第38話 他の行事の打合せも終わり

 他の行事の打合せも終わり、今日は早めのお開きとなった。

 俺と茜が帰ろうとすると、一覇に呼び止められた。

「まだ、時間が早いんだから、喫茶部でお茶でも飲みませんか?」

「うちの喫茶部で、ですか?」

「あっ、大丈夫です。支払はわたくしの学生証で。それよりも節分祭について少し打合せを」

「なるほど、だったら承知した」

 そして俺たち九鬼神を入れた四人は、喫茶部でお茶をすることになった。


 喫茶部は人もまばらで、高級なテーブルセットに腰掛けると、さっそく一覇は周りに話を聞かれないよう空気を遮断する。


 テーブルには、紅茶と高級そうなケーキ。有名パテシェが作ったものだそうだ。

 俺は、一口、ケーキを口にする。

「なるほど、ハチミツを使って、この甘さを出しているのか。それに、このフルーツジャム、洋ナシの裏ごしと……」

そうヒーローになってから、俺は料理にうるさい。この味もきっと再現できるだろう。

「征哉、うるさい。何をぶつぶつ言っているのよ。肝心の話を始めるわよ。まずは次の鬼は、かなりの確率でこの学園に出ることになりました」

「そうだろうな」

 俺は、一覇の話に相づちを打つ。

「という事は、その準備を始めなければいけません」

「結界を張るってことでいいのかな?」

 今度は一覇の言葉に茜が尋ね、再び一覇が言葉を返す。

「そうなりますね。ただ、今度は舞台近くにかなり大勢の生徒たちが、近寄ることになります。私たちもその舞台にいることを考えますと、様子を見るためにも、広いグランドに舞台を作って、そのグランドの端に結界を張るしかないわね」


「俺、去年の様子を知らないから聞くんだけど、時間や参加者はどんな感じなんだ?」

「征哉って、ホント仕方無いわね。時間は放課後、参加者は、そうね全校生徒の半分くらいかしら」

「という事は、五〇〇人ぐらいってことか」

「そう、それだけの人数を守りながら戦うことになります。ヒーロー冥利に尽きますね」

 一覇はにやりと笑っている。

 一覇、ヤル気になるのはいいが、守り切れるかどうかわからないんだぞ。実際、結界は乾鬼の時は破られたんだ。一覇が本気で中止する決断をすれば、彼女のスキルで中止にすることは可能だったはずなのに。

 こいつ、実はヒーローになりヒーローらしく振る舞うことに憧れている。

 俺は観念し、ヒーローらしく振る舞う覚悟を決めるのだ。



 その後、学校側から生徒会に要請があり、節分祭は、第一体育館で行われることになった。しかも、グランドに結界を張ることも禁止された。どうやらあの文化祭の出来事で、いくら演出とはいえ、危険すぎるとなったのだ。学校側は節分祭の演出で、本当の鬼を呼び出し、それを成敗するとかってに勘違いしているようだった。


 その通達を受け取った生徒会は、しかたなくその通達を了承する。

 そして、放課後、俺たちは再び、喫茶部でケーキセットを食べているのだ。

「おい、一覇。どうすんだよ?」

「仕方ありません。事態はさらに厳しくなりましたが、こっそり第一体育館の周りに結界を張りましょう。中にいる生徒たちは、わたくしたちが死守するという事で」

「それって、凄く難しいことです」

 一覇の言葉に、茜が異論を述べた。

「茜のいう事はもっともだ。八鬼だけじゃなく、十二支鬼もいるんだろう」

 すると、それまで黙っていた九鬼神が口を開いた。

「うむ。次の時空の結界が破れるとしたら、順番的には、坤鬼(こんき)じゃろうな。ならば、精力を吸われて命を落とすことになろうな。だが、その前に心が死ぬかもしれんがな」

「なんだよ。心が死ぬって?」

「いや、わらわの口からはいえん。ほら、一応見た目は小学生じゃし」

「なんだ、その小学生宣言は?」

「とにかく、わらわの口からは言えんのじゃ!!」

 そう強く言うと、そのまま九鬼神は口を一文字に結び黙り込んでしまった。

「まあ、坤鬼を結界内におびき出して、五〇〇人を守りながら、戦うでいくぞ!」

「「おう!!」」

 俺の言葉に、一覇と茜が拳を突き上げる。

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