Mission08: 蹂躙、敵艦隊

「全機、着艦したか」


 その頃。CICではMが不敵な笑みを浮かべながら、ゲルゼリアの指揮を執っていた。


「敵艦の艦種と内訳を」

「はっ! 駆逐艦が4、重巡洋艦が1、空母が1、イージス艦が1の、計7隻です!」

「了解した。ポートダックに、本艦の後方へとどまっているよう通達しろ」

「了解!」


 通信手がポートダックに通達するのをしり目に、Mは指示を続ける。


「1から5番主砲、並びに1から5番第一副砲、加えて1から8番第二副砲用意。照準を付け次第、合図で一斉砲撃せよ。撃ち返す暇も与えず全て沈めろ。観測手、距離はどのくらいだ?」

「およそ25,000です!」

「ならば通じるな。起動する砲塔は先ほど伝えた通りだ。帝国の艦隊に慈悲はいらん、叩き潰せ」


 Mの淡々とした命令を受けてから数秒後、ゲルゼリアの船体の一部が展開した。

 流麗な船体からは想像もつかぬ無骨な砲台が、18基同時に姿を現す。


「距離算定、予測移動範囲算定完了!」

「敵針路変更無し!」

「発射準備完了!」


 凶悪なまでの暴力を、ゲルゼリアが秘める。

 全ての準備が終わったのを確かめたMは、最後の号令を発した。


「撃て」


 わずか二文字の命令で、18門の砲台が一斉に火を噴く。

 実弾、ビーム砲を問わず、7隻いる艦隊へ飛来する。


 25kmという距離から放たれた砲弾は、回避も防御も許さなかった。敵艦が気付くよりも先に着弾し、自動で展開される光の防壁は、しかし225mmと500mmの実弾・ビーム砲を止めるに至らない。

 駆逐艦に至っては200mmのレールガン一発で、あっさりと轟沈した。駆逐艦が守っていた重巡洋艦、空母、イージス艦もまた、運命を共にする。


 ゲルゼリアの一斉砲撃が終わった後には、海の藻屑ならぬ空の鉄屑がバラバラと、大地に落ちていった。


「効果を確認せよ」

「全敵艦、撃沈です。レーダー反応、ゼロ」


 淡々とした報告のみが進められる。


「了解した。針路を再びメイディアに向け、ポートダックに随行する」


 砲撃の結果を確かめたMは、もう用はないとばかりに次の指示を出した。

 あれでも規模としてはそれなりの艦隊であるのだが、ゲルゼリアの前には児戯も同然であったのだ。本格的な交戦距離に入る前に先手を打たれた事実は、「相手が悪すぎた」と言う他ない。




 ともあれ脅威を全て排除したゲルゼリアは、再び船体を旋回させ、ポートダックに速度を合わせてメイディアへと向かい始めたのであった。

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