#02 プレゼントは何が欲しい?

 リビングには夫婦だけになって、このタイミングで言うかと思って、

「あのさ、25日の夕食をすき焼きを作ってくれない?」

「なんで、すき焼き?」

やっぱり、不思議がられることは分かっていた。

「子どもの頃、クリスマスの当日は、すき焼きだったから」

「ふ~ん、クリスマスにすき焼きなんて、普通は食べたりしないよね」

「まあ、そうだと思うかもしれなけどさ。作ってくれるの?」

「少し、考えさせて。でも、今年は一緒に過ごせるんだね」

「ああ、そうだったの?!ごめん」

 過ごしたかったなんて、知らなかった。芽衣はクリスマスのようなイベントを海璃に禁止していると思っていた。それに、あまりにも勉強モードな感じだったので、何もしないものだと思い込んでいた節もある。


「そういえば、海璃のクリスマスプレゼントってどうした?」

「もう買ったわ。算数と国語の問題集。」

「そうなもの欲しいがっている?」

「直接は言ってないけど、勉強は裏切らないでしょう。」

「まあ、裏切らないけど…」

 クリスマスプレゼントが問題集か。なんか、嫌だな。確かに勉強は大事だけど、クリスマスのプレゼントとは、玩具などで遊べるものではないのか。

 星也が子どもの頃、クリスマスプレゼントにはいつも欲しいものを貰えるように、サンタに手紙を書いていたことを思い出した。

「今年は海璃に俺もプレゼントを贈りたいんだけど…」

「なんで?」

「いいじゃん。とりあえず、サンタさんに、欲しいものを手紙に書くように海璃に言ってよ」

あまり乗り気じゃないようで、芽衣は難色を示している顔が浮かんでいる。

「別に書かせることは、いいけど、何でそんなこと言い出すの?」

「えっ、何でだろう。だぶん、イルミネーションを見たからかな…」

 まあ、本当は、子どもの頃に、親たちにしてもらったことがきっかけだろう。母親が11月の終わりごろに、『サンタさんに手紙を書いて』と言われて、欲しい物を紙に書いて、七夕の短冊のように、クリスマスツリーに飾っていた。そしたら、朝起きたら、そのツリーの下に、プレゼントが置かれていた。それを妹と25日の朝に早起きして、大騒ぎして、喜んでいたことを思い出した。

「ふ~ん、まあいいけど」

何となく納得してくれた様子なので、安堵した。

「ママも欲しいものがあれば、手紙書いてね」

「わかった」

芽衣を乗り気にさせることには成功したみたいだった。



寝室の電気を消して布団に入ると、隣で寝ていた芽衣が

「パパ、そう言えば、手紙を書いたら、その手紙どうするの?」

「サンタさんに渡すからママが預かるねとか、言えば大丈夫じゃない?」

「わかった。そうする。なんで、今年はそんなこと、本当に、なんで言い出したの?」

芽衣は、イルミネーションだけでは、納得できなかったみたいだ。

「ああ、俺が昔、親にしてやってもらえていたこと思い出して、何となく、やってみたくなったんだよね」

 子どもの頃に、母が、12月初めくらいにいつも『サンタさんにプレゼントのお願い書いて』って、欲しいものを紙に書いて、七夕の短冊のように、ツリーに飾っていた。そしたら、クリスマス当日に、ツリーの下にプレゼントが置かれていた。

「そうえば、芽衣は、どんなプレゼントをもらっていたの?」

「私は毎年、本だったったな。絵本もあったし、辞書や辞典の時もあった。」

「今も本を読むの好きだよね」

「好きなんだけど、私が好きなのは小説。物語が書かれているもの。親が買ってくれた本は、勉強に関する参考書的なものが多かったかも。辞書や図鑑とかもあったな。そういば、クリスマスに欲しいものを聞かれたことないかも…もう、寝よう。おやすみ」

芽衣は星也に背中を向けてるのに、寝がえりうって、眠りについてしまった。


「おやすみ」



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