第23話 俺は今日の外出は一覇の驕り
そうして、俺は今日の外出は一覇の驕りで、社会勉強をさせてもらったと満足していた。それで、「九鬼神に、夕飯をどうしようか? まだ小腹が空(す)いた程度だし、カップラーメンでもいいか」と、尋ね、九鬼神が大喜びしているところに、一覇から携帯に電話が入った。
「もしもし、ちゃんと九鬼神様にご飯食べさせている? 育ちざかりの子にジャンクフードなんか食べさせたらダメなんだからね」
「ああっ、大丈夫、大丈夫。いま飯、何にしようか考えていたところだから」
「そう、それなら九鬼神様にはお金を持たせているから、欲しい物は与えてあげてね」
「わかった、わかった。用がないならもう切るぞ」
「あの……。さっき言えなかったから…………」
「うん、なに?」なんか間が長いんだけど。
「昨日は、ありがとう」
そう言うと、電話が切れた。
そして、カップラーメンに熱湯を注いでいる所に、今度は、茜から電話が入る。
そして、尋ねられる九鬼神の食事。そして、間が開いたところで、昨日のお礼。思わず俺は、デジャブーを感じてしまった。
なんなんだ一体。
その後も、九鬼神の生活に合わせるように、「お風呂に入れた?」「髪の毛、乾かした?」「別々の布団を敷いてあげた?」「早く寝かせてよ?」「お休みなさい」と同じ内容の電話が一覇と茜から入ってくる。
それで、九鬼神が気になるのかと思って、電話口に出そうとすると、「いい」って電話を切ってしまうんだ。
俺に電話を掛ける口実に九鬼神を使っている。電話口から伝わる空気、この二人、俺のスキルを忘れているのか? 口に出さなくても出来上がってしまう場の空気。俺はあえて気づかないふりをして話を合わせている。
一覇のやつ、会話に頭を使えよ。俺ができることじゃあないと、一覇の気持ちに合わせてスキルを上げてやれないじゃないか?
これは、倦怠期で会話が無くなった夫婦がなんとか会話を成立させようと、子どもの話題でお茶を濁すのとは違うだろう?
これは、もっと甘酸っぱい何かだと分かって、俺は二人に対して気恥ずかしくなる。
「やっぱ、無理。一覇や茜の気持ちに合わせるなんて、やっぱ、無理だ!」
俺は叫んで、真っ赤になった顔を誰にも見られないように、布団を頭から被るのだ。
そうこうしている内に月日は流れ、師走の声が聞こえ始める。
九鬼神は、鬼都学園初等部の制服を着て、俺と一緒に通学し、一日中、生徒会室で過ごしている。なんか俺と同じで、一覇に場の空気を作って貰ってそれで空気になることができるらしい。
そして、今のところ八鬼の出現はなく、平穏無事に日常を過ごすことができている。
九鬼神の話では、八鬼の封印は、一か月ずつずれるように、封印したらしい。という事は、一一月の始めに、一一月の坎鬼と一二月の震鬼が出たという事は、今度は、一二月の終わりごろから一月のはじめ頃になるという事なのだろう。大体の出でくる時期が、予想できるのは助かるが、一覇のように封印解呪の儀式があれば、それもどうなるか分からない。
しかし、封印解呪の儀式など、一覇以外はきっと出来ないだろうから、おおよその予想に狂いはないだろう。
次の戦いは元旦前後、そう考えて一覇と茜はレベルアップの修行に余念がない。
特に変わったのは一覇だ。
週に一回開かれる生徒会役員会。この時期、鬼都学園には、OBたちから寄付金が集まってくる。企業や個人の節税対策なのだろうが、生徒たちの中枢を担う生徒会にも莫大な寄付が集まっている。
それに対しての領収書や礼状、そして予算の割り振りなど、生徒会も結構忙しく働いているのだ。
それに、対する一覇の指示が明らかに変わってきているのだ。
大まかな指示を一方的に出すのではなく、些細なことまできめ細かい指示をだし、まあ、俺しかいないのだが、質問や意見を調整し民主的な場の空気を作り上げているのだ。
そして、これは毎日掛かってくる一覇からの電話でも同じなのだ。
そうやって、俺を場の空気に従わせることで、一覇と俺のレベルは少しずつ上がっていく。
茜も同じように、毎日、九鬼神に錬成の特訓をしてもらっている。九鬼神の話では、強化、魔素の付与の段階から、変質、変形の錬成も身に付けつつあるという事で、すでにレベル三五ぐらいに上がっているらしい。
ちなみに俺もレベル三五、一覇はレベル二五といったところらしい。
そんな風に過ごすうちに、世間はクリスマスムード一色になっていた。
鬼都学園の冬休みは、他高と比べて早い。期末試験が終われば、すぐに、冬休みに入る。
ええところの子息である鬼都学園の生徒たちは、冬の間、海外で過ごすことが多いためなのだ。海外と言っても、芸能人ご用達のハワイじゃないぞ。スイスやモナコ、割と世界のセレブが出かけて行くところなのだ。
まさか、お前ら、家族ぐるみでマネロン(マネーロンダリング)をしているんじゃないだろうな? まあ、羨ましい限りなんだが。
ところで、休みになっても、生徒会役員は学校に出てきている。来年度の部活への予算割が本格的に始まるのだ。部からの要望は、三学期から始まるのだが、何せ予算総額は三億円。いろんな部が全国大会にしょっちゅう行くみたいだが、贅沢な設備に豊富な資金、本人たちの才能もあるが、これだけあればそれも納得だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます