Mission06: 部隊合流

「ッ、この……!」


 シュヴァルリト・グランは胸部装甲を左腕でかばいながら、右前腕部に固定されたビーム砲で反撃する。

 しかし撃墜出来るのは、一度の射撃で1機が限界だ。それも当たればの話で、外せばその分時間を空費してしまう。


 そうしている間に、ポートダックへの被弾が増えだした。輸送艦とはいえメルダー合金という強靭な装甲を有するポートダックはAdvancerアドヴァンサーに比して巨大で、それだけ装甲も厚いのだが、複数機に狙われてはいつ撃沈するか分かったものではない。それに艦全体が装甲されているわけではなく、たとえばエンジンなどはAdvancerアドヴァンサーの携行火器でも危険である。


「まだか……!」


 ポートダックの被弾がさらに増える。幸いまだエンジン部への被害は見られないものの、長引けばAdvancerアドヴァンサーの数が少ないゼルゲイドたちが不利だ。

 と、突如無線が繋がった。


『エクスカリバー、高度を100m下げろ!』


 プロメテウス1ワン、パトリックからの通信だ。


「了解!」


 ゼルゲイドは反撃にキリを付け、即座に機体を垂直に降下させる。Advancerアドヴァンサーの機関に用いるエネルギー源の特性により、ブースターによる推力に頼らずとも高度を自由自在に操れるのだ。


 一瞬遅れて、ゼルゲイドのいた付近の空域を弾丸の嵐が吹き抜ける。ポートダックに攻撃を仕掛けようとしていた敵のリクシアスを、4機まとめて屠った。


「済まない、待たせてしまった。よく耐えてくれた、エクスカリバー」

「何とか被害は食い止めました。ですが敵艦隊が接近中です、Advancerアドヴァンサーをすぐに片付けてゲルゼリアの露払いを」

「承知した」


 最低限の報告を済ませると、Mからの無線が割り込んでくる。


『全艦載機並びにポートダック、及びその護衛機に通達。本艦は180度旋回し、敵艦隊に打撃を与える。敵Advancerアドヴァンサーを掃討しつつ、巻き込まれないよう距離を取れ』


 ゲルゼリアの船体は極めて長大、かつ重量がある。扱い方によっては大質量兵器にすらなりうる船体が旋回するのだ、巻き込まれればAdvancerアドヴァンサーはもとよりポートダックも危険である。


 シュヴァルリト・グランをはじめとしたAdvancerアドヴァンサー隊は、1機、2機、2機、2機の組み合わせに別れ、前進しながらの制圧と後方の支援射撃を分担した。言うまでもなく、帝国のリクシアスに優るシュヴァルリト・グラン、グリンドリン、リクシアスが前進制圧、劣るアルガム・アレスとアルガムは支援射撃だ。


 迫りくる敵のリクシアスを、シュヴァルリト・グランとプロメテウス隊は次々と撃墜していく。

 防衛と性能の観点で、あまりアルガム・アレスとアルガムからの距離は取れなかった。必然、迎撃を主とする戦い方になる。


 ともあれ、Advancerアドヴァンサー部隊が稼いだ時間によって、ポートダックはゲルゼリア周囲から離れる時間を稼ぐことが出来た。

 あまり速いとはいえないこの艦だが、それでもゲルゼリアと十分な距離を取る。


 それを見たゲルゼリアは、既に旋回準備を整えていた。


「全味方機とポートダック、旋回半径から離脱しました!」

「了解した。ただちに反時計回りに180度旋回し、艦首を敵艦隊へ向けろ」

「はっ!」


 ゲルゼリアは舷側げんそくに取り付けられたブースターを左方のみ噴射し、旋回を行う。ブースターの出力は凄まじく、巨体はみるみるうちに角度を変えていく。


「旋回やめ!」


 やがて望み通りの角度に艦首を向けたゲルゼリア。圧倒的な巨体は、わずか10秒で旋回を終えた。

 Mはすぐさま無線を繋ぐ。


「全機へ通達! 全ての敵Advancerアドヴァンサーをせん滅次第、本艦に着艦せよ!」


 無線と同時に、ゲルゼリアは搭載している全CIWS近接防空システムといくらかのVLS垂直発射ミサイルを展開する。ゼルゲイドたちへの火力支援を行うつもりだ。


 それを聞いたゼルゲイドは、がぜんやる気を出していた。


「あと何機だ!?」

「およそ18機ほどですわ、ゼルゲイド様!」


 アドレーネは広域レーダーを見ながら、敵Advancerアドヴァンサーの残数を伝える。

 と、プロメテウス2ツーからシュヴァルリト・グランに無線が繋がった。


「おい何やってんだ! 敵機が抜けたぞ!」


 ゼルゲイドが慌てて視線を巡らせると、1機のリクシアスがアルガムに狙いを定めていた。


「待ちやがれ……!」


 急行するゼルゲイド。

 しかし一瞬速く、リクシアスの火器が弾丸を放つ。アルガムは別の敵へ意識を集中しており、回避にも防御にも移れなかった。


「ぐあっ……!」


 無線越しに、アルガムのパイロットの悲鳴が聞こえる。

 その様子を間近で見ていたゼルゲイドは、激昂した。




「何してんだこの野郎……!!」

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