#05 プレゼントは白紙ですか?

  郊外に多くの一軒の家が立ち並んでいる。その一軒のインターホンを鳴らすと、「はーい、少々お待ちください。』と、明るい声が聞こえきた。しばらくすると、ドアが開いて「いらっしゃい」と瀬古の奥さんが迎えてくれた。芽衣が「この度、お誘いいただきありがとうございます。」と挨拶したので、何となく星也と海璃も一緒に軽く頭を下げた。

「いえいえ、どうぞ、中に入ってください。寒かったでしょう。」奥さんに導かれるように、玄関を上がると、ただ広いリビングが案内された。


 金曜日の昼食の時に、瀬古から『日曜日に、食事をしないか』と誘われて、本日は家族3人で、瀬古の家を訪れることになった。ただ金曜日に、海璃からの手紙を芽衣から受け取ったが、それは何も書いていない状態だった。


 海璃を挟んで3人で座っても余裕のあるソファに腰を掛けた。芽衣は座る前に、奥さんに、「すみません、つまらないものですが、みんなで食べてください」と、瀬戸家に来る前に、立ち寄った店で買ったケーキを渡していた。

 隣にいる海璃に方を見ると、なぜか部屋の奥の方を眺めていた。その視線の先にあったのは。ピアノだ。

 「ピアノが気になるの?」と海璃に女の子が話しかけていた。「朱里あかりどうしたの?」と瀬古の奥さんが様子を伺うように話しかける。

「この子が。ピアノを眺めていたから」

瀬古の娘は、確か、海璃より2つ上の10歳で小学4年生のはすだ。

 海璃は遠慮がちにうなずいて、すでにソファから立ち上がっていた。

芽衣が「ごめんね。海璃はピアノ弾けないの。気にしないで」と海璃の元に行こうとするも、奥さんが「興味を持つことは大切ですし。おいで」と手招きをした。

 海璃と共に朱里も一緒にピアノへと歩いて行った。そして、海璃が椅子に座り、瀬古の娘がピアノの蓋を開けて、少し後ろに下がった位置に立った。

 海璃が鍵盤に触れようとすると、「海璃!やめなさい」芽衣が、声を荒げるように言った。星也は「大丈夫だろう」と、芽衣は撫でめようとしたが、どこか目が血走っているような顔で、海璃を睨んでいる。

 大人のざわめきを気にもせず、瀬古の娘に促されたのか、海璃はピアノの鍵盤に指で押していく。どこかで聞いたことのある音色が聴こえてきた。

 「海璃って、いつからピアノが弾けるんだ?」と隣にいる芽衣に話しかけたが、海璃を睨みつけているままで、反応がなかった。それにピアノが弾けることに 全く驚いる様子もなく、知っているようだった。

瀬古の奥さんは驚いている様子で、

「海璃くん、『カノン』弾けるんだ。どこかで習っているの?」

「習ってないよ。それにこの曲しか弾けない。」

 そして、海璃は星也たちの元に向かってくるが、芽衣が不機嫌そうなので、足取りは重そうで、ゆっくりと歩いていた。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る