#07  聖なる夜は、いかがお過ごしでしょうか。

 12月24日の深夜、もうすでに、クリスマスがやって来た。海璃を起こさないように、静かに音を立てないように、部屋に忍び込む。

 喜んでくれるかさえ分からないプレゼントを整理された勉強机に静かに置いた。右奥に視線を向けると、海璃が眠っているベットが見えた。そこから微かに、呼吸音が聞こえてくる。

 眠っている姿を見ようと思ったが、今日は起こしてしまうのではないかと思い、そのまま、開けたドアへ向かい、部屋を出た。

 そんな様子を伺っている芽衣だったが、星也がドアから出る少し前に、寝室に行ってしまった。電子キーボードを勉強机に上に置くときに、問題集も一緒に貰おうとしたけど、『もういい』と芽衣に言われて、プレゼントしないことになった。

海璃の部屋の向かいにある寝室に、入ると、芽衣はベッドに入っていた。

「おやすみ」

芽衣の声が聞こえてきた。もう今は、何も聞かないでという雰囲気が漂った気がしたので、おやすみと芽衣の背中に向かって言って、眠りに入ることにした。

 2日前に、クローゼットに入れてプレゼントのことを尋ねられた時に、何を言われるのだろうと心配はしていた。返品してきてとか言われたら、どうしようとか、想像していたが、『そうなんだ』という意味深な言葉を言われて不安になった。ただ、プレゼントすることを止められることはなかったので安心はした。

寝ようと必死になったが、なかなか、寝付けなかった。ベッドの横に置いてある時計を見ると、1時30分を表示していた。

「ねえ、星也、起きてる?」

「起きてるよ。どうした?」

芽衣も眠れていなかったもあって、声が上ずってしまった。ただ何か不安がよぎり始めている。

「明日、もう今日かな、言おうと思ってたんだけど、あのさあ、」

芽衣は言葉を詰まらせながら、星也に、背を向けてままで、話している。平常心を保つように、「なに?どうしたの?」とゆっくりと声を低めに言う。


「お腹に赤ちゃんがいるみたい…」

「えっ、妊娠したの?」

「うん、11週目だって、もうすぐ、3ヶ月になるみたい」

「あぁ、そ、そうなんだ。ありがとう」

芽衣の身体を抱き寄せていた。



いつ眠ってしまったのだろう。朝の5時のアラームで目が覚めた。芽衣に腕枕をして眠っていた。ゆっくりとその手を抜いて、起き上がって、洗面所に向かう。ニヤついて顔が鏡に映る。今、渡そう。歯を磨いて、顔を洗って、寝室に戻る。

 芽衣をこするように、「おはよう」と言われて、後ろから抱きしめて、今日の夜に渡そうと思っていたネックレスを芽衣の首に付けた。

「ありがとう。クリスマスプレゼント?」

「うん」

芽衣は満面の笑顔になっていた。

「赤ちゃん、お腹にいるんだよね」

「いるよ。夢だと思ったの?」

「ああ。本当にサプライズなプレゼントをもらった気分だよ」

「それは良かった。朝ごはんの準備するね」

芽衣は寝室から出て去って行った。


「パパ、サンタさんが、電子キーボードをくれたよ」

リビングで、大はしゃぎしている姿を見て、安堵した。選択肢は間違っていなかったのだろう。


夜は、家族3人ですき焼きを囲めたらなと思ったが、唐揚げやローストビーフなどが並んでいた。

これも、この家族の形かもしれない。芽衣の胸元には、朝付けたネックレスが光っていた。







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聖なる夜に、贈りたい 一色 サラ @Saku89make

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