第11話 お披露目会無双?②
〜闘技場〜
静寂に包まれた闘技場に乾いた音が響く。
「パチパチパチ、すごい、君すごいね。ほんとに一瞬でかたがついちゃうなんて」
この国の男性の平均身長よりも少し高く、整った顔立ちをした人が話しかけてくる。
「ありがとうございます。えーっと、あなたは...」
「僕かい?僕は、一応この国の王をやらせてもらっているものだよ」
「一応はやめてください。一国の王を務めているのですから」
「王様...、はっ、失礼しましたッ。国王様とは知らずに...」
「うん、それよりさっきの戦い見させてもらったよ。毎回、ああいう風に決闘にもつれこむから恒例行事みたいになってるんだよね。それでも、ここまで一方的な試合はそうそう起こらないけどね」
「はぁ」
「クラウドも元気にやってるみたいだね」
「ええ、元気にやっております」
「そんな嫌がらなくてもいいじゃないか」
「別に嫌がってませんとも」
...どうしたんだ、この二人。やけに親しげだけど。
「仲がよろしいのですね」
「ああ、そうと「それは、絶対ない」そこまで拒否しなくてもいいじゃないか、傷ついちゃうぞ?」
「そういうところなんですよ。大体陛下は、いつもいつもそうやって──」
「お二人とも、今はそんなしょーもないことで言い争ってる場合ではありません。これは決闘、つまりお互いかけているものがある。審判をやっているならば、最後までおやり下さい」
「ぐっ、正論を言うなマルベル...ふぅ、勝者、アリエル・フォン・アルバート!よって条件にそって財産半分の受け渡し、サシャ・フォン・ヴァーミリオンとの関わりを一切なくす!」
「ちょ、ちょっと待ったァァァ!」
なんだなんだ?急に大声出して近づいてきたぞ?
「これはこれは、ゴラン卿。どうされました?」
「こっ、これは無効だ!」
「はい?」
「これは、ドラウドが勝手に始めたことだ!私は、関与しておらんから金をだすことはしないッ!」
「ほう、この俺を前にしてもそのような事が吐けるか」
「貴様には関係ないッ!...ってこ、国王陛下!?」
「国王陛下にそのような発言、無視はできません。罰を受けてもらいましょうか」
「宰相閣下まで...も、申し訳ありませんでしたッ!何卒、お許しをッ...」
「うむ、ならばその態度に免じて...」
その言葉が聞こえた瞬間、ゴランが安堵の表情になる。
「財産の六割の受け渡しで収めよう」
それを聞いてゴランは、また絶望的な顔になる。
ちなみにゴランとドラウドは、ヘンドリック伯爵家である。それに、後から知るがその領地では、税がとても高く領民はギリギリの生活をしていて、高くした当人たちは、毎日贅沢なくらしをしていたようだ。
◇ ◇ ◇
「ガッハッハッ、さすがエルだな!よくやった!」
「本当にね。ありがとうエルくん」
「いえ、そんな感謝されることではありませんよ」
「ん〜〜〜、実に謙虚だなぁ。サシャ、絶対手放したらダメだぞ!エルくんだったらもう大歓迎だから!」
「お父様ッ!そ、そんな先のこと...でもいずれは.....」
「大丈夫?」
「ひゃっ、あ、うん!大丈夫だよ!」
「そう?ならいいけど。それにしても、ミリィさん達は...」
「サシャァァァ!大丈夫だった?」
「お、お母様。大丈夫です!エルくんが守ってくれたから」
「エルくん、ほんっっっとにありがと!それじゃあ...」
途端、ミリィさんから禍々しいオーラが溢れてきた。
「クラウド、相手はどこにいるのかしら?」
「えっ、あー、いやもう終わった事だからそんな事しなくても大丈夫だよ...」
「私が大丈夫じゃないの。私の気が済むまで叩き潰してやるわ...」
「(こっっっっわ!!じょ、女性の方がそんな、叩き潰すとか物騒な言葉言っちゃ駄目でしょ...)」
「こらミリィ、そんなことしちゃだめよ?」
「(おお、母さん!頼りになる!)」
「やるならもっとちゃんとしなくちゃ。拷問部屋用意してあげるわよ?」
「(前言撤回、駄目だわこの二人。止まんねぇ)」
「母さん、ミリィさん冗談は程々にね?」
「あら、冗談ではないのだけれど」
「もっとタチ悪いですよ!」
と、そんな会話を続けていると
「国王陛下のご登場です。」
あれだけ喋っていた人達も全員静まる。
「集まってくれて感謝する。今日の主役は、将来この国の力になってくれるであろう有望な子供たちだ。そして、今年は、我が息子のカインもいる。どうか、力になってくれると私も嬉しく思う。それでは、今日は楽しんでくれたまえ」
「よし、では挨拶に行こうか」
「挨拶?」
「ああ、毎回陛下が言い終わると上位貴族から挨拶に向かうのだ」
「へぇ」
そして、国王陛下の前に貴族達の列ができた。列に並んでない貴族も多数いることから今並んでいるのは全て上位貴族だと推測できる。すると後ろから...
「よお、さっきぶりだなアルベルト卿よ」
「む、これはこれは、先程ぶりですなガリア卿」
「見とったぞ、あの決闘。本当に強いんだなエルくんは」
「ありがとうございます。ガリア卿に褒めていただき光栄です」
「俺も見てたぞ!凄かったな、エル!」
「ありがとう、ドール」
「我が子が褒められるのは、父として嬉しいですな」
「ハッハッハ、そうであろうな!」
その後も会話をしながら順番がくるのを待っているとついに自分たちの番がきた。そこには、先程見かけた国王陛下と、その隣に王妃と思われる美しい女性の方、そして先程紹介されたカインもいる。
「陛下、リーファ王妃、カイン王子、この度はおめでとうございます。こちらは、三男のアリエルです」
「アリエル・フォン・アルバートです。本日は、お招き頂き感謝致します」
「うん、今日は楽しんでいってね。でこの子が」
「カイン・フォン・グランデです。アリエルくんとも親しくなれたらと思ってます。どうか、よろしくお願いします」
「僕のことは、エルでいいよ」
「では、僕のこともカインと呼んで下さい!」
「うん、よろしくねカイン!」
「ところで、アルとベルクーラは元気にしてるかい?」
「ああ、元気にやっているぞ」
「そうかい。それにしても、また君たちはとんでもない子を連れてきたよね。ホント呆れちゃうよ」
「それは、褒め言葉としてもらっておくぞ」
「ああ、ぜひそうしてくれ」
え、父さんそんな軽口でいいの!?
「ああ、いいんだよ。僕達は、学生の頃からの親友でね。他にもクラウドやミリィとも仲良しなんだよ」
「ミリィはともかくクラウドはどうかな」
「いやぁ、クラウドは僕に対してだけツンデレになっちゃうからねぇ」
「それを自分で言えるのが凄いわね」
「なになに?嫉妬しちゃった?」
「べ、別にそんなことは、なくも、ないけど...」
「ここでイチャつくのはやめてもらえるかしら」
「べ、別にイチャついてないよ!ベルは、意地悪だよ!」
「冗談よ、リーファ。ふふっ」
「ほらぁ、やっぱり意地悪!」
「そろそろだね。じゃあ、今日は楽しんでね!」
「エル、また後で話そう!」
「うん、また後でね」
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