第4話 激闘ノ末エタモノ
「・・・ん」
冷ややかな朝の風が頬を撫でていく。
なぜだか、目が覚めるのが久しぶりのようなそんな気がする。
・・・あぁ、そうか。僕は、熊の爪に切り裂かれて吹き飛ばされてしまっていたのか。
今までのどんな時よりも体が重い。その鉛のような体を起こして肩の調子を確かめていると、がチャリという音と共に自室のドアが開かれた。
「テト、入るわよー・・・って!起きてるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」
フェルの元気な第一声が僕の目覚めを彩ってくれるらしい。正直、耳が痛い
「もうっ!起きたのなら起きたって言いなさいよね!まったく・・・心配したんだから」
「起きたのはさっきなんだ。心配かけたことに関してはすまなかった・・・」
すると、微かに頬を赤くして何故か怒っているような表情になった。
「別に、心配したって訳じゃないわ。ただ、目が覚めなかったら訓練の相手がいなくなるから・・・」
「・・・フェル、それは世間体で言うと心配してるって言うんだぞ?」
「ふぇ?私が、テトを心配・・・っ!?」
その瞬間、顔を林檎のように真っ赤にした。
「テトのばかっ!ばかばかばか!・・・ご飯は1階にあるから!」
捨て台詞?を残しながらフェルは早足で部屋から出ていった。
「心配してくれたんだろうな・・・」
微かに残るフェルの香りが早く降りてこいと言わんばかりに、頬を撫でていった。
その時はもう、冷ややかな空気は暖かくなっていた。
「結局・・・刺激的なスクランブルエッグなんだな」
僕は苦笑を浮かべながらパチパチと弾けるようなスクランブルエッグ?の感触を味わっていた
また健康的(刺激的)な朝が始まった。
「この、スクランブルエッグ平和の味って感じがしてきたんだが・・・これ、大丈夫か」
「んー?テトなんて言ったのー?」
「なんでもないよ、あ、そだ。食後の訓練始めないか?」
どうにかして逃げたい。このダークマターから、どうやっても逃げられない気がするが、
気の所為だろう・・・
「シッ・・・!・・・はぁフェル少し休憩にしないか?」
「あれれー?もうへばっちゃったの?テトったらなっさけないな〜」
悔しいがまだ体の傷が癒えていない。そんなことを隠しながら、フェルとの訓練に励む。
しかし、体の倦怠感が否めない。痛い、痛いのです。容赦ねぇ!コイツ!
「ほらほら〜、テト?逃げなきゃ痛いのが当たっちゃうよー?」
フェルがクスクスと笑いながら、追い打ちをかけてきた。この野郎、スイッチが入りやがった。・・・なんかイライラしてきた
「あー、調子に乗ってんじゃねぇぞ!フェル如きがよぉぉぉぉぉぉ!」
「テトも本気になってくれるんだね?アハハ♡うれしっ!」
嬉々として大剣を振り回してくるヤツに僕は向かっていった。
「死にさらせぇぇぇぇぇ!」
・・・負けたわ。そりゃ、負けるわ。だってアイツ容赦しないんだもん。
「情けないなぁー、ほんとに男の子なの?テト」
そうニヤニヤと笑いながらこちらに手を差し出してくる。
あー、悔しい、悔しいけど。こんな日常も悪くない・・・そんないつもの訓練の風景を僕は大切にしていきたい。
負けるのはくやっしぃけどな!けどなっ!
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