーロー!」「感謝してるぜ!」


思いもよらない歓声をもらってちょっと困惑ぎみになっていた。


「エルくんは何も間違ったことはしてないのよ!だから、胸をはりなさい!」


「はは、なんで君が誇らしげなんだよ」


「エルくんの幸せは私の幸せよ!」


「ははっ、ありがとね。サシャ」


と、微笑みかけるとまたしても顔を真っ赤にしていた。


その後、店をでてからは王都を楽しんだ。そして、いい時間になってきた頃。


「(...つけられてるな)」


僕とサシャをつけてくる者がいた。


「(距離的にはそこそこ遠いとこだけど確実についてきてるな)」


──ヘンドリック伯爵家の者でしょうか──


「(どうだろうな。まあ、とっ捕まえて情報聞き出せばいいだけだ)」


──そうですね。人数は、四人ですか。マスター相手には少なすぎますね。あと、百倍はいります──


「(それ四百人になるからな!どう考えても多すぎだろ!)」


「どうかした?」


「いや、なんでもないよ。そろそろ帰ろうか。送ってあげるよ」


「え、いいの!やったー、帰りも一緒だ!」


警戒を怠らずにサシャと帰路につく。そのまま、ヴァーミリオン家までついていくも何もしてこなかった。


「じゃあね!エルくん!また今度会おうね!」


「うん、またね」


そう言い、サシャが帰ったところで


「さて、動こうか」


スキルの並列思考、高速思考、瞬時理解の三つを発動させた後に気配を消す。


──1人は、家の上。2人目は、歩道。3人目は、店内。4人目は、路地裏にいます──


「(分かってる。まず、路地裏からやる)」


瞬時に路地裏にいた四人の内の一人を無力化させる。その次は、歩道にいるやつだ。しかし、ここで残りの三人が一人やられたことに気づいたのか、一斉に離れていく。


「逃がすか!空間支配ッ」


その直後、どこに誰がいるのかを掴み神進歩法を使って一気に距離を詰めていく。あっという間に歩道にいたやつに追いつき無力化させる。あとの、二人も同じように無力化する。


「ふう、これで全員か」


──さすがマスター。こうもあっさり全員無力化させるなんて──


「とりあえず家に連れていくか」


四人を家まで連れていく。ちなみに、空間魔法でもある異空間に入れて連れて帰っている。さすがに堂々と四人を連行みたいな感じでは連れていけないからな。そして、父さんに全て話すと


「なんだと!?今すぐ地下牢に連れて行け。全て吐かせる」


と言っていた。僕も気になるからついていく。


「さて、どうなるかな」


本当に吐くかどうか分からないが、いざとなったら...


「いざとなったら、魔法を使えばいい...」


その時のエルの顔は今まで見たことが無いほどに、冷たいものであった。

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