第13話 精霊契約
翌日の朝、マリーのお姉さんであるライラが起こしてくれた。朝ごはんを食べる時に父さんから「しばらく王都にいるから見てきてもいいぞ」と言われたけど今日はやりたいことがあるのだ。それは...
「よしッ、精霊契約やってみるか」
そう、精霊契約だ。
ここで少し精霊について教えておこう。まず、精霊には魔法のように適正属性がある。属性の種類もだいたい同じだ。火・水・土・風・雷などなど。そして、精霊には強さの基準になる階級がある。上から、精霊王、大精霊、精霊だ。その中でも精霊の階級にはさらに階級がある。上から、一級精霊、二級精霊、三級精霊、四級精霊、五級精霊の五段階だ。精霊王には、各属性それぞれ一体しか存在しない。大精霊も凄く希少だ。歴史上、精霊王と契約出来たのは、この国の初代国王しかいないと言われている。
「精霊契約ってどうすればいいんだろうか。...とりあえず、スキルの精霊視を使ってと」
すると、ふわふわしている光が無数にあった。
「綺麗...」
するとだんだんその光が自分に近づいてくる。
「なんだ?...ん?ついてこいって?」
決して喋っている訳ではない。ただ、なんとなく考えていることが分かったのだ。そして、そのままついていくことにした。もともと外に出るのを許可されているから勝手にでていっても許されるだろう。
「外にでたけど、どこ行くの?」
すると、光がどこかしらに飛んでいくので自分の姿を隠した状態で空を飛び、ついていった。
「(さすがに街中で堂々と空飛べないよね...)」
10分ほどついていくと一つの大きな湖におりていった。すると突然、とてつもなく大きな気配を感じた。しかし、正体はすぐ分かった。
「君が、ミレア様の仰っていた人か」
現れたのは、人のような姿だけど、とても幻想的なオーラが出ている。全体的に水色で、可愛い、というより綺麗な女性と言った感じだ。
「君は?」
「私は、水の精霊王よ」
「精霊王!?それって精霊の中で一番すごい階級じゃないか...でもなんでこんなとこに?」
「私は、この国ができる前からこの湖にいるわ。あの人がここに来て以来ここを見せるのはあなたが初めてよ」
「あの人?...もしかして、初代国王様?」
「ええ、ここの湖は私が認めた者しか入れないの。だから、誰にも見つからないのよ」
「へぇ、凄いな。それより、なんで僕をつれてきたの?」
「それはもちろん、ミレア様に愛された方がどんな人か見てみたいじゃない?」
「あー...なるほどね。でも、僕はそんな大層な人じゃないよ」
「...ふふ、少し気に入ったわ。精霊王と聞いたら誰でも私を捕まえようとする。でも、あなたからそんな感情はない。でも、精霊と契約してみたいんでしょ?」
「え、分かるの?」
「まぁね、これでも精霊王だから。あなたがいいなら契約してあげるけど...どうする?」
「...そんなの決まってるよ。というより、僕からお願いしたいくらいだし」
「じゃあ決まりね。左手を出してくれるかしら」
「分かった。...これでいい?」
「ええ。あと名前もつけてくれないかしら」
「...じゃあ、ネロ、君は今日からネロだ!」
「ネロ...」
『名前?んー、じゃあネロ!ネロにしよう!』
「...ふふ、まさかこんな偶然が起こるとはね。」
「どうかした?...もしかして、気に入らなかった?」
「いーえ、とっても気に入りましたよ」
そう言うと、左手の甲の部分に軽くキスをした。すると、そこに何かの紋章のようなものが現れた。
「これで精霊契約は終わりました。この紋章は精霊紋と言って大精霊もしくは精霊王と契約した時のみ現れる紋章です。これからよろしくお願いしますね。ふふ♡」
「うん、こちらこそよろしく!」
その後、契約した僕は家に帰り自分の部屋に入る。
「はぁー、まさかいきなり精霊王と契約できちゃうなんてなー」
──マスター、私も頼ってくれていいんですからね?──
「おおっ、て大賢者か。しかし頼るって言ってもなー」
──精霊の扱い方、教えてあげますよ?──
「精霊の扱い方?それって精霊魔法のこと?」
──それもそうですが、もっといろんなことに役立ったりします。例えば、精霊王や大精霊などの高位の精霊と契約したならば下級精霊を使って情報収集をさせたりできます。下級精霊は力はないにしろ数が多いです。その数を利用して広範囲に情報収集できますし、精霊はどこにでもいますからいろんなところに行っても精霊視を持っていたとして怪しまれません──
「はぁ〜、なるほどねぇ。そんな扱い方もあるのか」
──とくに、今は情報収集をさせておいた方がいいかと思いますが?──
「...ヘンドリック伯爵家か」
──ええ、あの目は何をしてくるか分かりません。それに、馬車を襲ったのも気になりますし──
「だな。【精霊召喚ネロ】」
「喚ぶのが早くないかしら」
「ちょっとね、やってもらい事が出来たから」
「言ってごらんなさい」
「精霊を使って情報収集して貰いたいんだけど」
「分かったわ。具体的に何を調べた方がいいとかあるかしら」
「ヘンドリック伯爵家の情報を重点的に。あとヴァーミリオン家の馬車を襲った魔物は人為的な犯行か、またそれは誰の命令なのか突き止めて来て欲しい」
「了解したわ。みんな、行ってきて」
すると、周りにいた精霊達が一斉にでていった。
「もし、情報が集まったら念話で伝えるわね」
「分かった。ありがとうネロ【帰還】」
「どういたしまして──」
そう言い残すと、消えていった。
「精霊、めっちゃ便利だな...」
──これで、情報という圧倒的アドバンテージができましたね。向かうところ敵無しです!──
「だといいけど...」
何かが起こる、そんな予感が自分自身の中であったエルは、何があっても対処できるように、と気を引き締めた。
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ついに、明日から試験期間です。怖いです。非常に怖いです。母君の鬼のような顔が目に浮かびます...
と、とにかく、読んでいただきありがとうございました。次回も楽しんで頂けたらと思います。
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