第16話 一覇は、その中で高等部と初等部の

 一覇は、その中で高等部と初等部のハンガーにつっている制服を取り、レジに持っていく。

「おい、それサイズが合っているのか?」

「大丈夫よ。私の見立てに間違いはないはずよ」

「いや、それでも、サイズ合わせをしてから」

「そうね。もうそこの試着室で着がえて来て、どうせ、着て帰るんでしょ」

「まあ、そうだけど」

 俺と九鬼神は、試着室で着替えてみると、確かにサイズはピッタリだった。

「あいつ、サイズを見極めるスキルでもあるのか?」

試薬室から出てくると、初等部の制服を来た九鬼神も同じように試着室から出てきている。銀の瞳に銀色の髪、しかも、このジャパニーズセラー服は九鬼神に絶望的に似合っているのだ。

「あやつ、相変わらずサイズの見立てに狂いわないのう」

「まったくだ。これもスキルなのか」

「いや、これは、あやつの特技じゃ」

「特技? スキルじゃないのになんで九鬼神様は知っているんだ?」

「そんなことより、ほれ、一覇が呼んでおる」


 そう言うと、九鬼神は、俺の疑問に答えず、一覇の方に向かうのだ。

「支払いは済ませたから、そのまま着ていきましょう。それでは、九鬼神様はわたくしと一緒に。むさくるしい所ではございますが、我が家でお世話をさせていただきます」

「ああっ、かまわぬ、わらわは征哉のところで世話になる。かつて住んだことのある家じゃ、そちらの方が気楽じゃわい」

 いや、うちの神社、どう古く見積もっても、江戸時代に建て替えて築三〇〇年ほどのはずだが。お前、住んだこと一度もないだろう。そんな突っ込みを入れようとしたところで、一覇は話を差し挟んでくる。

「そうでございますか。では九鬼神様これを」

 そういうと、一覇は、九鬼神に札束を渡している。

「どうせ、征哉庶務の家では、まともなおもてなしも出来ないでしょうから、必要なものはこれでお買いください」

「まてまて、別に一人や二人、お客が来たところで、別にどーってことないぞ」

「征哉庶務に、あげたわけじゃないわよ……」

 そう言うと俺の顔をまじまじと見て、

「九鬼神様が不憫で、不憫で……。そうだ、わたくしが時々、九鬼神社に様子を見に行かせていただきます!」

「でしたら、私も!いいですよね。征哉先輩!!」

「いやまあ、それは構わないけど……。でも、学校から出たら役職呼びはやめてもらうぞ。家では上下関係なしにゆっくりしたからな」

 それに、色々噂になっている茜が、家の方まで来ているとなると、さらに噂にあんなことやこんなことの尾ひれが付きそうで怖いのだが、まあ、一覇と一緒ならそれは無いか。

 

なぜか、茜も九鬼神社に様子を見に来る宣言しているのだ。それに安易に答えてしまった俺。

霊験あらたかな邪鬼払いで名高い九鬼神社は、その後、三人の美少女が頻繁に出入りするようになってくると、女性に人気の恋愛成就、縁結びの神様として多くの参拝者が訪れる有名な神社になっていくことになる。

ここまでは、きっと一覇のスキルが働いているのだと思うが、時々というかかなりというか頻繁にやってくるようになった男たちの間では、ハーレム神社とかロリコン神社とか言われ、その手のお願いに多大な恩恵を与えてくれる神社として、ひそかに敬愛されるようになったということは、ここでは紹介だけしておくことにする。



「それでしたら、今日は、とりあえず、わたくしの車で、皆さんを九鬼神社まで、お送りしましょう」

「一覇会長、後夜祭とかはいいのか?」

「あれは、文化祭実行委員会の行事ではなくて、有志によるものですし。一条院家が所有する高級ホテルを場所として提供しています。それで十分でしょう。それに、九鬼神様にはもう少しお聞きしたいこともあるのです。そちらを優先するべきでしょう」


 なるほど、最後のが本音か? 俺も、他の八方鬼が近いうちにこの世界に現れるなら、どこにどんなやつが現れるのか、すごく気になっているところだ。


「じゃあ、一覇会長。お言葉に甘えて、車に乗せてもらおうか」

「それじゃあ、正門に迎えを来させます」

 一覇がそう言うと、携帯を取り出し、電話を掛けている。そして、俺たちが校門で待っていると、いつもの高級セダンではなく、高級バンが迎えにやってきたのだ。

「人数が多いので、外車ではないんですが。今日はこちらで。どうぞ、九鬼神様」

 ドアを開け、九鬼神を三列シートの一番奥の座席に案内して、自分はその隣に座っている。さすがに、一条院家と言えど九鬼神は敬っているようだ。俺と茜は、二列目のシートに腰を下ろす。

 車が走り出すと、早速、一覇が口を開いた。

「九鬼神様、次に八方鬼が現れるのは、どの鬼でしょうか?」

「そうじゃなあ、次に結界が破られるのは、東の震鬼(しんき)あたりじゃろうな」

「震鬼ですか……」

「そうじゃ。ごつい体にごつい顔、まあ、眷属は震鬼に似合わん可愛らしい卯鬼(うき)じゃがな」

「それって、強いのか?」

 俺も思わず後ろを振り向き、九鬼神に尋ねてしまう。

「まあ、 坎鬼と同じぐらいじゃ、明日にはレベルが上がるお前らだと、もう少し楽が出来るのではないか?」

「「「レベルが上がるって?」」」三人同時に声を上げてしまった。

「そうじゃ、征哉は、坎鬼を倒したため、一覇は、征哉と坎鬼を、空気を操り従わせたため、どちらも、自分より高レベルの坎鬼を倒したのじゃから、五つぐらいアップするんじゃ。それに、茜も己が練成した武器で子鬼が倒されたからな。あいつらレベルが低いとゆうても、数百は、ぶち殺しておるから、やはり、レベル五ぐらい上がっておるぞ」

「なるほど、翌日レベルアップするんだ」

「そうじゃ。深夜零時、日が変わるとともに、レベルアップじゃ」

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