第21話 幼馴染来襲
「ステータス」
白銀宮の自室のベッドに寝転がって俺はステータス画面を開いた。
【隼垣涼一郎】【男】【レベル:78】【職業:無職】
【STR:1637】【VIT:1328】【INT:765】【RES:688】【DEX:1029】【AGI:1155】【LUK:15】
【スキル:異性とキスすると3分間だけ無敵】
「……やっぱ、けっこうレベル上がってるな」
表示された数値を見て呟く。
レベル78。アドラスと戦う前、3だったレベルが一気に75も上がっている。
どうやらアドラスは相当強い魔人族だったみたいだな。取得経験値にプラス補正をかけるスキルが幾つか自動発動していたのもあってこの伸びのようだ。
スキルの代償が終わって動けるようになったとき感じた違和感の正体はこれか。やけに体が軽く感じると思ったんだよな。
STRが10倍以上になっている。4桁ってそれなりに良い数字じゃないか?
STRの数値が上がっても、見た目にはあまり反映されないらしい。ちょっと期待したんだが全身が筋肉マッチョになっているわけでもない。
まあ、たぶん俺よりステータスが高い親父も別にマッチョってわけじゃねーしな。中性脂肪を気にするどこにでもいるおっさんだ。
ステータスが俺の運動神経にどこまで影響を与えているのか気になるが、試すのは明日にしておこう。もしかしたら、今なら皆月にも100メートル走で勝てるかもしれん。あいつ、普通に俺より速いんだよ……。
「それにしても、まさかあいつらまでこっちの世界に来るとはな……」
間に合ってよかった。もしも親父から仕事に付き合えと言われていなかったら、杏璃が残した合鍵を見つけていなかったら。そう思うだけで胸がギュッと締め付けられる。
親父も言っていたが、この世界は危険だ。今回の件でようやく理解した。
日本のように交通事故や病気に気を付けてさえいれば長生きできる世界じゃない。
ある日突然、理不尽に命を奪われる。何もしていなくても、どれだけ気を付けていても、理不尽はいつ襲ってくるかわからない。そんな世界なんだ。
……親父は明日、元の世界に〈ゲート〉を繋げると言っていたな。そしたら、あいつらとはしばらくお別れだ。
俺も帰ろうか悩んだが、こっちの世界に居ることにした。
親父やユリア、ソフィアさんともう少しだけ家族の時間を過ごしたい。
まだ、ソフィアさんとは距離もあるからな。せめて「母さん」と面と向かって言えるようになるまではこっちに居るつもりだ。
だから、俺はあいつらを見送ることになる。寂しいかと聞かれれば寂しい。小学校の頃からほぼ毎日顔を合わすか言葉を交わしてきた間柄だ。それが急になくなれば、喪失感もひとしおだろう。
でも、残ってくれなんて言えねーしな……。二人の小父さんと小母さんも心配してるだろうし、あんな目にあったんだ。こんな世界、怖くてすぐに帰りたいだろう。
確か隣の部屋に二人で泊まっているはずだが、今も心細くて震えているかもしれない。ちょっと様子を見に行ってやったほうがいいかもな……。
なんて思ってベッドから立ち上がった時だった。
ドンドンドンっ! と部屋の扉が叩かれた。な、なんだ……?
「りょー君、遊びに来たよー!」
「居るんでしょ、涼一郎! さっさとこの扉開けないと蹴り破るわよ」
「……まったく震えちゃいねぇ」
普段と変わらないあいつらだった。
「今開けるから蹴り破るのは勘弁してくれ」
部屋の扉を開ける。その先にはやはり皆月と杏璃の姿があった。
ただ、予想外だったのが二人ともネグリジェを着ていたことだ。ユリアかソフィアさんにでも借りたんだろうか。
皆月は水色、杏璃は薄黄色のネグリジェで、なんつーか……。
「どうよ、涼一郎。感想はないのかしら?」
「似合ってるかなぁ、りょー君?」
皆月は自信満々に、杏璃は少し恥ずかしそうに尋ねてくる。
こういうとき、俺の許されている返事は一つなんだよなぁ……。
「二人ともめちゃくちゃ似合ってる。すげーかわいいよ」
「はいはい知ってる知ってる。お邪魔するわよー」
「わーい、りょー君に褒められちゃった! お邪魔しまーす!」
こいつら褒められ慣れていやがる……!
少しはユリアのような恥じらいを見せられないんだろうか。
いやまあ、めちゃくちゃ似合ってたしめちゃくちゃかわいいのは確かなんだが!
もっとこう…………って、
「おいこらまだ招いてねぇだろ!」
俺が振り返ると皆月は既にソファに座ってくつろいだ様子で、杏璃に至っては俺のベッドにダイブしていた。
「わーっ、みなちゃんこのベッドふかふかだよ!」
「あたしたちの部屋より全体的に豪華に見えるわね。さすが王族様」
「お前らなぁ……」
いったい何をしに来たんだよ。……ったく。
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